「主人公だけが突出して格好いいのは、逆に格好悪い」森田成一さん、杉山紀彰さん、梅原裕一郎さんが語るTVアニメ『BLEACH 千年血戦篇-禍進譚-』――全員で目指した“120パーセント”【インタビュー】
TVアニメ『BLEACH 千年血戦篇』の最終クールとなる「-禍進譚-」が、テレ東系列ほかにて2026年7月25日(土)23時より放送開始となる。
放送に先駆け、黒崎一護役の森田成一さん、石田雨竜役の杉山紀彰さん、ユーグラム・ハッシュヴァルト役の梅原裕一郎さんにインタビュー。取材が行われたのは、TVアニメ『BLEACH 千年血戦篇-禍進譚-』第1話~第3話の劇場先行上映会を目前に控えた会場だった。
期待に胸を膨らませる中、完成映像を目にした感想をはじめ、最終決戦に臨むそれぞれの思い、雨竜とハッシュヴァルトの対峙、一護の必殺技に込めた演技プランまで語ってもらった。
【写真】TVアニメ『BLEACH 千年血戦篇-禍進譚-』森田成一×杉山紀彰×梅原裕一郎が目指した120パーセント【インタビュー】
「あれ、これは劇場版だったっけ?」圧倒的な映像と音響
──私も試写会で拝見したのですが、興奮が収まらないほどの映像でした。まずは、完成した映像をご覧になった感想をお一人ずつお聞かせください。
黒崎一護役・森田成一さん(以下、森田):僕はスケジュールの都合で関係者試写会に行けなかったので、家で見たんです。「千年血戦篇」が始まってから、ずっと非常に高いクオリティで作られてきましたが、その高いレベルを最後の「禍進譚」までしっかりと保ちながら、さらにパワーアップした映像とカメラワークになっていました。そこが非常に際立っていたと思います。実際僕たちがアフレコをする段階では、まだそこまで絵が完成していないので、あらためて映像を見ると「こういうことだったのか」と、ずっと驚かされました。きっとファンの皆さんにも絶対に喜んでいただけるレベルになっていると思います。
石田雨竜役・杉山紀彰さん(以下、杉山):僕は関係者試写会で、大きなスクリーンで拝見したのですが、凄まじかったですね。「あれ、これは劇場版だったっけ?」と本気で思いました。映像はもちろん、音響もすごくて。セリフを含めてマルチチャンネルで作られているので、カメラのアングルが変わるたびに音源の位置もきちんと変わっているんです。「これは本当に、劇場用のマルチチャンネルで音を作っているよね」と思うほど細かく作り込まれていました。基本的にはテレビで放送される作品ですが、劇場にかけてもまったく遜色なく、そのまま通用するほどの映像と音響のクオリティだと思います。
これまでの「千年血戦篇」もそうですが、スタイリッシュでおしゃれなところは、今回もきっちりと表現されています。皆さんの期待を裏切らない凄まじい出来になっていますので、ぜひ楽しみにしていただきたいです。
ユーグラム・ハッシュヴァルト役・梅原裕一郎さん(以下、梅原):冒頭から目を奪われるような映像で始まったので、それだけでも、本当に大変な作業だったのだろうと感じました。また、いろいろな戦いが同時進行で行われていることが、映像になったことで、よりわかりやすく伝わってきました。
原作も素晴らしいですが、原作にはない新しい描写も多く、とても見応えがあります。テレビでご覧になる方は、本当にびっくりすると思います。「千年血戦篇」が始まってからクオリティを落とすことなく、最終クールまでたどり着いたことは、本当にすごいことだと感じました。
──森田さんは、いよいよ最後の戦いを迎えるにあたって、どのような思いで収録に臨まれたのでしょうか?
森田:不思議と、何も変わらない感じでした。20年やってきて、もう最後なのだから、何か特別な感慨があるのかなとうっすら思っていたんです。でも、「たぶん俺は、何も考えないまま終わるような気がする」と思っていたら、本当に何も考えないまま終わりました。そういうものなんでしょうね。ただ、収録が始まる前から、自分の中ではある程度決めていた部分でもあります。「決めていた」というか、感慨に浸りながら演じてしまうと、おそらくめちゃくちゃなことになってしまう。余計な自分の指針のようなものが入ると、芝居がブレていくと思ったので、変な熱量を入れないようにしようと思っていました。だから、収録が終わった今も、何となくまだ終わっていないような感覚のままです。大きな感慨や感動があったり、涙が出たりすることもなく、普通に過ごしています。
──以前のインタビューで、「千年血戦篇」が始まる際に、森田さんが「もののあはれ」についてお話しされていたことが印象に残っています。その思いは、今も変わっていませんか?
