“住みたい街”ランキングの常連・天王寺エリア。支持される理由とは?【アンナのおうち探し】
引っ越しシーズンが落ち着いた7月や8月は、ゆっくりおうち探しができるという声もあります。そこで、SUUMO(スーモ)編集部に関西の“住活”事情を伺いました。今回は「SUUMO住みたい街ランキング2024 関西版」(株式会社リクルート調べ)では5位にランクイン、大阪では梅田、なんばに次ぐ人気を誇る天王寺駅周辺エリアを深掘り! 人々を惹きつける理由について、関西圏での“住活”ヒントなどを、SUUMO副編集長・笠松美香さんにお話いただきました。
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交通至便の天王寺は、住むのにも最適?ファミリー層や子育て世代にも支持される街にいざ、天王寺で“住活”! 笠松さんに直球質問!理想の物件と出合うコツが知りたい!
交通至便の天王寺は、住むのにも最適?
「SUUMO住みたい街ランキング2024 関西版」(株式会社リクルート調べ)では5位にランクイン、大阪では梅田、なんばに次ぐ人気を誇るのが、天王寺駅周辺エリア。
1位梅田(地下鉄御堂筋線) ※1
2位西宮北口(阪急神戸線)
3位神戸三宮(阪急神戸線) ※2
4位なんば(地下鉄御堂筋線)
5位天王寺(地下鉄御堂筋線) ※3
※1:梅田、大阪、大阪梅田、東梅田、西梅田、北新地の得点を合算
※2:神戸三宮、三ノ宮、三宮、三宮・花時計前の得点を合算
※3:天王寺、大阪阿部野橋、天王寺駅前の得点を合算
なんばまで6分、梅田まで15分という交通至便なこの街が人々を惹きつける理由はほかにもいろいろあると思います。長年関西の住宅事情をウォッチしてきた笠松さんから見た、天王寺駅周辺エリアの魅力について教えてください。
(笠松さん:以下K)
天王寺駅は大阪メトロの御堂筋線・谷町線、JR大阪環状線・大和路線・阪和線が乗り入れるターミナル駅。2023年の調査によれば大阪メトロ天王寺駅は1日の乗降客が238194人、2022年に発表されたJR西日本エリアで“一番利用者が多い駅”の3位にJR天王寺駅がランクインするなど、大阪でも屈指の乗降客数を誇る巨大駅でもあります。なにわのシンボル・通天閣がある新世界までも徒歩圏内でありながら、今や大阪の新ランドマークとして定着した「あべのハルカス」も駅前に。大阪の観光拠点としてもおなじみです。
天王寺エリアが注目されるきっかけとなった「あべのハルカス」
(K)
「あべのキューズモール」がオープンした2011年あたりから注目が高まり、2014年に「あべのハルカス」が竣工し、注目度が一気に高まりました。ここ数年も常に上位を保っており、大阪の人にとっては住みたい、憧れの街と言えると思います。
ファミリー層や子育て世代にも支持される街に
“住みたい=交通の利便性”となる働き盛りの世代は特に人気がありそうですね。ファミリー層からみた「住みやすさ、暮らしやすさ」という観点からはいかがでしょうか?
(K)
天王寺エリアは四天王寺を中心に神社仏閣が多く、歴史のある街です。子育て世代が“引越ししてでも通わせたい”と考えるような公立学校が多いこともあり、市内でも屈指の文教地区として知られています。以前はいわゆる“大阪の下町”的な街並みも多く残っていますが「あべのハルカス」のオープン以来、暮らす街としてのアメニティもさらに充実してきました。
特に、2015年の天王寺公園エントランスエリア「てんしば」のオープンにともない、飲食店も増加。ベビーカーを押したママたちがおしゃべりをしたり、周辺で働く人たちが食事をしに来たりと、若い人にとっても魅力ある街へと変貌しています
天王寺公園エントランスエリアとなる「てんしば」には、飲食店のほか子供の遊び場(有料)やフットサルコートなどがあり、公園と街の新しい楽しみ方を提案しています。天王寺動物園ゲートエリアとなる「てんしばイーナ」は飲食施設や各種アクティビティ、動物園グッズショップ、イベント広場などがあり、天王寺動物園と「てんしば」を結ぶ場所としてにぎわっている。グッドデザイン賞・金賞を受賞したことでも話題に。
(K)
2019年には同じく天王寺公園内にある天王寺動物園のてんしばゲート横に新エリア「てんしばイーナ」がオープン。未就学児のいる世帯や、将来は子どもを持ちたいと考える新婚カップルにとっても、天王寺駅周辺は魅力的なエリアとなりました。
働き方改革などの社会の動き、それにともなう“住活”事情の変化も後押ししているのでしょうか。
(K)
そうですね。かつては家族で住む場所といえば北摂・阪神間などの郊外の住宅地が人気で、大阪市内はあくまで働く場所でした。
ところが、ここ二十年ほどで、フルタイムで働く女性やアクティブなカップルが増えたことから、市内に住むことを選ぶ人が増えてきたんです。住む人が増えたことでスーパーや生活施設が増え、治安が格段に良くなった。これによって、若い人たちがこの近辺のマンションを住む場所として選ぶようになったというわけです。
並行して分譲マンションが次々と建設されてきたものの、人気エリアだけに常に供給は足りない状況。新築・中古にかかわらず、マンションの価格は上昇し続けています。また、賃貸の家賃も緩やかに上昇しているようです。
いざ、天王寺で“住活”! 笠松さんに直球質問!
