屋良朝幸&中川晃教が久方ぶりの『SONG WRITERS』再演で共演 互いのことや意気込みを聞く
作詞家の森雪之丞が作・作詞・音楽プロデュースを手がけ、岸谷五朗が演出を担当したオリジナル・ミュージカル『SONG WRITERS』。2013年、2015年と上演されたこの作品が約10年ぶりに再演される。初演から二人、自信過剰な作詞家エディ・レイク役の屋良朝幸と気弱な作曲家ピーター・フォックス役の中川晃教に作品への意気込みを聞いた。
ーー『SONG WRITERS』、久しぶりの再演です。
中川:僕たち二人が共演させていただいたのはこの作品が初めてで、そこから交流が続いてきているので、久しぶりに『SONG WRITERS』を一緒にやれるんだなというのがすごく楽しみで。
屋良:同年代で、この作品を機にすごくいろんなことを話すようになって。
中川:同学年なんですよ、僕たち。
屋良:舞台以外のこととか、いろんなものを共有して。しょっちゅうではないけれども、一緒にご飯に行ったり。二人ともクリエイターでもあるし、そういうところで共通点を見つけたというか、何かおもしろいもの一緒に作りたいねという流れにつながっていって。こないだアッキー(中川)のテレビ番組『中川晃教 Live Music Studio』にもゲストで出させてもらったり。一緒にステージに立つのはそれが久しぶりだったよね。
中川:久しぶりだった。この作品は、ソングライターたちが、ブロードウェイでヒット・ミュージカルを作ろうと意気込んでいるという。前回、それを30代前半で演じていたんだよね。2021年に僕はシアタークリエで『中川晃教 20th ANNIVERSARY CONCERT』をやったんだけれども、そのとき屋良っちがシークレット・ゲストで出てくれたんです。『SONG WRITERS』もクリエでの上演だったし、共演以来仲がいい同志ということで、『SONG WRITERS』の曲も歌って、それと、僕のデビュー曲「I WILL GET YOUR KISS」をやりたいって屋良っちが言ってくれて。
屋良:あの曲で踊りたいなと思って。
中川:僕が歌って屋良っちが踊るものだと思っていたら、動画が届いて、「アッキーも一緒に踊って」と。
屋良:うれしかったな。絶対一緒にやりたいと思ったの。俺はアッキーのことをアーティストとして見ていて。デビュー曲から知っているわけですよ。中川晃教と言えばまず「I WILL GET YOUR KISS」。めちゃくちゃいい曲だし、これを自分がどういう風にダンスで表現するんだろうということに興味があって。そのコンサートのときのピアノ・アレンジがめちゃくちゃよくて、それを聞いた瞬間インスピレーションがパッと降りてきて、パーッと振付を作って、アッキーに見せて。
中川:こういう風に作るんだ、と思って。
屋良:そのあたり、お互いが想像していないところでクリエイトしてるよね。だからすごくおもしろかった。
中川:おもしろいと思ってくれるのがいいじゃないですか。音楽、クリエイションもそうだけど、自由かどうか、楽しいかどうかだから、ちょっと遊びに近いんですよね。自由なところから生まれてくるものだから。アッキーも動いてと言われたときに、僕も踊ると屋良っちの作る世界を壊さない? と思ったんだけれども、逆に彼は、僕が動くことも含めて作っている。そうやって作っていくのがおもしろかった。その『中川晃教 20th ANNIVERSARY CONCERT』のとき、僕たちが『SONG WRITERS』よかったよねと話しているのを、プロデューサーが客席で聞いていて、感動して、この作品を眠らせておくのはもったいないなと思ったのが今回の上演のきっかけになったということだから。
屋良:シークレット・ゲストだったから、アッキーのファンがどこまで俺を……という思いもあったんだけれども、『SONG WRITERS』の共演で認識してくれていて、盛り上がって。それもうれしかった。
ーー再演の話を聞いていかがでしたか。
屋良:アッキーと一緒にまた何かできるといううれしさがあるのと、久しぶりにどういうアプローチができるんだろうと、自分でも楽しみで。変えようとしなくても自然と違う表現になると思うし、違う解釈の仕方も出てくるかもしれないし。
中川:屋良っちが演じるエディは、割と脇目も振らずに自分の作りたい世界を突きつめていくようなタイプの人間なんですよね。僕が演じるピーターは、そんなエディの庇護のもとにいて、エディの言葉、彼が作ろうとしている世界から降り注ぐ雨を形にしていこうとするみたいな。一方で、ボーイズラブということじゃなく、ピーターがエディに対してどこか片思いしているようなところもある。描こうとしているものの種はエディが持っていて、それを形にしていく上でどこかピーターは一つの駒みたいで、それがピーターの幸せで、エディと一緒にいつか大ヒット・ミュージカルを作りたいという思いがあるんです。ある日突然、二人のもとに、武田真治さん演じるニックというプロデューサーがやって来て、今作っている作品を一年以内に完成できるならば上演してもいい、ふさわしいディーバも連れてきてほしいという条件をつける。タイミングよくエディが、今回実咲凜音さんが演じるマリーという女性を連れてくるんです。ここから、ピーターにとっては男女の三角関係が生じる。一つの作品を作ることに人生を賭けているエディという男に、ピーターは寄り添っている、そのピーターがおいてけぼりになっていく瞬間があって、その彼のさみしい気持ちと、エディが作るミュージカルのストーリーの気持ちとがちょっとシンクロしていくんですよね。二人のクリエイションの物語と、エディが頭の中で思い描いているミュージカルの物語、空想が重なっていく瞬間がある。ピーターのエディへの思いがそこをつないでいたりするのかなと思って、演じていてやりがいを感じましたね。
SONG WRITERS 2024 ビジュアル撮影メイキング映像
屋良:俺にとっては難しいことだらけで。ダンスくらいしかできない人間だったので、歌にしても。アッキーとか真治さんとか、特殊人間(笑)が揃っている中で、新しい経験をさせてもらえているなと感じましたね。初演のときとか特に、自分はどういう風に闘っていけばいいのかなって、もがいていた感じで。俺も作詞しますし、ステージの全体を作る演出や振付をするので、ゼロから何かを作る上での葛藤という部分でエディに共感できるところもあるかなと、そこをヒントにして作っていっていた記憶はありますね。
ーー好きなナンバーやシーンはありますか。
屋良:アッキーと一緒に歌う最後の方のナンバーは、すごく練習したから思い入れがあるな。
中川:「現実の国で夢見る人」ね。練習したね。
屋良:アッキーと向き合って手を握り合って歌ってたよね。
中川:やってたよね。お互いにテンションを掛け合うとイーブンになるんですよ。どっちかが声が大きいとか小さいとかじゃなくなる。ティンバー(音色)を合わせるためにやるんですけど、互いに引っ張り合うとバランスを取ろうとする。片方が強く引っ張ると引っ張られちゃうけれども。
屋良:それで新しい扉が本当に開かれたから。
中川:僕は好きなシーンはたくさんあるんですけれども、あの当時の屋良っちってキャピキャピしていたところがあって。
屋良:キャピキャピしてた?