森田:そうですね。「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり」ではありませんが、自分自身や時間、そこで起こる事象というものは、変遷していくなかで自然と移り変わっていくものだと思います。そのなかにある「もののあはれ」、つまり、終わっていくことの「あはれ」のなかに美学があると思うんです。それを押しとどめようとすると、かえって変な形になってしまう。だから押しとどめるのではなくて、崩れていくものや朽ちていくものは、その流れに任せたほうが美しいのではないかと思っています。
──すてきな表現です。梅原さんは「千年血戦篇」に初めて参加された際、ものすごく緊張しているとお話しされていました。最終クールの収録でも、その緊張感は変わりませんでしたか?
梅原:変な緊張はなくなりました。とはいえ、ハッシュヴァルトの見せ場となるシーンもあるクールでしたので、そこに対して気合いを入れなければいけないという思いは、もちろんあります。ただ、必要以上に固くなりすぎることなく収録できたと言いますか。森田さん、杉山さんともご一緒しましたし、関わる先輩方が温かく迎えてくださったので、どんどん緊張が解けていき、のびのびと演じられたと思います。
一護と過ごした時間が、雨竜の選択に与えたもの
──今回は、ハッシュヴァルトと雨竜の戦いが大きな見どころのひとつになっています。どのような思いで収録に臨まれましたか?
梅原:終わりに向けて物語が進んでいくことに対して、寂しさはありました。
ハッシュヴァルトとしては、これまでバズビーとの戦いなどでも、それほど感情を表に出さないように描かれています。なので僕自身も、感情を盛りすぎないように演じてきたんです。ただ、最終決戦では、石田雨竜との対話を通して、ハッシュヴァルト自身が自分の気持ちを言葉にしていきます。そうして自分の気持ちを言葉にしながらも、生き様のようなものは最後まで変わらなかった。そのことも含めて、ハッシュヴァルトには、ある種、救われた部分もあったのではないかと、演じながら感じました。
──ハッシュヴァルトの強大な力に立ち向かう雨竜からも、これまでとは異なる一面や心の内が見えたように感じました。杉山さんは「禍進譚」に向けて、どのように演じられましたか?
杉山:ハッシュヴァルトとの戦いについては、ハッシュヴァルトという強敵とどう相対していくのか、彼がどれほどの力を持っているのかというところも含めて考えました。でも……なんていうんでしょうね。「禍進譚」に進む前、一護たちと別行動を始めた段階から、自分が命を落としてでも、滅却師(クインシー)としてやらなければならないことがあるという覚悟で動いています。ですから、ハッシュヴァルトとの戦いを迎えたからといって、そこであらためて気持ちが大きく変わったわけではないのかなと。
いろいろなことを考えていたとは思うんですよね。一護たちが戦っている間、周囲に邪魔をさせないことや、時間を稼ぐことも考えていたでしょうし、自分の命についても考えていたはずです。最終的に生きるか死ぬかはわからなくても、やれるだけのことをやり抜くしかない。ある意味では、達観していたのかもしれません。言葉にするのは難しいんですが、「禍進譚」に入ってから、あらためて何かを決意したというよりも、雨竜が最初から考えていたことが、ここで描かれたのだと思います。一護から「どうしたいんだ」と問われる場面があり、そのうえで「僕はこれをやる」と決めている。死んでもおかしくないという覚悟を持って戦っているからこそ、変な焦りや気負いもなく、やれるだけのことをやるだけだったのではないでしょうか。
──まさに雨竜らしいですね。
杉山:そうですね。絶対に勝てるとも、絶対に負けるとも思っていない気がするんです。やれるだけのことをやった結果、どうなるかはわからない。僕が思うのは、雨竜は最初からいろいろなことを考えて計画を立て、自分なりの考えで動いているんですけど、一護と長く一緒にいたことで、一護の考え方や行動様式に少し染まっている部分もあると思うんです。
出たとこ勝負のようになる場面でも、「あいつなら、こう言うだろう」と考えることがあるでしょうし、一護に対する理解も以前より深まっている。具体的に言及することはなくても、気がつけば雨竜自身も、一護と似た選択や行動を取るようになっているのではないかと感じました。
森田さんが語る最終クールの演技設計
──森田さんは「千年血戦篇」が始まった際、月牙天衝を放つ声について、「まだ30パーセントくらいに抑えている」とお話しされていました。今回の「禍進譚」の第1話から第3話では、声の力を何パーセントくらい出したのでしょうか?
