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あの映画やドラマも?愛媛の海が映えるロケ地4選!選ばれるロケ地の条件とは?

ソトコトオンライン

夕日の沈む瀬戸内海をバックに撮影が行われる

瀬戸内海に面する四国・愛媛県。その面積は都道府県別で全国26位と平均的であるものの、瀬戸内海に浮かぶ島々や宇和海のリアス式海岸などがあり、海岸線の長さは全国5位を誇ります。 また映画・ドラマのロケ地としてもたくさんの作品に選ばれてきた愛媛の海。 トレンディドラマ全盛のバブル期に『東京ラブストーリー』、2000年代には大人気検察ドラマ『HERO』などが放映され、多くの方に愛された作品に愛媛の海が映り込んでいるのです。 さて今回2002年に愛媛県に誕生以来、約20年で500本以上のロケ支援実績のある「えひめフィルム・コミッション」の泉谷昇さんにお話を伺い、印象的な愛媛の海のロケ地を紹介します。

愛媛ロケのあった映画やドラマのロケ地マップ 画像提供:えひめフィルム・コミッション(事務局:愛媛県観光国際課)

えひめ・フィルムコミッション誕生まで

泉谷昇さんは東京出身、1971年生まれの49歳。
学生時代のアメリカ留学などを経て、結婚を機に奥さんの実家のある愛媛県に移住しました。
いったんコンサルタント業界へ転職し東京へ戻りますが、30歳の時にテレビで見たニュースで世界でのフィルム・コミッションの存在を知り「これだ!」と所管である国土交通省に熱意のこもった企画書を送ります。
その後愛媛県でもフィルム・コミッションの設立が検討されることになり、かつて住んでいた愛媛に再び舞い戻ってきました。

泉谷さん「タイミングとして良かったのは、当時の愛媛県では『しまなみ海道』開通記念に、映画『船を降りたら彼女の島』をまさに制作開始するところで、映画は地域の魅力発掘・発信に役立つと好意的だったんですよね。」

『船を降りたら彼女の島』(2003年公開・磯村一路監督)は木村佳乃さん主演の愛媛ご当地映画。
しまなみ海道の島々や松山、今治、新居浜など広く県内で撮影が行われ、全国公開もされています。

泉谷さんはこの撮影準備を尻目に海外や過去の事例などを研究し、2002年7月にえひめフィルム・コミッションの設立に参画しました。

泉谷さん「最初は殺人事件が起こる2時間ドラマも多くて。それは観光に役立つのか?という冷ややかな目もありました(笑)」

ターニングポイントはあの大ヒット映画、社会現象にもなったセカチューこと『世界の中心で愛を叫ぶ』(2004年公開・行定勲監督)の撮影です。
メインロケは隣香川県の庵治町(現在は高松市)で行われたものの、主役二人、アキとサクの通う高校のシーンの一部を愛媛県立伊予高校で、病院のシーンを当時泉谷さんが勤めていた愛媛県庁を利用するなど、愛媛ロケも行われました。

泉谷さん「当時は行定監督がまさにブレイク前夜でしたね。ロケハンの方法やフィルムコミッションのノウハウを教えてもらい、本当にお世話になりました。」

セカチューの松山市内でのロケの様子 写真提供:えひめフィルム・コミッション(事務局:愛媛県観光国際課)

その後約20年間のうちに500本の撮影支援実績を持つえひめフィルム・コミッション。
泉谷さん「映画やドラマだけでなく、観光情報番組、バラエティ、グラビア撮影、コマーシャルもですからね。相談件数はその3倍あります(笑)」

そんな泉谷さんにとって印象的で、ロケの思い出の深い愛媛の海はどんなところでしょうか。
4つ選んでもらいました。

 

その1 東京ラブストーリーの聖地 梅津寺(ばいしんじ)

泉谷さんが世代的にど真ん中であるのがトレンディドラマたち。『東京ラブストーリー』(1991年・鈴木保奈美さん、織田裕二さん出演)の最終回では主人公らの切ない別れのシーンが、海に近接している伊予鉄道梅津寺駅周辺をロケ地に描かれました。

放映後、ドラマの真似をしてホームの柵にハンカチをくくりつけるファンが多数訪れるなど、人気ドラマにふさわしくファンの「聖地巡礼」の場所となっています。

泉谷さん「先のセカチューしかり、『東京ラブストーリー』しかり、愛媛県で行われるロケの作品の数は多くはないですが、ヒットしたら大きいですよね。えひめフィルムコミッション設立以降では、梅津寺周辺でドラマ『がんばっていきまっしょい』の撮影が行われました」

