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札幌にこんな場所があったんだ!800種類以上の生きものが暮らす「森」…大人も知らない"おもしろさ”続々 滝野すずらん丘陵公園

Sitakke

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札幌の滝野すずらん丘陵公園。大型遊具や花畑があり、市民や観光客でにぎわいますが、多くの野生動物にとっても魅力的な場所です。

このおしりの主は…なんの動物かわかりますか?(画像提供:滝野すずらん丘陵公園)

確認されているだけで、800種類以上の昆虫に、20種類以上の野生動物がいます。
野生動物たちのなかなか見られない姿をとらえた写真や、その写真をゲットすることになった意外なきっかけは、前回の記事でお伝えしました。
⇒【札幌市内に『野生の王国』があった!クマ対策がもたらした思わぬ「宝物」とは】

この記事では、公園内の隠れた人気スポット「滝野の森ゾーン」に詰まった、自然のおもしろさをギュギュっとお伝えします。

「逃げるカタツムリ」と「戦うカタツムリ」がいる?!
美しい青が特徴のトンボ、つかまえるコツは?!

森を歩くと、昆虫や植物が好きな方はもちろん、自然にあまり興味がない方も、「へ~」と驚いてしまう魅力に次々出会いました。

連載「クマさん、ここまでよ」

【この記事の内容】
・視点を5メートル高くすると、見えてくる世界
・青いトンボ つかまえるコツがあった!
・「逃げるカタツムリ」と「戦うカタツムリ」
・ただ歩いているだけで、おもしろい

視点を5メートル高くすると、見えてくる世界

案内してくれたのは、滝野管理センターの今井健太さん。
散策路にある「森の観察デッキ」は、高さ5メートルで、鳥の目線や虫の目線で森の中を歩ける橋です。

木々の間を歩ける空中回廊

5メートル視点を上げると、何が変わるのか?

たとえば、地面から見上げたこちらの木。

まあ…「木」ですよね…。「みどりがキレイだなあ」とは思いますが、実は、この木に花が咲いているなんて、気づきません。

それが、観察デッキの上から見てみると…

目の前に花が!ゆっくり観察できるんです。
こちらは「ツルアジサイ」。

四葉のクローバーのような、周囲の白い部分が花かと思いましたが、今井さんによると、中心のツブのように見える小さなものが花で、周りの白いのが「偽物の花」だそう。

「小さい花は目立たないので、偽物の花でにぎやかにして、昆虫に『花がある』と思わせて寄せ、花粉を運んでもらうんです。虫を寄せるための装飾花なんですよ」と教えてくれました。

たしかに、画像中央のあたりにしっかり虫が寄ってきてくれているのが確認できます…賢い戦略!

花だけでなく、葉にも植物の生きる術があります。観察デッキから地面を見下ろすと、一面が葉の緑におおわれて、土が見えません。

今井さんは、「観察デッキからだと葉っぱを真上から見ることになって、葉っぱ同士が重ならないようについているのがわかる。光合成をするために、葉っぱ同士が重なると下の葉っぱに日が当たらない」と話します。

この観察デッキでは、目の前を鳥が飛んで行ったり、木にとまった昆虫が見られたりもするといいます。
手すりは、木から落ちてきた毛虫や幼虫などを見つけやすいスポットです。意識しないと通り過ぎてしまいますが、注目して見ると、次々ちがう種類が見つかります。

青いトンボ 観察するとわかる「つかまえるコツ」

散策路には田んぼもあります。

以前、この奥に住居があり、使われていた田んぼを復元したそうです。今も実際に米を作っていて、田植えや稲刈り、脱穀して玄米にするまでをイベントとしてお客さんと一緒に行っているといいます。

農薬を使っておらず、田んぼにも多くの生き物がやってきます。
ドジョウもいれば、小さなカエルも。ホタルもいるそうです。

田んぼの上を飛んでいたのは、美しい青が特徴の「オオルリボシヤンマ」。
広い範囲を飛んでいて、私はすぐに見失ってしまうのですが、今井さんは「今はあそこにいます」とすぐに見つけます。

あるコツがあったんです。
「オオルリボシヤンマは縄張り意識の強いトンボで、同じところをぐるぐる旋回するんです。網を持って追いかけても逃げられるので、どのあたりまで回ってくるかをちゃんと見て、ルート上で待つ。網が届くところまで来たら、そこで初めて網を振るとつかまえられることがある」といいます。

画像提供:滝野すずらん丘陵公園

実際に今井さんがつかまえたオオルリボシヤンマがこちら。きれいな青!!

