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サステナビリティは他者への思いやり。帝国ホテルが考えるSDGs

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サステナビリティは他者への思いやり。帝国ホテルが考えるSDGs

渋沢栄一が初代会長に務め、130年以上の歴史を持つトップクラスのラグジュアリーホテル「帝国ホテル」。ホスピタリティ精神を貫く伝統あるホテルが推進するSDGsとは? 帝国ホテル 東京料理長 杉本雄氏に、食を基軸としたホテルのサステナビリティについて聞く。
写真は海老の頭や殻まで余すことなく使用した「天使の海老のモダンなサンドウィッチ仕立て」

食から考えるSDGs

2020年、帝国ホテルは開業130周年を迎えた。1890年に、海外からの賓客を迎える「迎賓館」としての役割を担って誕生したホテルは、渋沢栄一を初代会長とし、長きにわたって日本の外交を支えるとともに、日本における西洋料理の発展にも大きく貢献している。

その帝国ホテル東京に2019年、第14代料理長として杉本雄(ゆう)氏が就任。伝統あるホテルで多くのスタッフを率いて厨房の指揮を執る傍ら、ホテルが本格的にスタートしたSDGsへの取り組みについても、食の観点からさまざまな提案を進めている。

食を巡るサステナビリティとしては、食品ロスの問題などいくつもの課題がある。「大きな問題にいきなり取り組むことは難しいけれど、できることを一つずつと、身近なことから始めています」と、杉本氏は語る。

フランス料理はもともと、素材を余すことなく使い、おいしく食べ切る料理法だと言われる。例えば、今ではすっかり日本でも人気メニューとなったフレンチトーストもその一つだ。
「フレンチトーストはフランス語で『パン・ペルデュ』。直訳すると『失われたパン』という意味です。おいしいタイミングを失ってかたくなったパンを、フランス人は上手にリメイクする。そうした精神を、日本の西洋料理をリードする私たちも受け継いでいます」
パンを型に入れて成形する際にどうしても余ってしまう生地がある。杉本氏は、その生地をまとめて別の新しいパンを作り、それをフレンチトーストやラスクにしたという。
「最後までおいしく食べる。それが食品ロスを無くす基本です」

世界を良くするために、ホテルができること

帝国ホテルでは、国連のSDGs採択に先駆けて2001年から社内に環境委員会を設置し、屋上緑化や生ごみの肥料化に着手していた。

「生ゴミを乾燥させて肥料にし、その肥料で育てた野菜を使用するなどの工夫は10年以上前から行っています」

ほかにも、リサイクル、リユース、リデュースのいわゆる「3R」やグリーン電力など、さまざまな形で環境に配慮。その活動が認められ、2016年から5年連続で環境省の「環境人づくり企業大賞」を受賞している。

帝国ホテルが何よりも大切にするのは、「人づくり」。それはSDGsへの取り組みに関しても同じで、従業員向けの環境ツアーを実施するなど、社内での啓発を積極的に行なっている。

そしてまた、杉本氏が料理長に就任してからは、子どもたちへの「食育」にも力を入れるようになった。

「サステナビリティとは、限られた資源を無駄なく大事に使うこと。食材も然り、です。目の前の食材をすみずみまでおいしく食べるということ、そしてそれが世界を少しずつ良くしていくのだということを、食育イベントなどを通して子どもたちにも伝えたいと思っています」

コロナ禍がもたらしたもの

杉本氏の就任後ほどなく、世の中はコロナ禍に見舞われた。

「前例をみない事態に初めは戸惑いました。これまで当たり前だったことがそうでなくなる。お客様でいっぱいだったホテルから人がいなくなる。そんなことがあるとは想像さえできませんでした」

ホテルはほぼ休業状態、もちろんレストランもクローズ。ブフェレストラン「インペリアルバイキング サール」も営業停止を余儀なくされた。

「前代未聞の一大事。でも悪いことばかりではありませんでした」

「コロナ禍で時間的な余裕が生まれました。だからいろいろ考えられて、新しく大きな企画に取り組む時間ができました」

その結果、素晴らしいアイデアが生まれてきたという。

「スタッフから、感染防止を踏まえながらもこれまで通りバイキングの気分を楽しめるスタイルの提案がありました。そのおかげで、帝国ホテルらしいホスピタリティでまたお客様をもてなすことができるようになった。これはうれしかったです」

そしてもう一つ、食品ロスのおいしい対策法が現在進行中だという。

「これまで廃棄していた果物の皮や野菜の外葉を使った商品を開発しています。今年中にはお披露目できそう。楽しみにしていてください」

コロナ禍は確かに世界をひっくり返すほどの歴史的な出来事だ。しかし、人間を原点回帰させ、自らの役割や社会のあり方を考える一つのきっかけにもなっているのかもしれない。

真のラグジュアリーとは何か

「実は、サステナビリティへの取り組みに最初は少し違和感があったんです」と、杉本氏。

非日常を提供するラグジュアリーホテルで、最高級のものを求めるお客様に、「食品ロス」や「リサイクル」などといった日常を提示することに、若干の抵抗感があったのだという。

「けれど、初代会長の渋沢栄一の『論語と算盤』を読んでハッとしました。道徳と経済、それはホテルのあり方にも通じるものがある。ただただラグジュアリーだけを追求するのでは真のラグジュアリーにはなれない。それを支える道徳的なもの、つまりサステナビリティを備えてこそ、本当のラグジュアリーであると、そう教えられた気がします」

サステナビリティとは何か。それは、今あるものを未来につなぐこと、つまりは、未来への思いやりだ。環境に配慮し、他者を気遣う。伝統あるホテルが培ってきたホスピタリティは、まさにサステナブルそのものなのではないだろうか。

杉本流の「論語と算盤」が、帝国ホテルの伝統と栄光をサステナブルに導いてくれることを心から願い、そして信じている。

杉本 雄 Yu Sugimoto
東京料理長。武蔵野調理師専門学校を卒業後、1999年に帝国ホテルに入社。2004年に退社して渡仏し、帰国までの13年間をフランスで過ごす。フランスでは、ブルターニュのビストロを皮切りに、厨房だけでなくホールの接客サービスなどさまざまな経験を積んだ。1835年創業の歴史あるホテル、ル・ムーリスでは、ヤニック・アレノ、アラン・デュカスという名料理人のもとでシェフを務め、同ホテルのメインダイニング(3つ星)では責任者の役割を担った。その後、2つのレストランで総料理長を務めて帰国。2017年に帝国ホテルに再入社し、2019年4月より現職。

帝国ホテル
https://www.imperialhotel.co.jp/j/

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