ピッティ・イマージネ・ウオモ2027年春夏コレクションから これでショートパンツは怖くない!
“合格スタイル”の条件
近年の酷暑を反映して、日本ではビジネスシーンにおける服装のカジュアル化が加速している。にもかかわらず男性のショートパンツ姿は、インターネット上で批判がみられる。一部では露骨に「ハラスメント」との声まで上がっているようだ。これは由々しき事態である。そう考えた筆者は、イタリア・フィレンツェにおける国際メンズモード見本市「ピッティ・イマージネ・ウオモ」で、ショートパンツ着こなしのヒントを探すことにした。
同イベントは年2回の開催。2026年6月16日から19日まで開催された第110回では、2027年春夏コレクションが世界のバイヤーやジャーナリストに公開された。
最初に訪れたのは「ブラマンテ1986」である。ニットウエアから領域を拡大してきた同ブランドは今回、爽やかなトップスと共にショートパンツを提案した。創業家出身で現当主のドナート・ブラマンテ氏は、スタイリッシュに見せる基本として「スポーティーなスタイルのものにはスニーカーを、トラッドなスタイルのものにはクラシックな靴を組み合わせるのがコツです」と説明する。
ジェノヴァを本拠とする「テラ・ジェノヴァ」もブースの目立つポジションにショートパンツを展示していた。「限りなくロングパンツと同じ仕立て」が自慢である。同ブランドでクリエイティヴ・ディレクターを務めるマリアグラツィア・スピノージ氏もブラマンテ1986と同様「テイラー仕立てには、クラシケ(クラシック)な靴がおすすめです」と語る。参考までに彼らはジーンズのスペシャリストである。だが、今回のショートパンツには麻を選択するとともに、レディスのパンツにたびたびみられるようにマーベルト(腰裏部分)を敢えて見せる遊びを採り入れた。
メイドイン・ジャパンを集めた「J∞QUALITY FACTORY」のコーナーでは、著名ブランドのOEMを手掛けるとともに自社ブランドも展開する「サンライン」がショートパンツのコーディネイトを提案していた。代表取締役の佐藤克豊氏は、同じ生地のジャケットと組み合わせることでスーツ感を演出したと説明する。タックは、クラシックとモダンの中間的雰囲気を醸し出すワンタックだ。丈は「膝がやや見える程度」が最適という。
自動車販売店で慣れろ?
以上をまとめると、洗練したショートパンツ・スタイルを実現するには、
・靴とのコーディネイト
・仕立ての良さや工夫が際立つアイテムの選択
・ジャケットとの併用
が決め手となりそうだ。このあたりを実践してゆけば、周囲からの違和感はかなり抑制できそうである。
もうひとつヒントを与えてくれたのは、上質なカシミアを得意とする「ブルネロ クチネリ」である。スタッフによれば−この提案はショートパンツに限った話ではないが−カジュアルなスタイルの際はあえてタイを締めるのも、過度にラフな雰囲気を抑える手段だという。参考までに、彼らのショートパンツは、カーゴ、ミリタリー、そしてサファリのテイストをサルトリアルの要素と融合したものと説明する。それでいて品の良さを醸し出しているのは、イタリアを代表するこの高級ブランドの真骨頂といえる。
たしかにジャケットとタイを着用していれば、ボトムスがショートパンツでも、かなり“さま”になるのは事実である。夕方になると急に冷え込む街や地域でのパーティーや野外コンサートにも対応できる。
あとは、イタリア人インフルエンサーのように堂々と着こなすことであろう。そのためには、近所の散歩、スーパーの買い物、そしてクルマのショールーム訪問…と、少しずつ慣らしてゆくのがお勧めである。
下の写真は、今回得たアドバイスをもとに、筆者が我が家のタンスから有り合わせのものを引っ張り出して実現した捨て身のコーディネイトである。唯一の注意点は、ショートパンツの快適さを知ってしまうと、ロングパンツに戻りたくなくなってしまうことである。
大矢アキオ ロレンツォ
Akio Lorenzo OYA
ジャーナリスト/コラムニスト/自動車史家。シエナ在住。音大でヴァイオリンを専攻、日本の大学院で芸術学、イタリアの大学院で文化史を修める。NHKイタリア語およびフランス語テキストで今日まで長年にわたり巻頭連載を担当。NHK『ラジオ深夜便』にはレポーターとして20年以上にわたり出演。『メトロとトランでパリめぐり』(コスミック出版)、『シトロエン2CV、DSを手掛けた自動車デザイナー ベルトーニのデザイン活動の軌跡』(三樹書房)、『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)など著書・訳書多数。イタリア自動車歴史協会会員。