MAN WITH A MISSION×TAKUMA(10-FEET)×TOSHI-LOW(BRAHMAN)、WANDS×ナヲ(マキシマム ザ ホルモン)……スペシャルセッションが多数実現した『ARABAKI ROCK FEST.25』初日、濃厚レポート!
ARABAKI ROCK FEST.のフェスの大きな魅力になっている、ここでしか観られないアーティスト同士のセッション/コラボ企画。2025年はスタートから25周年なので、25個の企画を組もう──と動いたところ、結果、それを上回る数になった。断られることや、やろうとしたが頓挫することもあるだろう、と計算して多めにセッション企画を考えたら、思いのほかみんな乗ってきた、ARABAKIの25周年のために何かやりたいと思うミュージシャンが本当に多かった、ということの、表れなのだと思う。
1日目=4月26日(土)のチケットの前売りはソールドアウト。3年前は雪が降ったり、かと思えば2年前は4月の東北とは思えないほど暑かったり、毎年いろんなコンディションになるのがARABAKIでもあるが、今年は2日とも晴天、ちょっと寒いが着込めば大丈夫、という、かなり理想に近い天候に恵まれた。
以下、そんな2日間の、各アクトの模様をお伝えする。開演から終演までの間、セッション企画を優先して観れるだけ観たが、なんせひとりなので限界がありました。ARABAKI、めちゃ広いのもあって、もっともっと観たかったが、1日9アクトぐらいでした。という点は、ご容赦いただければと思う。
川崎中学校吹奏楽部 Guest:TAKUMA(10-FEET)
初日のMICHINOKU STAGEのトップ(11:00〜)は、毎年この枠がレギュラーになっている、ARABAKIの会場である国営みちのく杜の湖畔公園の地元=川崎町の川崎中学吹奏楽部25人+顧問2人(全校生徒は132人とのこと)。3年生の部長たち4人による曲紹介を入れながら、「葛飾ラプソディー(堂島孝平)」「俺たちの明日(エレファントカシマシ)」「絆ノ奇跡(MAN WITH A MISSION & milet)」「風のプロフィール(東京スカパラダイスオーケストラ)」と、演奏していく。「俺たちの明日」はトランペットの独奏からスタート。「絆ノ奇跡」ではコンテンポラリー・ダンサーが加わる。「風のプロフィール」では、入部したばかりの1年生4人もタンバリンで参加し、29人になった。そしてラストの「第ゼロ感」では、TAKUMA(10-FEET)が登場。昨年はバンド側からのリクエストで、川崎中学吹奏楽部と10-FEETが一緒に演奏したが、今年は吹奏楽部をバックにTAKUMAが歌う形である。サビの「whoa,whoa」では、フィールドいっぱいにシンガロングが広がった。
Hakubi×UNFAIR RULE
その同時刻に始まったARAHABAKI STAGEのアクトは、HakubiとUNFAIR RULEのコラボ。最初に「木綿のハンカチーフ」(太田裕美)を、ボーカルふたり=片桐と山本珠羽で弾き語り。そして、UNFAIR RULEが5曲、Hakubiが5曲演奏したあと、Hakubi片桐・ヤスカワアル+UNFAIR RULE山本珠羽・悠瑞奈・杉田崇の5人になる。で、Hakubiの「光芒」とUNFAIR RULEの「非常少女」が、メドレーというかマッシュアップというか、とにかく生演奏で混じり合うという、まさにここでしか観れないパフォーマンス。片桐と山本珠羽、最初はそれぞれの曲でボーカルをとり、後半はお互いの曲を歌い合い、混ざり合っていった。
Rei Guest:アユニ・D(PEDRO)
