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マザコン、ニートに遊び人…どうしようもない男たちとの恋愛模様を描いた映画2選【福岡映画部/石渡麻美】

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作品タイトル:欲望の翼 デジタル・リマスター版 配給:ハーク コピーライト:© 1990 East Asia Films Distribution Limited and eSun.com Limited. All Rights Reserved.

みなさんこんにちは!
福岡で映画イベントの企画・運営を行う福岡映画部の石渡麻美です。

今回ご紹介する映画は、「どうしようもない男たちとの愛とか恋とかを描いた映画」。2作品それぞれの雰囲気は全く異なりますが、どちらも完璧といっていいほどの美しさを持った映画たち。

画像:ハーク

本当に是が非でも観ていただきたいこの2作品を、今回は、作中に登場する「女たち」の視点からご紹介してみたいと思います!

1:女はどう可愛がられ愛されるかで、何者にだってなり得る 『欲望の翼』

画像:ハーク (c) 1990 East Asia Films Distribution Limited and eSun.com Limited. All Rights Reserved.

『欲望の翼 デジタル・リマスター版』/配給:ハーク

〈作品あらすじ〉 

1960年代香港。養母のスネをかじる遊び人のヨディは、サッカー場で売り子をしていた堅実な女性スーに声をかけ、ふたりは恋に落ちる。しかしヨディは、まだ見ぬ実母へ複雑な思いを抱えていた。

結婚についての意見がすれ違う2人は別れを迎える。程なくして、養母の経営するナイトクラブの踊り子ミミと出会ったヨディは、そのまま一夜を共にする。

部屋を出たミミはヨディの親友サブとすれ違い、サブはミミに恋をする。別の場所では、夜間パトロールの警官タイドが傷心のスーに想いを寄せ、スーはヨディへの想いを捨てきれずにいた。

<石渡的注目ポイント>「あの日の記憶」を永久保存するウォン・カーウァイのフィルム

画像:ハーク

ニートで金持ち、マザコンで遊び人、そしてなんてったって色男の主人公が、キザなセリフをお腹いっぱいに浴びせながら、純情と色気を口説き落としていく至極眼福香港映画。

名匠ウォン・カーウァイ監督の世界は、雨音や「静寂の音」を拾いながら、彼が思いを馳せた60年代の香港の空気と湿度、そしてスクリーンの中で見事にすれ違う男女の人間味をありありと届けた。

画像:ハーク

どうしようもないダメ男・ヨディを演じるのは、色気香り立つスター俳優レスリー・チャン。生き別れた実母への複雑な思いを抱きつつ、養母へ甘え、腕の中に落ちる女たちを振り回す様は、女としては心底恨めしくも、美しく、そして悲しい。

そんな、「側からみればダメ男」に、恋の白旗を掲げる2人の女の姿は、恋愛に身を削ったあの日の自分と少なからず重なり、ヒリヒリと心が痛む。男は孤独を埋める母性を追い求め、女はひらひらと移ろう恋に溺れる。

画像:ハーク

製作から30年。時代が移ろい、女性のパワー感じる映画がスクリーンに溢れても。それでもやはり、どう可愛がられ愛されるかで何者にだってなり得るような女心も健在で。スーにもミミにもなり得たあの日の自分を、「思い出と経験」なんて愛でながら、「あれから少しは成長できただろうか……」と思いを馳せる。

若さと恋愛、一瞬の煌めきと痛々しさを写した本作は、個人的に、“観た人と紹興酒片手に語り合いたい映画No.1”の作品だ。湿度も気温も色も匂いも、記憶をフィルムに焼き付ける魔法使いのような映画監督ウォン・カーウァイの世界を、どうぞお楽しみあれ。