森田:第1話から第3話までは、そこまででもなかったですね。前の「相剋譚」で言うと、60パーセントくらいだったんじゃないですか。
──60パーセントですか。
森田:はい。「禍進譚」の第1話から第3話では、月牙十字衝にしろ月牙天衝にしろ、戦いのなかで比較的早く技を出していましたよね。「ここでドンと入れる」という完全な決め技のような感じではなかったので、「禍進譚」のレベルで30パーセントから40パーセントくらいで、あまり変わらなかったのかもしれません。「禍進譚」を通しても、フルスロットルではなかった気がします。
──物語全体のバランスを意識されていたのでしょうか。
森田:そうですね。必殺技だけをフルスロットルで演じてしまうと、かえってごちゃついてしまうと思ったんです。必殺技だけを100パーセントにするのではなく、ほかの部分にも力を分散させて、芝居全体で100パーセントになるようにしていった気がします。
最初の頃の『BLEACH』では必殺技で勝負が決まるという、いわゆる王道のヒーローものとして受け止めていましたし、そういう形で一護を構築していこうと考えていました。でも、今回の『BLEACH』に関しては「そうではない」と、物語を演じていく中でわかったんです。一護も物語を構成するひとつのパーツになり、みんなの力を合わせたものが“必殺技”になっていく。そのほうがいいだろうとイメージが変わりました。だからこそ、主人公だけが突出して「バーン!」と決めるのは、少しダサいのかもしれない。
── 一護だけではなく、全体で戦うということですね。
森田:そうです。今回の最終決戦、そして「千年血戦篇」に関しては、そのほうが格好いいと思いました。
── 一人で100パーセントを担うのではなく、全員で120パーセントを目指すようなイメージでしょうか?
森田:そうですね。目指すところは、そこになるんじゃないでしょうか。ご覧になってわかったと思いますが、先ほど梅ちゃんも話していたように、いろいろな場所で戦いが同時に起こっていて、それぞれに見せ場があります。そうなると、主人公だけが突出して格好いいというのは、逆に格好悪いと思うんです。
「ここはこういう見せ方」「こちらはこういう見せ方」と、それぞれに合った表現をする。『BLEACH』自体がスタイリッシュな作品なので、そのほうが格好いいのではないかと思いました。
──「千年血戦篇」が始まった頃に梅原さんへ取材した際、「森田さんは月牙天衝を30パーセントほどの声量で演じているそうです」とお伝えしたら、「半端ないですね」と驚かれていました。
一同:(笑)
杉山:収録でも、テストの段階から本気で演じていますからね。僕が「森田さん、少しセーブしなくて、声は大丈夫ですか?」と言うくらいで(笑)。
森田:「大丈夫、大丈夫」ってね(笑)。リハーサルで声を出しておかないと、本番で出せないんですよ。そこで「よし、声ができた」となる。江夏豊さんと同じですよ。マウンドに立ってから、投げながら肩を作っていく。江夏さんは、その前にブルペンへ行かなかったそうですから。
杉山:なるほど(笑)。
森田:僕は昭和の人間ですから。全然大丈夫です(笑)。
梅原:いや、もうすごすぎますよ。
──ファンの皆さんも、この先の展開を楽しみにされていると思います。本日の作品をご覧になる方々へ向けて、最後にメッセージをお願いします。
森田:東京で行われるライブ・ビューイングを含めた先行上映会が、世界で最初の上映になりました。さらに、ワールドツアーとして、さまざまな国でも上映されています。。最終クール「禍進譚」は世界中の『BLEACH』ファンから注目されていますし、皆さんが本当に待ってくださっています。放送の反響がどのようなものになるのか、とても楽しみです。
[インタビュー/逆井マリ]