HANAGASA STAGEの二番手は、今年でデビュー10周年のRei(12:20〜)。3曲目「COCOA」の途中でギターの音が出なくなり、すぐには直らないと判断したReiがギターを捨ててハンドマイクになり、大きく腕を振ってオーディエンスをアオりながら歌う、という、とてもレアな姿を観ることができた。曲を終えた本人、「人前でハンドマイクでライブするのは初めて」。4曲目からゲスト=アユニ・Dを呼び込み、「PEDROの大好きな曲」(Rei)の「自律神経出張中」と、Reiの「Heaven」の2曲をコラボする。色違いのセットアップ姿なのは、「揃えて来た」とのこと。アユニ・Dが去り、「Lonely Dance Club」「What Do You Want?」と演奏し、ラストの「BLACK BANANA」では、間奏で再びアユニ・Dを呼び込んだ。アユニ・D、ソロを弾きまくるReiと肩を組んだ。
BEGIN×シアターブルック
「最高ね。ほんとに、音楽やっててよかったなと思います」「このために俺は石垣島からやって来たんで!」。比嘉栄昇がそんなことを何度も口にするのもわかるほどの多幸感が、ステージから放たれていたのは、TSUGARU STAGE三番手(14:45〜)の、BEGINとシアターブルックのコラボ・ステージ。BEGINの4曲目「島人ぬ宝」でシアターブルックの3人が加わって共演、その後5曲目から7曲目までシアターブルック。7曲目は、デビュー30周年記念である今年に向けて、1年前にリリースした新曲「私をアムスにつれていって」である。「こんなすんばらしい組み合わせ、ARABAKIならでは」「ARABAKIはいい思い出ばっかりです」と、佐藤タイジ。8曲目はサポートも含むBEGIN全員が加わって、シアターブルックの「ありったけの愛」。さらにラストに「最後にあの曲いきましょう。ボス、下りて来ると思いますよ」と、RCサクセション「雨あがりの夜空に」が演奏された。
WANDS Guest:ナヲ(マキシマム ザ ホルモン)
WANDSのステージに、ナヲ(マキシマム ザ ホルモン)がゲスト参加する、と知った時点で、「ということは!」と思った方、多かったのではないか。その期待どおり、6曲目が終わったところで登場、「バンドやってるとこんなこともあるんですね!」などと喜びを表しながら、「世界中の誰よりきっと」の中山美穂のパートを歌った。16年前の自身の結婚式でのお色直しの時、ブルーのドレスでこの曲を歌ったから、今日は……ということで、真っ赤なドレス姿である。なお、WANDSは、最新の曲たちを軸にしつつ、「時の扉」と「愛を語るより口づけをかわそう」のメドレーや、「世界が終わるまでは」といった往年の大ヒット曲も盛り込んだセットリストで、オーディエンスを狂喜させた。
THE COLLECTORS×フラワーカンパニーズ Guest:田中ヤコブ(家主)
普段から近しい関係性の「超大ベテラン」と「大ベテラン」=THE COLLECTORS×フラワーカンパニーズに、家主の田中ヤコブがギタリストで加わるコラボ・ステージは、ARAHABAKI STAGEで17:20から。たくさんの関係者や仲間のミュージシャンがソデで見守る中、THE COLLECTORSと田中ヤコブは「限界ライン」で、THE COLLECTORSとフラカンは「Sha-la-la-la-lee」でコラボ。そして最後にTHE COLLECTORS+フラカン+田中ヤコブで、フラカンの「ロックンロール・スターダスト」をプレイした。かつてTHE COLLECTORSが初めて日本武道館に立った時、それを応援するために作ったユニオンジャック柄のオーバーオール姿のグレートマエカワは、登場時に、フラカンが2025年9月20日に行う、10年ぶり二度目の日本武道館のフラッグを大きく広げた。
BRAHMAN
MICHINOKUステージの初日トリ前(18:15〜)を務めたBRAHMAN、ゲストの予告はなかったが、結果、G-FREAK FACTORYの茂木洋晃が1曲(「其限」)、ELLEGARDENの細美武士が2曲(「最後の少年」と「WASTE」)で登場。TOSHI-LOWは茂木洋晃を「俺の大筋な群馬の少年」、細美武士を「14年前3月、誰も味方がいなかった時、支援物資を北に向かって一緒に来てくれた、そこからずっと俺の親友」と、紹介した。
