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【前編】宇多丸『ロスト・フライト』を語る!【映画評書き起こし 2023. 12.7放送】

TBSラジオ

【公式】アフター6ジャンクション2

TBSラジオ『アフター6ジャンクション2』月~木曜日の夜22時から放送中!

12月7日(木)放送後記

TBSラジオ『アフター6ジャンクション』のコーナー「週刊映画時評ムービーウォッチメン」。宇多丸が毎週ランダムに決まった映画を自腹で鑑賞して生放送で評論します。

今週評論した映画は、『ロスト・フライト』(2023年11月23日公開)です。

宇多丸:さあ、ここからは私、宇多丸が、ランダムに決まった最新映画を自腹で鑑賞し評論する、週刊映画時評ムービーウォッチメン。今夜扱うのは、11月23日から劇場公開されているこの作品、『ロスト・フライト』。

『300』『エンド・オブ・ホワイトハウス』などのジェラルド・バトラー主演のサバイバルアクション。飛行中、悪天候に見舞われコントロールを失った航空機が、奇跡的にフィリピンのホロ島に不時着する……これ、本当にある島ですよ。しかしそこは、反政府ゲリラが支配する危険な島だった。機長のトランスは、島を脱出するため、移送中の犯罪者ガスパールと手を組む。トランス機長役のジェラルド・バトラーの他、マーベルドラマ『ルーク・ケイジ』のマイク・コルター、『ジュラシック・ワールド/炎の王国』のダニエラ・ピネダなどが出演です。監督は、『ブラッド・ファーザー』『アサルト13 要塞警察』などのジャン=フランソワ・リシェが務めた、ということです。

ということで、この『ロスト・フライト』をもう観たよ、というリスナーのみなさま、<ウォッチメン>からの監視報告(感想)、メールでいただいております。ありがとうございます。メールの量は、「普通」……なんだけど、まあ公開から時間が経ってるしね。いわゆる、それこそファンダム映画とちょっと違うんで。これ、かなり健闘してる方じゃないかと思います。

賛否の比率は、褒める意見が「およそ8割弱」。主な褒めるご意見は、「これは思わぬ拾い物。アクション映画として申し分ない出来」「展開が早く、最後まで緊張感が途切れなかった」「人間ドラマもしっかりしている」などがございました。一方、否定的な意見は、「もっと面白くなりそうなのに、期待したほどではなかった」「バディ物としての醍醐味が薄くて不満」などございました。でもまあ、なんていうか、全面的につまらなかったとか、大駄作、みたいことを言ってる人はいませんでした。

「『いつものあの感じ』がない、プロフェッショナルなお仕事映画!」(本屋プラグ嶋田さん感想)

代表的なご意見をご紹介します。ラジオネーム「くさむすび」さんです。「『ロスト・フライト』、予想以上の面白さでした。今作は体感時間がとても短く感じるほど107分間全くダレませんが、これは地味に凄いことだと思います。ありがちな映画なら、少し事態が落ち着いた所でトランス機長と凶悪犯ガスパールが心情を吐露し合うみたいなシーンでそこそこの尺を取るでしょう。

ですが今作はそういった類の映画が停滞しがちなシーンをできるだけ削いでおり、それが一瞬も気の緩むことのないスリリングなストーリー展開に繋がってると思います。かといって人間ドラマが希薄になっているわけではなく、トランス機長が初めて人を殺した時の苦悶の表情や、娘に生きて再会するという強い思いが見える大胆な行動などひとつひとつの所作で心情を描き、抜かりなく人間模様を展開しています。

前半は飛行機が墜落するか否かのパニックスリラー。後半は無法地帯から脱出するアクションの二段構えも飽きさせることなくスピーディーに見せますし、これこそ娯楽映画の完成形と言っても過言ではないくらいの傑作でした」というくさむすびさん。

「ロヂャー」さんも絶賛メールを送っていただいて。この方、後ほど触れると思いますけども、「緊急の危機的状況で、孤高の犯罪者が一時的に駆り出されるというプロットは、ジョン・カーペンターの諸作に通じるなと思いましたが、監督が『要塞警察』のリメイク『アサルト13』を手がけた人だと知って、大いに納得がいきました」というメール。