梅津寺はどうして選ばれたのでしょうか。

泉谷さん「実景といって風景だけ撮る場合、役者さんの芝居を撮る場合と、広さがあるのでどちらも撮りやすいんですよね。また海の人の営みが見えるというか。小さな漁船や、島が映ったり。単純に自然だけでなく予期せぬ船の往来が映り込んだりするのが良いですね」

東京ラブストーリーの舞台ともなった伊予鉄道梅津寺駅。奥のホームにハンカチをくくりつけるシーンが印象的だった。 写真提供:えひめフィルム・コミッション(事務局:愛媛県観光国際課)

梅津寺周辺の海 対岸に「東京ラブストーリー」で有名な梅津寺駅が見える 写真提供:えひめフィルム・コミッション(事務局:愛媛県観光国際課)


その2 旅立ちの海 HERO SP版(2006年・木村拓哉さん出演)下灘駅

駅と海が近い絶景が撮れることで最近人気が爆発しているのが下灘駅。
木村拓哉さんの主演で人気を博した検察ドラマ『HERO』のスペシャル版で主人公が東京に向かうシーンが水平線をバックに撮影されました。
当初はこの駅以外にも愛媛の海が探されたと言います。

泉谷さん「主人公は愛媛に赴任するという設定に合わせて、事件現場に該当する場所を探しました。今治から宇和島までの200キロメートル近く、海岸線沿いを二泊三日かけて見に行きました。結果的に事件現場は他県の海が採用になりましたけど、東京に旅立つ印象的なシーンとして、下灘駅が選ばれたんですよ」

下灘駅は実はドラマの撮影前、「JR青春18きっぷ」のポスターの撮影駅として1998年から3年連続で選ばれていました。
『HERO』スタッフたちもその事実は知っていたものの実際に見たのは初めてでした。

絶景を堪能できる下灘駅 コーヒースタンドも人気 写真提供:えひめフィルム・コミッション(事務局:愛媛県観光国際課)

泉谷さん「18きっぷは、ロケ地を巡るいわゆる『聖地巡礼』の走りですね。最近だとドラマ『リバース』(2017年・藤原竜也さん出演)でも電車での東京への出発シーンに使われましたし、グラビア撮影も多い。何より一般の方のインスタグラムをはじめとするSNSでの露出がめちゃめちゃ多いです」
 

その3 時代劇の海 七五三ヶ浦(しめがうら) スペシャルドラマ「坂の上の雲」

現代劇では、海岸ロケで船や島々から人々の営みを切り取ることが大事でしたが、時代劇ではそうはいきません。「現代」がバレてしまわないよう細心の注意が必要です。

泉谷さん「小舟で釣りをするシーンで、海側から撮影する必要があって、人工物が映らないようにと。でも大体どこの海も人工物は映っちゃうんですよ(笑)
ここは今治市の四国側の半島の先のキャンプ場なんですが、道中は険しくて、迷い込んでたどり着いたみたいなところがあります。キャンプ場だから車を停めるスペースはあって好立地でしたね」
(著者注:今治市公式サイトによると現在は土砂災害により七五三ヶ浦への道路の通行は不可。復旧は未定)

偶然が重なり見つかったのが七五三ヶ浦。
時代劇とは、日清・日露戦争で活躍した秋山真之、秋山好古、同時代を生きた正岡子規らの姿を描いたNHKスペシャルドラマ『坂の上の雲』(2009年・本木雅弘さん、阿部寛さん出演、原作:同名小説・司馬遼太郎著)です。このロケが愛媛でも行われました。

泉谷さん「当然お話しの舞台は愛媛なので、愛媛でも各地で撮影が行われました。ドラマは三部構成で、愛媛では第一部、三部での松山城とその庭園、内子町の橋などですね。プロデューサーは松山出身の方でなるべく愛媛ロケをしてくれましたが、時代劇となるとCGを使用したりもするので都内のスタジオや専用の撮影場所が多いですね」

ダイナミックな七五三ヶ浦からの夕日  写真提供:公益社団法人今治地方観光協会

七五三ヶ浦海岸遠景 写真提供:今治市


その4 青春と海 ドラマ「がんばっていきまっしょい」台(うてな)海岸

松山市内の高校女子ボート部の青春を描いた映画『がんばっていきまっしょい』(1998年公開・磯村一路監督)は田中麗奈さんの映画デビュー作で、ロングランを記録し、田中さんは各映画賞の新人賞を獲得しました。