東京スカパラダイスオーケストラ Guest:奥田民生、TAKUMA(10-FEET)、TOSHI-LOW(BRAHMAN)
TOSHI-LOWは、BRAHMANの終了5分前から始まっていた(18:55〜)、東京スカパラダイスオーケストラにもゲスト出演。出番が終わると、会場内でもっとも遠くにあるBAN-ETSU STAGEまで移動。衣装のスラックスを穿きながらステージに走り出る・その後ろからジャケットを着せようと奥田民生が追いかける、という登場で、参加者の爆笑をとった。
KALMA Guest:なち(サバシスター)
ARAHABAKI STAGEのトリを務めたKALMA(19:15〜)には、自身のステージではPEDROとコラボした、サバシスターのなちが参加。「KALMAと大好きな歌、一緒に歌います!」(なち)と「デート」、「せっかくなんでサバシスターの曲も一緒にやります」(畑山悠月)と「ジャージ」の2曲を、ハンドマイクで歌った。
ARF 25 A GO GO MAN WITH A “15TH” MICHINOKU PEACE MISSION
現在15周年アリーナ・ツアーの最中だからか、そのツアーで使用している、真っ白で目から光を放つ巨大オオカミ×5の巨大な彫像のステージセットを持ち込んだMAN WITH A MISSIONが、初日の大トリ(MICHINOKU STAGE/20:00)。「ARF 25 A GO GO MAN WITH A “15TH” MICHINOKU PEACE SESSION」と銘打っての、事前のゲスト告知なしの時間である。3曲目「Thunderstruck」で、「2曲ギターを弾いて疲れましたので、代わりに特別なゲストを」とJean-Ken Johnny。で、04 Limited SazabysのRYU-TAがギターを弾く。
続く「database」では10-FEETのTAKUMAが加わった。川崎中学校吹奏楽部→10-FEET→G-FREAK FACTORY→東京スカパラダイスオーケストラを経ての、この日5度目のステージである。ツアーを一緒に回っている「吉田宇宙ストリングス」と共に3曲プレイした後は、Jean-Ken Johnny+ストリングス2人+E.D.Vedder(サポートギター)というアコースティク編成で、次のゲスト=三つ揃えのスーツ姿のTOSHI-LOWを迎えた。TOSHI-LOWは、この日4度目の出番。歌の前に、「俺、言いたいことがあってさ、俺なりの言葉で言っていい?」と、話し始める。コロナ禍だった4年前に、ARABAKIが1週間前にクレームが入って中止せざるを得なくなった時、何かできることないかな、とTokyo Tanakaに相談した……という話から始まり、「行く末がわからなくても、一歩に満たなくても、半歩でも前に進む。それが俺たちのできること」で終わる、感動的な話だった。が、Jean-Ken Johnny、間髪入れず「それ俺の武道館のMC」。場内、大爆笑。そしてTOSHI-LOW曰く「この曲は、ARABAKIに対して歌ってんじゃないかな」という「アカツキ」を、この5人で聴かせた。
そこからはメンバーだけに戻って3曲。本編ラストではステージ床から何本もの火花が噴射される。アンコールは3/12リリースの新曲「Vertigo」と「絆ノ奇跡」。「絆ノ奇跡」の締めに、また火花。ライブというのは五感以上のものですべてを感じ取るエンタテインメント、オオカミたちはライブがあるところ、いつでも足を運びますので。いろいろなアーティストも含めて、五感以上で楽しめる何かを感じ取りに、またライブに来てください──というメッセージを、Jean-Ken Johnnyは最後に送った。
文=兵庫慎司 撮影=Team SOUND SHOOTER
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