あと、本屋プラグの嶋田さんでございます。お久しぶりでございます。この嶋田さんも大絶賛。今年ベスト映画のうちの一本、なんてことまでおっしゃっていただいて。嶋田さんの表現が面白くて。とにかくこの手のジャンル映画の「いつものあの感じ」……これ、嶋田さんの表現ね。要するに、登場人物同士の関係性をちょっと、そのメインの話のサブプロットとして……だからメインの話は停滞する「あの感じ」っていうところで。

そういう「『いつものあの感じ』的な要素が全くない」。なぜなら「この映画は、徹頭徹尾、プロフェッショナル達がプロフェッショナルとして自分たちに与えられた役割を全うする、お仕事映画だからです!」というようなあたりを書いていただいて。「プロット自体は、ジョン・フォードの『駅馬車』などに代表される古典的な西部劇の展開をなぞっているとも言えると思いますが、それでも(劇中のセリフの)“ひとつひとつ着実に”、同時に、適当な仕事、御座なりな細工の誘惑に流されない、それだけで、こんなにも面白い作品ができる。今年ベスト映画のうちの一本です」とまで言っているという。

一方、ちょっとね、イマイチだったという方もご紹介しましょう。「しょこ」さんです。「大好きなジェラルド・バトラー無双×バディ物ということで期待値大にして行きましたが、結果、期待を超えてくることはありませんでした。大きな原因のひとつとして、圧倒的なバディ感の欠如です」と。で、これはまさにですね、皆さんがさっきから「いい」と言っている、そういう部分がないことを、しょこさんは不満に思ってるということですね。

あと、二人のキャラクターにそんなに大きな違いがないとか、「一般人と殺人犯という身分の違いから描きやすいはずの倫理感を巡る衝突シーンもなく、あげくは別れのシーンまであっさりしていて、何のための2人体制なのかと問い詰めたくなりました」みたいなね。あと、「解決方法もメインの2人の力ではなく、降って湧いたような救出チームの功績がほとんどで、異なる2人が手を組んだからこそ成しえた功績というカタルシスも得られませんでした」という。たしかに、そこの部分は描かれていないかもしれませんね。はい。

「作品としてのレベルが低いというわけではなく、素材に対しての期待値が高かった故であるということを最後に付け加えさせてください」というしょこさんでございました。はい。ということで皆さん、メールありがとうございます。私も『ロスト・フライト』、TOHOシネマズ日本橋、そしてTOHOシネマズ日比谷で2回、観てまいりました。

現代的ジャンル映画として、申し分ない出来!

平日昼にしてはですね、中年以上男性を中心に、そこそこ人がいましたよ。やっぱり(こういうジャンル映画の)需要はあるな、っていう感じがしましたね。でですね、映画としてもごくごくシンプルな作品なので、先にサクッと結論を言ってしまいますが、僕はやっぱりこれ、面白かったです! こういう風に言ってる方も多かったですが、2020年代のジャンル映画として、申し分ない出来。ジャンル映画ですから、当然定型的なところ、ご都合主義的だったり、荒唐無稽だったりするところも実はある。実はあるんですけど、同時に、リアルさを感じさせる丁寧な描写の積み重ねや、ジャンル的お約束からするとまあまあ意外な、しかし本作の中では、あるいは2020年代の娯楽映画としては納得度が高い、フレッシュな要素もいくつかあってですね。この手の作品として、かなり満足度が高い、という言い方ができると思います。

フラッと入った映画館で、たまたま観たのがこのレベルだったら、もうむちゃくちゃ嬉しい!みたいなことですよね。もちろん、歴史に残る大傑作!とかですね、今年必見の話題作!というのとは違いますけれども。日本でね、そういう「普通の面白い大人向けアクションエンターテイメント」みたいなのが、どんどん劇場公開されなくなってきているという中で、なおさら推したいな、という感じにもなるんじゃないでしょうかね。

