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「燕三条空き家活用プロジェクト」が立ち上げた、古物販売「REYOO」。

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「燕三条空き家活用プロジェクト」が立ち上げた、古物販売「REYOO」。

地域資源を未来へ生かす取り組みをしている「一般社団法人燕三条空き家活用プロジェクト」。その一環としてはじまったのが、空き家に眠っている家具や日用品などを次の使い手につなげる古物再生事業「REYOO(りよう)」です。今回は「燕三条空き家活用プロジェクト」の立ち上げメンバーである熊谷さんと「REYOO」を担当する山中良太さんに、事業の現状や課題などについてお話を聞いてきました。

燕三条空き家活用プロジェクト

熊谷 浩太 Kouta Kumagai

1986年東京都生まれ。建築系の大学院を修了後、インフラ関連の企業と不動産デベロッパーでの経験を経て、空き家活用を事業とするベンチャー企業へ転職。三条市役所からの依頼がきっかけで2022年に三条市へ転居。同年10月に他の2名のメンバーとともに「燕三条空き家活用プロジェクト」の立ち上げる。「地元の人以上に三条を知っている」と言われるほど、三条暮らしを満喫している。

燕三条空き家活用プロジェクト

山中 良太 Ryota Yamanaka

1983年三条市生まれ。東京のアパレル商社で働いた後に地元に戻り、商社の役員を経て、2024年に「燕三条空き家活用プロジェクト」のメンバーに加わる。古物再生事業「REYOO」を担当。3人の子育てに大忙し。

空き家問題を手掛けていたからわかる、地方の難しさ。

――熊谷さんは「燕三条空き家活用プロジェクト」の立ち上げメンバーでいらっしゃるそうですね。以前も空き家活用のご経験があったんですか?

熊谷さん:前職は、東京の不動産会社に勤めていました。そこで、空き家活用に関する事業の責任者などを任せてもらっていたんです。

――どういうご縁で三条へいらしたんでしょう?

熊谷さん:三条市役所から、当時勤めていた会社に声がかかりまして。会社に所属したまま、2022年の春に三条市に転居し、「三条市特命空き家仕事人」として活動をはじめました。要するに、民間企業から三条市に専門人材として派遣されたかたちですね。2024年の3月に契約を終えてからは、東京の会社を退職して、三条に残りました。

――「燕三条空き家活用プロジェクト」は、熊谷さんが転居して半年後の2022年10月に発足しました。

熊谷さん:三条市からのリクエストは、3年後を目処に空き家対策全般を任せられる団体を設立することでした。ただ、空き家問題を解決するには時間がかかるので、私を含めた立ち上げメンバーは「早めに取り掛かった方がよさそうだ」と思っていたんです。そんなときに、「ぜひ手掛けたい」と思える物件が出てきて。そこは現在、「複合交流拠点 三-Me.」として活用されています。

――そもそも「燕三条空き家活用プロジェクト」は、どんなことに取り組んでいるんですか?

熊谷さん:私たちの取り組みは、大きく3つあります。ひとつは、空き家の流通促進。眠っている空き家、放置されている空き家を次の使い手にバトンタッチすることで、空き家を減らします。ふたつめは、空き家を活用して人が集まる場所を作ったり、イベントを開催したりして、地域の活性化を図ること。みっつめは、移住促進。三条市とも連携して、空き家ツアーや空き家を活用して作った住宅にお試し移住してもらう事業などをしています。

――東京と地方とでは、空き家解決のための活動に違いはありますか?

熊谷さん:東京の場合は、空き家となっている物件の立地さえ良ければ借り手がつくんです。ただ、地方の場合はそうはいきません。人口の違いもあるので、集客面での課題もあります。東京はそもそも往来が激しいですから、閉まっていたお店のシャッターが開くと、当然のように人がやってきます。地方の場合、「人を呼んでくる」ステップから着手しないといけない難しさがあります。

「REYOO」がつなぐ、想いある古物。

――続いて、山中さんにも質問させてもらいますね。山中さんは、古物再生事業「REYOO」を担当されています。

山中さん:空き家の問題点のひとつが、残置物(入居者が建物や敷地内に残していった物品のこと)の撤去や処分についてなんです。私たちの団体で残置物を引き取り、利用してくれる人に届けようとスタートしたのが「REYOO」です。

――空き家で残された物品を再利用する取り組みというのは、けっこう浸透しているものなんですか?

熊谷さん:そこまで「当たり前」になっているサービスではないでしょうね。きっかけとなったのは、古物の再生事業をしている長野県の店舗です。そこを視察して、古物の再生にはめちゃくちゃ可能性があるし、社会から求められていると思いました。我々は空き家を扱っているのだから、古物再生との親和性はとても高いわけです。だったら、そういったサービスを作ってみようということになったんですね。

――古物の再利用ということですが、傷んでいるものの修繕はされるんですか?

