産前産後の駆け込み寺「赤ちゃん食堂」
今回のテーマは…『産前産後の駆け込み寺「赤ちゃん食堂」』
お腹を空かせた子どもに食事提供などを行う「こども食堂」の赤ちゃん版、「赤ちゃん食堂」が全国に広がり始めています。神奈川県寒川町にある助産院「mamana.house(ママナ ハウス)」は3年前、全国初となる「赤ちゃん食堂」を助産院の開業と同時に開き、離乳食や母親用の食事を提供して、産前・産後の親子の居場所づくりを続けています。5月22日(水)に開かれた「赤ちゃん食堂mamana(ママナ)」を取材しました。この日は、神奈川県の近隣の市町村から乳幼児とお母さん、5組の親子が集まりました。助産院「mamana house」代表・助産師の菊池愛美(まなみ)さんに「赤ちゃん食堂」を開いた経緯を聞きました。
助産院「mamana house」代表・助産師の菊池愛美さん
「少しでもいいから子どもと離れたい」
「産後ケアが当時そこまでまだ普及されていなかったんですね。何でこれだけ産後ケアがやっぱり広がらないのかなって考えたときに、この寒川中心に乳幼児のお母さんたちにアンケートをとって、その中で「少しだけでもいいから子どもと離れたい」とか「自分の時間がちょっと欲しい」っていうニーズがすごく多かったんですね。そうなったときに、お母さんたちが地域と繋がれるように、こども食堂のような場所が赤ちゃんにも必要なんじゃないかっていうのに行きついて、助産院の開業と同時に赤ちゃん食堂を始めた経緯があります。」(助産院「mamana house」代表・助産師の菊池愛美さん)
お母さんたちが休息にかけられる予算は・・・
このアンケートでは、“お休み”を求めるお母さんの声が集まる一方で、どれだけ休息にお金をかけられるかというと、月に1000円もかけられないという家庭は全体の1割以上に上ったそうで、それを踏まえて「赤ちゃん食堂mamana」では、大人の食事は400円で、離乳食や2歳以下の子どもには無料で、3時間の居場所づくりとして赤ちゃん食堂を開いています。ここに通う産後のお母さんたちの変化を菊池さんはこう話します。
赤ちゃん食堂はお母さんの“元気バロメーター”
「もう言葉では語らずとも顔に出ずともやっぱりもう全身で疲れたよっていうのを醸し出しながら扉を開けてくる方が多いんですけれども、産後にやっぱり子ども優先になるので、自分のことがやっぱりおろそかになる。実際そういった赤ちゃん食堂でちょっとの支援をすると本当に皆さんたった3時間なんですけれど元気になって帰っていって、それが月に1回2回あるとバロメーターのようになって育児が頑張れて元気になっていく姿がすごく感じられるのはすごい実感としてありますね。」 (助産院「mamana house」代表・助産師の菊池愛美さん)
「赤ちゃん食堂mamana」に参加するお母さんと子どもたち
一人目の子育て中に「赤ちゃん食堂mamana」に訪れたお母さんは、第二子、第三子を産もうという原動力をつけて、次の子を妊娠して戻って来る方も多いそうです。取材した日も第二子を妊娠中の方が訪れていて、菊池さんに相談される場面もありました。
マタニティの頃から通っているという利用者の方に話を聞きました。
「家にいると1人で考え込んじゃうことが多いんですけど、ママナハウスに来るとかお母さん方といっぱいお話ができたり助産師さんの愛美さんともお話できたりするので、何か悩みとかがあったときに心強い存在になっています。やっぱり離乳食作りとか結構大変なんですけどママナハウスですごいバランスの良い離乳食を用意していただけて、その上それが赤ちゃん食堂だと無料で、この今物価高の中、無料で食べることができるのがすごいありがたいです。」(1歳7カ月の男の子のお母さん)
その子の成長に合わせた食事
提供される食事は離乳食初期・中期・後期から完了食、そして幼児食まで細かく分けられていて、お米の硬さやおかずの種類など、その子の成長にあわせた食事が用意されます。取材した日、大人には新生姜の豚しゃぶや、ナスとピーマンの揚げ浸しなど彩り豊かで栄養満点な食事が振る舞われました。食事中は助産師さんが子どもを見守ってくれるので、お母さんたちは食事とおしゃべりに集中できて、自然と表情が柔らかくなっていくのが印象的でした。
離乳食はその子の成長に合わせて用意されます(無料)
大人用の食事はこの彩りで栄養も満点!(400円)
食材は、売り物にならなかった規格外の野菜を地域の農家さんからいただいたり、施設給食のキャンセルで出た食材などを毎週届けてもらって工面していて、資金面で支援する企業も少しずつ増えているようです。
明日のミルク・オムツが買えない・・・
菊池さんは、赤ちゃん食堂とは別に、育児中の困窮世帯に対してオムツやミルクを届ける活動もしています。産後のサポートを必要とする方々へこのような思いも語ってくれました。
「明日ミルク、オムツが買えない、命をどうしようかとか、この手にかけようかとか、そんな思いで子育てしてる人が日本には一定数いるっていうことを私達もこの事業を通して知ったところです。今はそういう方にまずはオムツ、ミルクを届けてあげたり食材を届けてあげたりっていう活動をしていて、今度はそこからそういう方たちが自立するためにはどうしたらいいのかっていうところの課題に今度は私達来ていて、やっぱりそこの一連の流れ、支援の流れっていうのを作ることが私達のこれからの課題であるかなとは思っています。」 (助産院「mamana house」代表・助産師の菊池愛美さん)
「こども食堂」のように「赤ちゃん食堂」も支援の輪が広がり全国へ繋がっていくことで、ひとりで・夫婦で育児の不安を抱え込むことなく、子どもを持つことに前向きになれる社会が訪れるのではないかと感じました。