「航空パニック」+「危険地帯脱出物」

まあ邦題、日本タイトル『ロスト・フライト』、原題は『PLANE』っていう……もう「飛行機」!っていうね、思い切りがいいタイトルでございますけども(笑)。

当然、いわゆる「航空パニック物」の派生型ではあるわけです。今年度のこの映画時評コーナーでもですね、まさに航空パニック物の新たな傑作である『非常宣言』という韓国映画、1月13日に取り上げましたけど。その『非常宣言』評の中でも言ったように、70年代の『エアポート』シリーズから始まるこのジャンル。特に90年代以降……要はみんな普通に海外旅行とかで飛行機にいっぱい乗るようになって、飛行機って車とか以上にあんまり事故とか起こらないし、あとはその「飛行機に乗る」ということそのものがそこまで特別じゃなくなった時代、っていうのを反映してると思うんだけど、90年代以降は、「航空パニックに、プラスアルファ」な足し算的な企画か、もしくは実録物、みたいなところで命脈を保ってきた、というところがあって。ある意味、ジャンルとしてはかなりちょっと、だいぶ先細ってきたジャンルではあるんだけど。

本作『ロスト・フライト』も、まさにその「航空パニック・プラス◯◯」っていう。で、なにが「プラス◯◯」で足されているかっていうと、「危険地帯脱出物」だ、っていうことだと思うんですよね。まあ、昔からもちろんアクションの定番的なジャンルですけども。特にその実際のポリティカルな情勢を反映したもので言いますと、たとえば2022年7月15日に扱ったこちらも韓国映画『モガディシュ 脱出までの14日間』ですね。「危険地帯脱出物」。あとはたとえば、そうだな、アメリカ映画『アルゴ』とかも入れてもいいかもしれません。あれも2012年に映画評してますけれども、『アルゴ』とかも入れていいかもしれない。ああいうの……飛行機に向けて(敵が)追っかけてきたりするの、完全に『アルゴ』にもありましたけどね。あれ、(『アルゴ』は)史実に対してめっちゃ盛っているところですけど(笑)。

で、これはですね、本作の脚本にもクレジットされている、スパイ小説家のチャールズ・カミングさんの、(いかりや長介風に)「もしも、乗っている飛行機がテロリストが支配しているヤバい地域に着いちゃったら?……どうぞ!」っていうね(笑)。このアイディアが元になっている、ってことみたいなんですけども。

監督ジャン=フランソワ・リシェが作ってきた「普通の人」視点ゆえのリアルで骨太なアクション

で、2016年からずっと動いてた企画が、2019年にジェラルド・バトラー製作・主演が決まって。ただ、間にコロナ禍を挟んだりして、権利が本当にいろんな会社、あっちやったりこっちやったりしてるっていう中でようやく実現したという企画。

監督として白羽の矢が立ったのは、フランス人監督ジャン=フランソワ・リシェさんという。90年代からずっと活躍する、まあまあのベテランなんですね。初期のフランス映画のやつはちょっと僕、観れてないんですけど。一躍有名になったのは、先ほどのロヂャーさんのメールにもあった通り、ジョン・カーペンターの1976年の『要塞警察』──『要塞警察』自体が『リオ・ブラボー』のアダプテーション、っていう感じもありますけど──『要塞警察』のリメイクというか、かなり変えて作り直した『アサルト13 要塞警察』という2005年の作品であるとか。あとは、ヴァンサン・カッセルの代表作のひとつとも言ってもいいでしょう、実在のギャングの伝記映画『ジャック・メスリーヌ』二部作。これ、2008年の二部作とか。

近年だと、やっぱりあれですね。『ブラッド・ファーザー』ですね。メル・ギブソンが、自分のパブリックイメージというか、自分の歩んできた、あまり良くないイメージがついちゃったような道、言っちゃえば「粗野で差別的な白人男性」みたいなそのイメージに、ある種自ら落とし前をつけようとしてるようにも見える……僕はそう解釈したんですけども、70年代風味のざらついたアクションで。僕、『ブラッド・ファーザー』はすごい好きなんですけどね。