2020年に初開催された愛媛国際映画祭でも、公開から21年後に舞台となった松山東高校で「聖地上映」されるという、近年のオール愛媛ロケ映画の記念碑的作品です。

泉谷さんらはそのドラマ版『がんばっていきまっしょい』(2005年・鈴木杏さん出演)を先述の通り『東京ラブストーリー』に出てくる梅津寺を紹介するなど、愛媛ロケの撮影支援を行いました。

泉谷さん「制作の関西テレビの何年かぶりの自社制作ドラマということもあって、気合が入ってましたね。映画が先にあるわけですから、それを上回りたいと。」

映画では今治市内の鴨池海岸にボートの倉庫のセットが置かれ撮影が行われました。

泉谷さん「映画公開当時は鴨池海岸がベストだったんでしょうけどね。要求はそれを上回りたいと。でもなかなか見つからず。良い場所はいくつかあったんですけど、最後の最後で先方の演出の方が『ダイ海岸見つけました!』と電話口で言うわけです。もちろん『ウテナ』と読めていないからこちらは困惑しましたけど(笑)」

台(うてな)海岸は今治市のしまなみ海道の走る島、大三島にある海岸です。
大三島は愛媛県最大の面積を誇り、村上海賊の歴史が残り由緒のある「神の島」とも呼ばれる島です。
1999年のしまなみ海道開通以来多くの観光客も訪れていますが、台海岸発見も橋の開通の影響かもしれません。

ドラマ「がんばっていきまっしょい」用に台海岸に建てられたボート部の艇庫 写真提供:えひめフィルム・コミッション(事務局:愛媛県観光国際課)

泉谷さん「台海岸では艇庫(ボートの倉庫)を建てることが出来たんですよね。今治の島しょ部の海は瀬戸内海国立公園に指定されていますから、通常は一筋縄では行かないんですけど」

無事に海岸にセットが建てられ、撮影は開始されました。
松山市内の高校を使用することもあり、撮影は50日間に及びましたが、泉谷さん自体は準備に始まり8ヶ月ほど携わったと言います。

映画とテレビ 必要なロケ地の違い

さて以上が泉谷さんの選ぶ愛媛の海ロケ地4選でした。
愛媛には上記以外にも夕日の美しさを誇る海岸が多数あります。
映画やドラマ関係者が選ぶ基準とはどのようなものでしょうか。

泉谷さん「映画関係者が好きなロケ地とテレビ関係者の好きなロケ地とに違いはありますね。
映画の場合、例えば同じ夕日であっても今までに見たことのないアングルや撮り方ができることが大事です。
監督の個性を出しやすいというか。テレビの場合は個性よりもテレビ映えするかどうかに重きを置いているように思います。
例えばとある夕日の綺麗な海岸があるんですが、観光地化されているのでカメラを動かす余地が無いんですよね。監督が作家性を出せない、撮影の自由度の低いところは映画には採用されないですね」

全国のロケ地の中から瀬戸内海がロケ地に選ばれるのには理由があるのでしょうか。

泉谷さん「どんな海を求めているか、ですね。瀬戸内海の良さはやはり『凪』です。静かで綺麗な点。夕日が水平線に落ちず島々の間に落ちる点も瀬戸内にしかないところです。
事前準備として例えば寒々しさを演出したい場合は日本海、大海に冒険に繰り出そうと言うときは太平洋、という考えを映画・ドラマの製作陣は持っていますね。
それから関わっているスタッフの誰かに前作の実績があるとか、勝手を知っている土地かどうかは大きいですよ」

しまなみ海道と瀬戸内海 写真提供:えひめフィルム・コミッション(事務局:愛媛県観光国際課)

夕日の沈む瀬戸内海をバックに行われる撮影 写真提供:えひめフィルム・コミッション(事務局:愛媛県観光国際課)

いかがでしょうか。
愛媛の海に限らず、普段読者の皆さんが見慣れた景色にもロケ地になる可能性を秘めているところがありそうです。
実際に映画やドラマとなると観光地的で無く、かつ色々な撮影ができる広さなどが必要ですが、いずれにしてもその地域の持つ地域資源をロケという別の角度から見直すことでその資源の深掘りとなり、結果多くの人に見られる作品となるかもしれません。

もしこの場所でこんな撮影が行われたら・・普段からそんなシミュレーションをして、地域を見直そうと思います。

文:皆尾裕
写真:えひめフィルム・コミッション(事務局:愛媛県観光国際課)、今治市、(公社)今治地方観光協会
取材協力:泉谷昇、今治市

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