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立ち食いそばマニア話題の店に聞く。牛肉カレーそばが激ウマな高田馬場『松石』は、なぜ “攻めの甘み” にたどり着いたのか

ロケットニュース24

東京有数の学生街である高田馬場。早稲田大学はじめ、大学や専門学校が多く、学生が集まる駅前はなんだか懐かしい雰囲気がある。特に駅前ロータリーの喫煙所近辺のオーラは自分も学生の頃に戻ったような気分になるから、いつの時代も大学生って変わらないのかもしれない

そんな喫煙所を横目にロータリーを渡り切ると名店ビルがある。地下鉄直結で飲食店などが入っているこのビル。地下への階段を降りると、目の前に地下鉄の通路への接続部が現れた。その自動ドア前の踊り場のような隙間に立ち食いそば屋がある。何を隠そう、ここが立ち食いそばマニアに話題の店なのだ

・リクエスト

その名も『松石』。私(中澤)が今回ここに来たのはロケットニュース24に寄せられた以下のリクエストからである。

「立ち食いそば放浪記、いつも楽しく拝見させていただいてます。
今度ぜひ高田馬場にある「松石」に行ってみてください。
物凄く美味しい、というお店でないですが変わり種の蕎麦が多く、また蕎麦の種類だけでも粗挽き、田舎、白、黒、と沢山あります。
私のお勧めは冷やしスタミナ蕎麦、生卵が2個も入ってるつけ汁に、ぶっとい田舎蕎麦を付けてワシワシ食べるジャンクな感じ、シメにスープ入れてもらうと最高です。
暖かい「スタミナ蕎麦」もニラたっぷりで良いですし、カレー蕎麦も良いです。
通常の蕎麦は甘目の出汁で、好みは分かれますが好きな人はハマります。
是非、中澤さんのレビューを見てみたいと思っております。
勝手なお願いで恐縮でございますが、一つ候補に入れていただけると幸いです。
よろしくお願いいたします。」

──立ち食いそば放浪記を読んでるだけでなく自分で興味を持って発掘してる時点でもう立ち食いそばマニアからのお便りであることは分かるけど、実は先日別のマニアと話した時にも『松石』の名前があがった

・マニアに話題の店

それが大衆そば研究家として本も出している坂崎仁紀(さかざきよしのり)氏。っていうか、その前から名前は知ってたから、多分まだまだ聞いてると思う。そんなわけでマニアに噂が広がる『松石』に来てみたわけだ。

中に入ってみると隙間というほど狭くはない。むしろ余裕がたっぷりある空間は外観からは予想外なくらい広々していて立ち食いでも落ち着ける。入口の券売機でメニューを見ると、確かにリクエスト者さんが「変わり種」と言うのも頷けるラインナップだ。なんならつゆそのものが違う「塩そば(税込680円)」とかあるし。

・好みが分かれるというつゆ

さて置き、関西のだし文化で育った私としてはベーシックのつゆがどんな味なのかをまず知っておきたい。そこで「肉そば 普通盛(税込630円)」を注文することに。ふむふむ、肉は豚、鶏、牛から選べて1.5倍とかもできるのか。「豚×1.5(+120円)」でファイナルアンサー。

そしてやって来た肉そばがこちら。肉そばの肉にしては厚めの豚肉で食べごたえがありそう。つゆは濃い色の関東つゆだ。あと、珍しいのはつけ添えでラー油がついていること。立ち食いそばに味変の概念を取り入れているところにニューウェーブ感がある。ラー油を入れずにつゆを飲んでみたところ……

まず感じたのは甘さ。大分甘めだ。これまで私が味わってきたそばつゆの中でもトップクラスであることは間違いない。だが、その甘みの中にはしっかり醤油の風味がして、そばつゆ感を引き立てている。

・独自のバランス感覚

そばと一緒に食べるとそのそばつゆのコクの強さが際立った。不思議! 飲んだ時点では限界突破しているようにも思った甘みの強さがそばと食べるとむしろつゆの個性に感じられる

試しにラー油を入れてみたところ、ピリ辛味が甘みにマッチしてジャンクな旨みを放つ。これ、ウマイぞ! バランス感覚が独自すぎるけど……!!