とにかくそんな感じで、ジャン=フランソワ・リシェさん、おっさんたちが主人公の、今どき珍しいほど硬派なアクションを主に得意としてきた人。で、今回の『ロスト・フライト』もその、リアルな手触りにこだわる手腕っていうのが、すごく生かされてると思うんですよね。

ちなみにさっき言った『要塞警察』、要は警官と、「敵か? 味方か?」的なバランスで登場する犯罪者……ちょっと凄腕の犯罪者が、より凶悪な共通の敵を前に、図らずもバディ化していく、というその『要塞警察』バランス。これ、今回の『ロスト・フライト』も、ジェラルド・バトラー演じる、元空軍パイロットで腕っぷしも強いは強いけど、まあ普通の人でもある主人公ブロディ・トランス機長……だからジェラルド・バトラーの中でも、マイク・バニングシリーズみたいなスーパーマンじゃなくて、どっちかっていうと2019年4月26日に扱った『ハンターキラー』、あれの船長もね、ジェラルド・バトラーにしては珍しく「人望がない」っていう(笑)、普通の人でしたけど、あのバランス。で、その普通の人であるブロディ・トランス機長と、マイク・コルター演じる実は傭兵上がりの凄腕の護送囚、そのルイス・ガスパールとの関係に、かなり近いものがある。『要塞警察』バランス。

まあ、『ブラッド・ファーザー』のメル・ギブソンも、保釈中の一応犯罪者ではあるけれども、基本普通のおっさんだったり、ということで。あくまで普通の、生身の人間の視点をベースにした、「リアルさ」を重視したアクションである、というところに、ジャン=フランソワ・リシェさんの持ち味があるかな、と言ってもいいと思うんですよね。

「ひとつひとつを着実に」積み上げてゆく第一幕、ここ大事!

で、今回の『ロスト・フライト』で言えば、上映時間107分。なのでだいたい100分を……皆さん、イメージしてください。100分を4分割した、25分ずつの単位。最初の25分が一幕目。次の25分が二幕目の前半。で、山場があって、中盤、折り返し点から二幕目後半の25分があって。最後の25分が三幕目、クライマックス。本当に教科書通りに進行する、ジャンル映画のお手本のような作りになっているわけですけども。

とにかくその最初の25分、第一幕目ね。特にその前半の、とにかく「普通に業務として飛行機に乗り込み、普通に離陸させる」までの、たとえばパイロットたちが踏む手順であるとか、CAさんたちと交わす確認の言葉であるとかが、それこそ劇中、最終的にはものすごく感動的に響く(セリフの)「ひとつひとつを着実に」そのままにですね、丁寧に積み上げられる。

一個一個の描写とか、「これを◯◯して……」とか、専門用語は知らないけど、まあ観ていて、普段、我々が乗っている飛行機を操縦しているパイロットというのも、たしかにきっとこのように、「ひとつひとつ着実に」手順を積み上げて、安全な運行というのをしているんだろうな、という風に思わせるような、それが自然に「信じられる」ような描写を積み重ねていて。そういう、地味だからこそリアルな感触っていうのを、しっかりここで組み上げているわけですよね。

本当に、ちょっとここはスローペースっていうぐらい、じっくり手順を、全部やりますよね。で、それが大事で。それがあればこそ……実はこの映画はその先に、やっぱり冷静に考えればありえなさそうな、フィクショナルな飛躍とかですね、なんかよく考えるとおかしい、っていうことは、実はいくつもあるんだけど。そういうのがバカらしくなく、本当にスリリングに見えるように、その準備がちゃんとできている、ということなんですね。

マクドネル・ダグラスMD-80という機体である意味

で、そういう序盤のフリ、いろんな面でよくできておりましてですね。たとえば、そもそもこのジェット機の、種類ですね。お客に「こんな古い型で大丈夫?」っていう風に言われて、「いや、このタイプは丈夫で故障しづらいんですよ」って機長が言いますね。で、もちろんですね、劇中でなんか起こらないと話が転がらないんで、落雷がドーン!ってあって……でも、落雷があったからといって全電源が落っこちちゃうとか、たぶん現実にはなかなかありえない故障じゃないかな、と思うんだけど。ただ、劇中の航空会社、LCCで……コストカットのために、ちょっとやや無理をさせる傾向がある会社なんで、ひょっとしたら整備が行き届いてない古い機体であったとか、それもあるかも?っていう行間が、ちゃんと読めるようにもなっているし。