画像:ハーク

2:「完璧な美」と、一匙の狂気『ファントム・スレッド』

〈作品あらすじ〉

1950年代のロンドン。英国ファッション界の中心で活躍する、オートクチュールの仕立て屋レイノルズ・ウッドコックは、社交界から絶大な人気と信頼を我がものにしていた。ある日、レストランで昼食をとったレイノルズは、ウェイトレスとして働いていたアルマとの運命的な出会いを果たす。

アルマをミューズとして自らのメゾンに招き入れるレイノルズ。しかし、完璧だったレイノルズの日常は「理想の女性」アルマとの出会いによって、次第に変化していく……。

画像:NBCユニバーサル・エンターテイメント

『ファントム・スレッド』
Blu-ray: 1886 円(税別)/DVD: 1429 円(税別)/発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント

<石渡的注目ポイント>愛か? 狂気か? 逆転していく男女のパワーバランス

天才監督ポール・トーマス・アンダーソンとオスカー常連俳優ダニエル・デイ=ルイスが再タッグを組み、アンダーソン組御用達の一流製作陣の手によって作られた本作。ため息ものの美しさと、震えるほどの人間臭さ、近年稀に見る傑作が描いたのは、愛か?狂気か?

この映画は、ロンドンの一流デザイナーに「見初め」られ、レストランのウェイトレスからオートクチュールのメゾン入りを果たしたヒロインが、仕事命で神経質な完璧主義の年上彼氏を「本気にさせる」までの勝負の恋愛物語。

思わず姿勢正したくなるエレガントなオープニングを決め込むのは、役作りが本気すぎることで有名なダニエル・デイ=ルイス。彼がロマンスグレーの髪を撫でつけ、(多分)シルクの靴下につま先を通すころには、観客の心はこの映画にストンと落ちる。

かたや、レストランでお客(どう見ても上流階級)に「For the hungry boy♡」と書いて“お名前メモ”を渡しちゃうヒロイン・アルマの怖いもの知らずな好奇心は、同じ女としてあっぱれお見事なバイタリティを感じさせる。

彼女は、人生で逃したくない恋を我がものにするため、寝ても覚めても仕事のことしか考えていない彼氏を本気にさせる、「ある秘策」を考える。そして、年も身分も違いすぎる2人の恋物語は、次第にその隔たりを無視して恋愛の主導権をめぐる男女の駆け引きへと展開していく。

トントン拍子でカップルとなり、初めは静かに彼氏の言いなりだったアルマが、次第に恋愛の主導権を引き寄せ、パワーバランスを逆転させていく様は、恐ろしさと同時に清々しさも覚える。作中で惜しげもなく披露されるレイノルズの筋金入りのマザコンっぷりに、若干引きつつ、それでも愛でつつ。見聞きする全てを恋の策士の戦略に変えて、静かに微笑むその笑顔の満足げなこと怖いこと。

普通とはなんなのか、幸せとは、愛とは……。他人がなんと言おうとも、逃すわけにはいかない恋が……ある?

賛否はじけるその結末に、思わず自分のパートナーとの関係を確かめたくなるかもしれない……。観る人それぞれで「何を描いたか」が異なるこの物語、あなたにとってはどんな物語だろうか?

以上、「どうしようもない男たちとの愛とか恋とかを描いた映画」2本をご紹介しました!

いかがでしたでしょうか?

恋愛映画を語る時は、どうやったって個人的感情がいつもより多めに漏れ出してしまいますね……!苦笑 そして、今回は書ききれませんでしたが、実はこの2本の映画は、「飯テロ映画」でもあります。恋愛と食とインスピレーションの蜜月が……と、その話は長くなるので、またいつかの楽しみにとっておくとして。

時に人生を考えながら、時にどうしようもない男たちとの駆け引きに想いを馳せながら……。恋とか愛とかな2作品、ぜひ楽しんでみてくださいね!(文/石渡麻美)

【参考・画像】

※石渡麻美(福岡映画部)

※映画『欲望の翼』公式サイト

※映画『ファントム・スレッド』公式サイト

この記事は公開時点での情報です。

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