天王寺エリアの立地や環境の良さをふまえて、いざ天王寺で“住活”するとき立ちはだかる悩みを直球で質問しました。関西の住宅事情に詳しい笠原さんならではのリアルな回答は必読です!
【直球質問】その1 「賃貸 or 購入」どちらがベスト?
アンナ世代が気になるのが「賃貸 or 購入」問題。主にマンション住まいがターゲットになると思いますが、実情はいかがでしょうか。
(K)
それぞれの事情によりますので、現場からヒアリングした実情をお伝えしますね。
“都度最適”な暮らしにぴったりの資産性の高さから、購入はアリでしょうか。これは天王寺駅周辺エリアに限った話ではありませんが、「2023年関西圏新築マンション契約者動向調査」(株式会社リクルート調べ)によれば、大阪市内エリアの新築マンションの平均購入価格は5289万円。若い世代にはかなり高額なようにも感じられますが、契約時世帯主年齢のデータを見ると、35歳未満で購入している人が全体の40.5%を占めています。
(K)
今の若い世代は家を買うことに対してポジティブ。その時々のライフステージに合わせて住み替える“都度最適”な暮らしを求める人が多いですから、売りたい時に売りたい価格で売却できる、資産価値を考えて買う人が多いですね。シングル女性でも購入者はここ20年ほど増加傾向にあり、先ほどの調査では購入者全体の10.1%がシングル女性世帯です。
天王寺エリアは交通至便で買い物施設も充実しており、上町台地上にあり地盤が堅牢で水害リスクが低いと評価されていることも評価の高さにつながっているようです。
将来的にマンション購入を検討しているのなら、先を見越すばかりではなく、今のライフスタイルに合った物件を購入し、住み替えるのも一考ですね。ローンの金利の変動など、総合的な判断も必要になりますから、まずは賃貸で住んで気に入ったら購入に踏み切るのもよさそうですね。
【直球質問】その2 「新築 or 中古」買うべきは?
新築物件に注目が集まる一方で、中古物件の価格も上がっています。付加価値を高めたリノベーションが施されている物件も多く、非常に人気が高いと聞きます。
(K)
自分らしい家に住みたい人は、中古物件を購入してリノベーションするのもよいですが、時間と手間がそれなりにかかります。スムーズに引っ越したい!という人は新築やリノベーション済みの物件がいいでしょう。現在は、古くても買い手がつくため、中古物件を事業者が買い取り、リフォームやリノベーションを実施したうえで、事業者が売主となって再度販売する「買取再販」モデルも増えてきており選択肢も豊富です。
もちろん、物件を探すところからリノベーションまで並走してくれる業者もあるので、興味のある人は問い合わせてみるといいでしょう。
【直球質問】その3 「賃貸のメリット、トレンドは?」
「購入」の話が続きましたが、「賃貸」の事情はどうでしょうか。多様性の時代、変化の時代といわれる今、「賃貸」ならではの“縛られない自由さ”は魅力的な側面がありそうです。
(K)
賃貸の在り方も多様化しています。今人気が高いのが、同じ趣味や嗜好をもつ人をターゲットとする、特定のコンセプトを持つ「コンセプト賃貸」。
1LDKの一人暮らし向けの物件の場合、通常キッチンは最低限の設備だけがついていますが、料理好きをターゲットにした物件には、部屋のど真ん中にアイランドキッチンが設置されていたりします。
写真はイメージです
(K)
また、サイクリング好きの人のために自転車を置いたり飾ったりするコーナーが用意されていたり、音楽を嗜む人のために完全防音室や共用ピアノが置かれていたりする物件もあり、立地面で多少不人気な条件でも、大変な人気となっていることも多いです。
写真はイメージです
理想の物件と出合うコツが知りたい!
賃貸・分譲にかかわらず、自分の希望にぴったりの家を探すコツはあるのでしょうか?
(K)
これはもう「とにかく情報収集すること!」の一言につきますね。情報収集力と加えてスピードがカギとなってきます。
昔は不動産屋さんに足を運べば、メディア出してない優良物件が出てくる、なんてことがありましたが、だれもがスマートフォンで部屋を探して、「この物件が見たい」と店舗に連絡をとる時代です。ネットに出ればすぐに誰かの目にとまる訳ですから、気になる物件があればいち早くに連絡することが大事です。
天王寺エリアで暮らすイメージをつかみたいなら、駅周辺に数多くあるホテルに宿泊して、街をじっくり歩いてみるのもよさそう! まずは自分がどんな暮らしをしたいかを洗い出してみてから、上手に物件探しを始めたいですね。
教えてくれた人
SUUMO副編集長 笠松美香/Mika Kasamatsu
リクルート入社後、「週刊ふぉれんと」、「週刊住宅情報首都圏版」および、同誌関西版などの編集・商品企画の担当を経て、「SUUMO」副編集長に。「SUUMOジャーナル」をはじめとする情報コンテンツを担当、編集記事の責任者となる。多拠点居住や若者の価値観、住みたい街・住み続けたい街などについて研究。特に多拠点居住者を「デュアラー」としてトレンドワードで発表し話題に。大阪府住生活審議委員会審議委員。
写真/リクルート、pixta 文/山下紫陽 編集/𠮷村セイラ