なんといってもですね、パンフレットに載っている、航空ジャーナリストの坪田敦史さんという方の、飛行機に関する解説。これがすごい勉強になって。これ、マクドネル・ダグラスMD-80シリーズ、という機体らしいんですけども。エンジンが、我々がよく乗るジャンボジェットみたいに、主翼の下じゃなくて、機体後部の横にエンジンがついてるタイプ。なので、本作のように、結構ショック強めの不時着をした際に、比較的エンジンが壊れにくい、という構造になっている。で、本作を見た方ならおわかりの通り、その「エンジンが壊れていない」ってことが、そもそも後半に生きてくるし。

さらに、不時着する時に、爆発炎上しないようにガソリンを捨てようとするわけですよ。燃料を放出しようとするわけですけど、「右側、燃料が出ません!」っていうのが、これがその着陸のところでは、爆発への恐怖のサスペンスを盛り上げる役目を果たしている……にもかかわらず! 後半、別の意味で生きてくる!っていう。よく考えられている!っていうことなんですよね。

しかも、さっき言ったパンフの解説によれば、この機体は、機体後部に、階段が内蔵された乗り降り用のハッチがついている型なわけです。この、「階段が内蔵された乗り降り用のハッチ」がないと、特に後半の、クライマックスの展開が、スムースに運ばないですよね? で、ラストショットもちゃんとこの、後部ハッチを生かしたあれ(ショット)になっていたりして。『PLANE(飛行機)』っていうね、このシンプルなタイトルも納得なほど、このMD-80という機体、しっかり意味を持って選ばれている、っていうところに感心をしてしまいますし。

暗に呼応し合っている、機長の出自と護送囚の身の上

あるいは、実写版『ムーラン』にも出てましたけども、ヨーソン・アンさんが、香港出身のパイロットというのを大変好演している……副操縦士のサミュエル・デレっていう役ですけども。このデレさんとの最初の会話の中で出てくる……このジェラルド・バトラー演じる機長が、「俺はスコットランド人だ」っていう話をしていて。実際ジェラルド・バトラーはスコットランド出身なんだけど。そこで彼が語る、イングランド人と比べて──やんわりとですけどね──社会における待遇が悪いこと、「イングランド人がいい仕事を取っちゃうんだ」っていう、その社会の差別的構造の視点っていうのを、ここで実はやんわりと言ってますよね?

で、これがその後に……当初は油断ならない、怖い犯罪者として扱われていた護送囚ルイス・ガスパール、彼が身の上を語る。「俺は間違った場所に、間違った時にいてしまっただけで、そんな黒人のガキのことなんか誰もかばってくれなかったんだ」っていう。これも、明言はされないけど、やっぱりおそらく社会の構造……黒人に対する差別というのが構造的にある社会の中で、おそらくはそれが原因で、本当はそこまで悪くないのに長く(刑務所に)ぶち込まれることになっちゃったという、そういう不運(の話でもある)。

なので、セリフでは明言されてないけど、明らかに機長はその話を聞いて、「ああ、わかるよ。お前はその、根っからの犯罪者っていうよりは、その社会の構造で……わかる、俺もわかるよ」っていう(風に感じたはず)。それが、明言はされないけど……要するに「バディ感があまり描かれていない」っていうけど、あんまりセリフにはされていないけど、そこ(社会的な不遇という点で)は通じ合っているっていうことが、ちゃんと暗に、暗示されているわけです。そこで。これも非常に上手いあたり。

だから機長は、彼とバディ化もするし、共感もしたからこそ、ラストの「あの選択」、ということですよね。あれは要するに、「お前、頑張ったからいいよ」っていうだけじゃなくて、「お前は悪くない」って思っているから……だから説得力が出る、ということなんです。僕はこういうのこそ、しっかりした「キャラクター描写」というものだと思いますね。

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