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部活の先輩にタメ口!?「暗黙の了解」が苦手な自閉症娘への敬語の伝え方

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部活の先輩にタメ口!?「暗黙の了解」が苦手な自閉症娘への敬語の伝え方

監修:初川久美子

臨床心理士・公認心理師/東京都公立学校スクールカウンセラー/発達研修ユニットみつばち

自閉症娘、中学入学で部活デビュー!

広汎性発達障害(自閉スペクトラム症)のある娘は、中学1年生。中学生になってから、自分の意志で部活を始めました。

いろいろと苦手が多い娘。初めは娘が入部することで、何かトラブルが起きないか、迷惑をかけるのではないか、心配していましたが、顧問の先生から話を聞いたり、娘の楽しそうな様子を見て、部活動を通じていろんな経験をしてくれるだろうと、私たちも嬉しく思っていました。

ある日、ふとした疑問が……

そして、入部してしばらく経った頃……

中学の2、3年生に「先輩」をつけて話す娘を見て、「あーさんも先輩後輩の関係に入ったんだな~」と感慨深いものを感じていたのですが……ふと思いました。

「先輩」はつけているけど……敬語は? 使ってる? 気になった私は、娘に確認してみることにしました。

娘、先輩に対してタメ口なことが発覚!?

娘は察することが苦手。暗黙の了解で理解することはできないのです。周りを見ることも苦手なため……

同級生と先輩の会話を聞いて、合わせるということもできていませんでした。
私たちは娘に話をしました。

中学生になり、「これはこう」という決まりきったことだけを教えるより、いろんな背景や事情も教えた方がいいと思っていましたが、娘にとっては混乱するようでした。様子を見て、教えていきたいと思います(笑)

執筆/SAKURA

(監修:初川先生より)
中学生になったあーさん、部活に入ったのですね。中学生になると突然上級生の敬称として「先輩」がつき、敬語で話すことになりますね。小学校の時は「さん」「くん」づけで敬語もなく遊んでいたのに、途端に文化が変わる感じがありますが、よくよく考えると戸惑ってしまうのも無理はないなと感じます。

そうした、昨日まではこれでよかったのに、今日から(中学生になったら)こうなるという変化も、誰もはっきりとは教えてくれないもの。多くの子たちはなんとなく状況を見ながら、中学生としてうまくなじむ流儀を身につけてゆくのでしょうが、暗黙の了解や空気を読むことが苦手なASD特性のあるお子さんにはそもそもそこに気づかずにいるかもしれません。

そうした独特の文化、そして関係性のように深まったら砕けた言葉でも構わないといった“ルールに幅や変化の余白があるもの”の教え方の難しさがこちらのエピソードでよく伝ってきますね。まずはシンプルなルールから教えて、アドバンスなルールはその都度あるいは慣れてから教えていく。それで良いと思います。敬語を使わないことで不利益や誤解が生じる可能性が(残念ながら)あるので、まずは年上の人には敬語を使うのだと伝える。中学校生活のみならず、それ以降でも汎用性の高いスキルとして使えますね。

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

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