中川:変な意味じゃなくて、アイドル特有の、明るさというか、キラキラとしたもの、そういうものも持ち合わせているのは当然、なるほどと思った。僕が知っている屋良っち、例えば、僕が屋良っちを初めて観たのは『SHOCK』なんだけれども、そのときの屋良っちはもうちょっと美少年、美青年のキラキラだったんですね。それが共演したときはキャピキャピ系のキラキラだったんで、意図的に演じ分けているのか、彼が持っている要素がこの役と重なったときに自然と出てきているのか、どっちなんだろうと。知れば知るほど、実はこの人、両方持っている人なんだなとわかって。でも、一緒にクリエイションする瞬間は全然そんな感じじゃないから、いろんな屋良朝幸の顔の中の一つがエディという役に表れていたんだなってだんだんわかってきて。お互いに引き出しを開け合った今だから、今回のエディとピーターとしても何か化学反応があるのかなって、楽しみです。そういうところに、この作品の役作りがあるのかなと。オリジナル作品だから、誰かがやったものを踏襲するのじゃなくて、僕たちで作り上げたものなので。それを安直に壊したいということではもちろんなくて、それはそのまま大切にしたいけれども、今回またそういう役作りが一緒にできればいいなと。それさえあればどんなシーンも、どんな難しいことも、楽しく乗り越えていけるんじゃないかなって。丁々発止もできるしね。
屋良:うんうん。
中川:すごく稽古に対して真摯で、稽古したことをきっちりやりたいタイプだったよね、当時。
屋良:そうだね。
中川:僕は稽古大っ嫌い人間で、あとは本番で! みたいなところがあるので(笑)。互いの真面目さ不真面目さみたいなところも当時あって。
屋良:不真面目には見えないけどね。ちゃんとやれてるから。
中川:いや、やれてないんですよ。屋良っちの方がやれてる。
屋良:いやいやいやいや。
中川:僕は芯ができていたとしても、その周りは何となくふわふわだから。屋良っちがドセンターの芯をガーッとやっていく人なので、ちょうどいいのかもしれないけれども。
屋良:俺が意識していたのは、本番中、いかに芝居の流れを元に戻すかという。アッキーも真治さんもめちゃくちゃするし、ときどき直感的に、動物的に動くから(笑)。おもしろかったけどね。
中川:おもしろかったね。楽しい思い出しかないんですよね。
屋良:3人のシーンとかハチャメチャだったやん。俺、真治さんに訳わからん抱っことかされたこともあって。何の芝居の意図も理由もないんだよね、きっと。ただやりたかっただけだと思う(笑)。でもそういう感覚、俺にはないものだから、おもしろかった。
中川:ないんだ?
屋良:そのときはなかったね。今はあるかも。
中川:眠ってるかもね(笑)。
屋良:でも、ロカビリーのシーンはけっこういろいろやってたかな。
中川:清純派、正統派な屋良朝幸というものがあったんだよね。そこに当時、果敢に挑戦していったというか。新しい屋良っちがこの作品から生まれてきたのかなって。
屋良:それはあると思う。すごく転機になった作品だから。久しぶりの『SONG WRITERS』ということで、それぞれこの間いろいろなところで別々に闘ってきた部分がまたこの作品で一つになって、新しい『SONG WRITERS』が生まれると思う。お芝居も新たな気持ちで挑んでいきたいと思うので、お客様にも楽しみにしていただければと思います。
中川:ミュージカルならではの笑いや喜劇要素があるオリジナル作品で、楽曲も日本を代表するといっても過言ではないクリエイターの方たちが書かれているんです。その中で僕も一曲書かせていただいていて。新たなメンバーも加わって、その音楽がどう響くのかも含め、ご期待ください。
SONG WRITERS 2024 Teaser Trailer
■屋良朝幸
ヘアメイク:大平真輝
スタイリスト:柴田拡美(Creative GUILD)
■中川晃教
ヘアメイク:松本ミキ
スタイリスト:Kazu(TEN10)
衣装クレジット:
・ジャケット ¥126,500
・パンツ ¥48,400 /共にNEW ORDER(シアンPR)
その他スタイリスト私物
問い合わせ先 Sian PR(03-6662-5525)
取材・文=藤本真由(舞台評論家) 撮影=福岡諒祠