滝野すずらん丘陵公園では、都市公園法により、植物や生きものの持ち帰りは禁止されています。ただ網を持って入り、虫とりを楽しむことはできます。優しく観察したら、その場に返しましょう。


歩いているだけで、おもしろい

観察デッキや田んぼ、かつて人が暮らしていた歴史の跡など、見どころもたくさんの散策路。
でも、ただ歩いているだけの道中も、気持ちがいいんです。

暑い日も、日の光に照らされながらも緑の傘に守られて、涼しく感じられました。
セミや鳥の鳴き声、川のせせらぎを聞きながら歩く、ぜいたくな時間です。

特に知識がなくても、ただ自然の雰囲気を楽しめます。でもじっくり見てみると、次々に新たな発見があります。

今井さんが突然指さした木。上にカタツムリがいると言われて、しばらく探してやっと見つけました。

「サッポロマイマイといって、天敵が地面にいる虫なので、上まで登って逃げているんです。もう1種エゾマイマイという大きいカタツムリもいて、殻をふりまわして敵を追い払うすごいやつなんです。戦うカタツムリと逃げるカタツムリがいるんですよ」

画像提供:滝野すずらん丘陵公園
画像提供:滝野すずらん丘陵公園

中央にいるのが「エゾマイマイ」。殻の向きが2枚の写真で変わっているのがわかるでしょうか?
戦う様子は、ぜひ動画でもご覧ください…。

戦う「エゾマイマイ」だけではなく、逃げる「サッポロマイマイ」もすごいと教えてくれました。小さな体で、20メートルくらいの高さまで登っているのを発見したことがあるそう。
それぞれの生存戦略、どちらもすごいですよね。

突然立ち止まったと思ったら、「発見しました、鳴いているセミ」と草やぶの中をかき分けた今井さん。

すっかり葉の陰に隠れていたのに…。とにかく見つけるのが早いです。
「毎日森にいるからですかねえ」と笑う今井さん。「毎日のように知らないことに出会ったり、知っているつもりでもよく知らなかったりすることがあるんです。全然飽きないですね。季節によって変化もありますし…」と話しながらも、今度は私の肩に止まったセミを発見。

コエゾゼミ。鳴いているのはオスだけで、音を鳴らす「共鳴板」がおなかについているのがオスの特徴なんだそう。

30分ほど一緒に歩いただけで、ほかにもたくさんの「知らなかったおもしろさ」を教えてくれました。

今井さんは、「何もなくても楽しいと思ってほしい。何か見つけなきゃダメとか、クワガタがいないと楽しめないとか、そういう特定の目的を達成しないと楽しめない感覚じゃなくて、ただ歩いていておもしろいと思ってほしいですね」と話します。

今井さん自身も滝野すずらん丘陵公園で働く前は、特別な知識はなく、森を歩くうちに日々新たな発見に出会い、知識を深めたといいます。
「『知らないことってたくさんあったんだ』と思ってほしいですね。大人で知っているつもりになっても、ぼくもそうだったけど、『こんなに知らないことがあるのか』ってことを知ってもらって、楽しんでほしいです」

「滝野の森ゾーン」では、9月末までヒグマの謎解きイベントも開催中。イベントの詳細と、アクセスについては、以前の記事でご紹介しています。
⇒【謎解きイベント開催!「迷える親子グマと森の秘宝」】

滝野すずらん丘陵公園では、現在クマ対策を強化していて、この4年間はクマの侵入がありません。
どんな対策をしているのかや、対策に向き合ううちにもたらされた思わぬ「宝物」については、前回の記事でお伝えしています。
⇒【札幌市内に『野生の王国』があった!クマ対策がもたらした思わぬ「宝物」とは】

連載「クマさん、ここまでよ」
暮らしを守る知恵のほか、かわいいクマグッズなど番外編も。連携するまとめサイト「クマここ」では、「クマに出会ったら?」「出会わないためには?」など、専門家監修の基本の知恵や、道内のクマのニュースなどをお伝えしています。

文:Sitakke編集部IKU

※掲載の内容は取材時(2024年7月)の情報に基づきます。

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