・このそばつゆゆえの

おそらくブラインドで食べても当てられるに違いない。それほどに『松石』の味だ。でもそれでいて、立ち食いそばの温そばのストライクゾーンを外さないコントロールはマニアに噂になるのも頷ける。そして、そのつゆの甘みの強さの個性のためか……

牛肉カレーそばが至高。

ベーシックのつゆの味を知ってからカレーそばが気になったため後日出直して食べてみたんだけど、思った通り、甘くコク深いそばつゆがカレーと猛烈にマッチしていた。さらに、肉カレーそばの肉も豚、牛、鶏の中から選べる。

前述の通り、私は関西出身なのでカレーも肉そばも牛肉派なんだけど、東京で肉そばの肉が牛肉なことってほぼない。ゆえにこの店の牛肉カレーが刺さりまくった。牛肉の旨みとつゆの甘みがめっちゃ合ってる。牛肉カレーそばの牛肉1.5倍は税込1020円だが、なんならご飯セット(税込1120円)いったった。

・話を聞いてみた

そんなわけでどうやら私はハマる方だった様子。とは言え、「好みが分かれる」というリクエスト者さんの見解もまあ確かに。なぜこの味になったのか? 厨房にいたスタッフの石田さんに「美味しかったです」と伝えたところ話を聞かせてくれた。甘いつゆの味に凄いオリジナリティーがありますね。

石田さん「ありがとうございます! でも実は砂糖とかみりんは一切使ってないんです」

──ではなぜこんなに甘みが強いんですか?

石田さん「九州の甘い醤油を使っているので、醤油の甘みのみですね。出汁はグルタミン酸、イノシン酸、グアニル酸の相乗効果をベースにとってます」

──甘くとも癖になる味はあくまで醤油の豊潤な甘みという点も大きいのかもしれないですね。なぜその醤油を使うことにしたんですか?

石田さん「まだ立ち食いそば業界は1年目なんですけど、かねてから料理人でして、醤油が大好きだったもので趣味で全国の醤油を取り寄せて刺身につけて食べ比べたりしてたんですね。その醤油の中からこの店で取り扱う麺に1番合うものを選んだという形です。なにせ蕎麦だけでも、粗挽き、田舎、白、黒と4種類あるので」

──なるほど。囚われてないオリジナリティーのワケが分かった気がします。

石田さん「ただ、好き嫌いはハッキリ分かれるようで『甘すぎる』と言われることもありますね。ひと口食べて帰るお客さんとかもいたり」

──まさしく「攻めの甘み」ですね。麺は自家製麺なんですか?

石田さん「そば、うどん、きしめん、全て製麺所の『むらめん』さんです。近日中に生蕎麦の扱いも開始するかもしれないです」

──とのこと。どうやら現在も進化中のようである。しばらくしたらまたパワーアップしているかもしれない。

なお、早稲田大学卒の御花畑マリコ記者に聞いた話によると、かつて名店ビルは「ガチでウマイ名店しか入れない」という噂があったそうだ。

伝説の後継者となるか『松石』。確かに好みは分かれる味だけどそのポテンシャルは十分である。そんなわけでリクエストありがとうございました!

・今回紹介した店舗の情報

店名 立ち喰いそばうどん 松石
住所 東京都新宿区高田馬場1-26-7 名店ビル B1F
営業時間 月~金7:00~21:00 / 土9:00~15:00(※現在猛暑の営業時間に短縮中だが、お店によると、今後も継続の可能性があるとのこと。7:00~21:00に戻る可能性もあり)
定休日 日・祝日

執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.

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