山中さん:市内の作家さんに協力いただき、物品の修繕をすることもあります。作家さんの周知につながりますし、商品をよりよく仕上げて次に使っていただく方に届けることができると思っています。

――「REYOO」の商品は、どこで購入できるんでしょう?

山中さん:オンラインショップやイベントでお買い求めいただけます。あとは不定期ではありますが、倉庫を開放したマーケットを開催することもあります。

――今日は倉庫にお邪魔して、実物を見させてもらいました。すごく懐かしい日用品がたくさんありますね。

山中さん:「REYOO」にあるものは、入居者さんが捨てられずに大切に持っていたものばかりです。きっと、いろいろなストーリーがあるんでしょうね。そういったものを我々が引き取り、次の方につなげます。逆に言うと、ものを捨てられる方にとっては、私たちのサービスは必要ありません。

――不思議なもので、リユースショップに置いてあるものとは少し違う感じがするんですよね。生活の匂いがするっていうか。

山中さん:味がある物は、人気があるんですよ。例えば、使い込まれた薬箱とか。リユースショップでは買い取れないようなものが、「REYOO」らしいものだし、「REYOO」にしかないものなのかもしれないです。

――引き取るかどうかの基準は?

山中さん:「どなたも必要としないだろうな」というものは、引き取りできないので、所有されている方に処分をお願いします。木材や金物製品など、経年変化を楽しめるものを中心に引き取りを行っています。お皿一枚にしても、「何かしらの思いが込められているんだな」というものを選ばせてもらっています。

空き家の未来を見据えて。地域を巻き込む挑戦。

――空き家の持ち主さんとコンタクトが取れるケース、取れないケースとあると思います。どういうパターンの依頼が多いんですか?

熊谷さん:「REYOO」へ依頼される方は、ものを放置されているというより「どうにかしなくちゃ」と思われている方がほとんどです。

山中さん:能動的にアプローチをしてくださる方でないと、「REYOO」のサービスは成り立たないんですよね。放置されていて、どなたのものかわからないというお家へお邪魔することはできませんので、お問合せありきです。

――では、「REYOO」は関係なく、一般的な空き家の場合はどうでしょうか?

熊谷さん:空き家には、いろいろなケースがあります。近隣から苦情が出るような危ない空き家、「特定空き家」といいますが、最悪そうなってしまうケースもあります。その場合でも所有者さんにアプローチするしかないので、市と私たちとで連携して連絡を取ります。ずっと空き家を抱えていて、「どうしていいのかわからない」と悩まれている場合もありますね。知識をお持ちの方は、相続する前に対応を検討されていることが多いです。

――大きな問題です。

熊谷さん:私たちや行政の活動を知ってもらい、空き家問題を啓蒙することが大事だと思っています。困っている人には、さまざまな働きかけをします。

――私の実家の近くにも、所有者がわからず、今にも崩れそうな空き家があるんです。

熊谷さん:そういう空き家は、ものすごくたくさんあります。いちばん大きな問題です。三条市では、所在者不明の土地や物件をどうするかという施策をはじめているところなんですよ。

――プロジェクトを推進する上で、課題に思われていることは?

熊谷さん:私たちのような取り組みをしていても、空き家は右肩上がりで増え続けます。その上昇割合を少しでもなだらかにしていくことがミッションです。なんとか人口減少を食い止めて、若い人が「ここに居続けたい」と思える町にしたいと思っています。そのために、空き家を活用するのもひとつの手です。学生拠点を作って、学生が街中で集える場所を作ってもいいですよね。使える物件と、それを活用できるプレイヤーというか仲間をもっと増やさなければと日々奔走しています。

――山中さんは、「REYOO」の課題をどう考えていますか?

山中さん:いちばんの課題は、周知不足だと思っています。これだけ素晴らしい事業なのに、まだまだ知られていないと思っていて。活動内容と、回収したものがリメイクされて新しい持ち主さんのもとで使われている姿をもっと届けたいですね。

熊谷さん:ある程度まとまった量の古物を必要とされている方、それを使って何かに取り組みたいという方がいれば、ぜひコラボをしたいと思っています。「REYOO」は、物を回収する「入り口」を得意しているので、活用するという「出口」を一緒に考えてくれる人がいたら、すごく心強いです。

燕三条空き家活用プロジェクト

050-1871-0564(代表) 

050-1871-0790(空き家相談)

メール:vh.worker@gmail.com

※「燕三条空き家活用プロジェクト」は、主に新潟県央エリアを対象としています。

※「REYOO」をご利用希望の場合は、燕市・三条市以外も回収可能ですが、まずはお問い合わせください。

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