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『市川海老蔵 古典への誘(いざな)い』取材会レポート! 海老蔵が5年ぶりの弁天小僧で全国巡業をスタート

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『市川海老蔵 古典への誘い』

市川海老蔵が企画する巡業公演『市川海老蔵 古典への誘(いざな)い』が、2021年3月5日(金)の石川県・こまつ芸術劇場うららを皮きりに、全国の会場で上演されている。海老蔵は『弁天娘女男白浪(べんてんむすめめおのしらなみ、以下『弁天小僧』)』で、5年ぶりに弁天小僧菊之助役を勤める。

開幕に先駆けて開催された記者懇親会で、海老蔵は「全国各地をうかがいます。普段行かないような土地にも歌舞伎を広められたら」と挨拶をした。そして作品や役への思い、そしてコロナ禍の胸中を語った。

■5年ぶり4度目の、弁天小僧菊之助

海老蔵にとって『弁天小僧』は、「市川家の家の芸以外の中で、思い入れのある演目」だという。

「若い頃に音羽屋のおじさま(七代目尾上菊五郎)に “ぜひやりたいので教えていただけますか” とお願いし、直に教えていただきました」

海老蔵は、5年ぶり4度目の弁天小僧菊之助役を勤める。『浜松屋見世先の場』では、弁天小僧が娘に変装して浜松屋にやってくる。“知らざあ言って聞かせやしょう”の台詞も登場する場としても有名だ。

「音羽屋のおじさまの形では、前半の弁天小僧を、あくまでも女性として演じます。中村屋さんのやり方では、正体がバレ出すところで少し洒落っ気を出し、ちょっと男を出すことがあります。私は音羽屋のおじさまに教わった形でやりたいです」

弁天小僧を演じる際に意識するのは“流れ”だ。

「若い頃は『浜松屋』の “知らざあ言って聞かせやしょう” の部分がメインだと意識していました。実際にメインではありますが、今は“自分の中ではそこがメインではない” と思えるくらい余裕を持って勤めることが、大事ではないかと考えています」

『稲瀬川勢揃いの場』では、白浪五人男がずらりと並ぶ。海老蔵は、時代による違いについて言及した。

「悪党たちが名乗りをあげる時、我々世代は、パフォーマンス性を高くしてやります。ですが、たとえば十五代目市村羽左衛門、七代目松本幸四郎、初代中村吉右衛門といった先輩方のお芝居を拝見すると、(パフォーマンスや誇張は)何もしていない。淡々と名乗りをあげ、そこに悪党の余裕が見えます。現代はパフォーマンス性が高くなければ面白く観ていただきづらいという現実はありますので、そこは活かしつつ皆と考えていきたいです」

市川海老蔵

白浪五人男の関係性に、現代の感覚に通じるものを見出しているようだ。

「弁天小僧は主役のようでいて主役ではありません。白浪五人男には、まず日本駄右衛門がいる。南郷力丸、忠信利平、赤星十三郎がいて、弁天小僧は切れっぱしのオマケです。『浜松屋』だけを見ると弁天小僧と南郷、そして日本駄右衛門の世界ですが、『稲瀬川』では、真ん中に日本駄右衛門がいて皆が並び名乗りを上げます。『稲瀬川』も続けて上演することで格差のない関係を築いた世界が表現できます。格差のなさという点は、今どきと言えるのではないでしょうか」

■子ども心に響く、変化物の面白さ

海老蔵が、音羽屋に縁の深い演目に惹かれるようになったのは、團菊祭がきっかけだった。團菊祭とは、九代目市川團十郎と五代目尾上菊五郎の功績をたたえ、歌舞伎座の『五月大歌舞伎』で恒例となっている興行だ。

「幼少期から毎年、團菊祭で、父の十二世市川團十郎が『勧進帳』など時代物を、音羽屋のおじさまが『弁天小僧』などの世話物を勤めるのを見て過ごしました。おじさまが弁天小僧をなさる時、父は必ず南郷か日本駄右衛門を勤めていました」

弁天小僧には、子どもにも分かりやすい魅力があると海老蔵は言う。

「幼いころに、歌舞伎に惹かれる理由は各々あるでしょう。ですが皆、変化物(へんげもの)に一度は惹かれたと思います。たとえば『春興鏡獅子』で弥生が獅子の精に変化すると、子どもはエッ!? となる。中でも弁天小僧は、その場で女が男に変わります。純粋な子どもの反応として、私もそこに惹かれたのだと思います。かっこいいものですよ、弁天小僧の動じない、ある意味でふてぶてしい若い男の強さ。美しいなと思います」

市川海老蔵

さらに海老蔵は「それにしても、シチュエーションが面白いですね」とも語っていた。

「5人はこれから逮捕されるという時に、俺はこうやって生きてきた、と堂々とやりはじめるわけです。肝っ玉の太い男たちです。自分流の生き方を貫ける時代だったのでしょう。今はそれをしづらい時代です。歌舞伎の人のもつエネルギー、そのエッセンスの格好良さを、表現できるよう勤めさせていただきます」

■コロナ禍に得たものとは

2月20日には『EBIZO THEATER「Earth & Human」by 1→10』で、三番叟を題材に最新のデジタル技術で制作された映像作品をリリースした海老蔵。古典だけでなく新しいことにも積極的なイメージをもつ方も多いのではないだろうか。昨年9月以降、古典の演目が並ぶことに、どのような思いを抱いているのだろうか。

「私の土台は古典です。とは言いましても古典だけでは、世の中、そうは問屋が卸さない……といった事情があります。新しいことに挑戦した時の方が話題にもなります。ただ、コロナ禍の今、新作をやろうとすると、数日、数週間の稽古が必要になり、感染リスクも高まります。古典ならば、皆スキルがありますから2、3回あわせるだけで本番を迎えられる。結果、今は古典を上演できるチャンスが増えている。これはとても良いことだと思っています」

少ない稽古で上演できるとはいえ、コロナ禍以降最初の巡業公演(9月~10月)は「(興行に関わる)皆の生活がかかる、座頭としての責任がある公演」であり「相当な緊張感の中で行った」だったと振り返る。そのような緊張感の中で成功させた前回の興行から、得たものとは何だろうか。

「絆、仲間意識、助け合う気持ちでやりました。そこから得たものは、信頼でしょうか。あの過酷な状況で、リスクがあると知りながら仲間たちのためにやり、1公演も潰すことなく、感染者を出すことなく、スケジュール通りに乗り切りました。それに対する外からの信頼ではないかと思います」

しかし海老蔵は、今回の巡業公演を楽観しているわけでは決してない。「歌舞伎に限らず皆さんと一緒で、はじめての緊急事態宣言の時の今とでは、明らかに緊張感が異なります。昨年と同じ緊張感を持ち続けなくてはいけません。少し緩みが出ている可能性があり、そこは今回の公演における不安材料」とも語っていた。

市川海老蔵

取材会では、父の團十郎が設計に関わったこまつ芸術劇場うららのある石川県、主演映画『出口のない海』で訪れた山口県、幼い頃に團十郎の旅巡業の合間に寄ったシーガイアのある宮崎県など、各地への思いも語られた。『古典への誘い』の後には『市川海老蔵八千代座特別公演』と銘打ち、熊本県山鹿市の八千代座(江戸の芝居小屋のような造りの会場)でも『弁天小僧』を上演する。

「八千代座のような古風な劇場空間で『弁天小僧』をしてみたいという思いもあり、今回は演目を選びました。若い頃、金丸座(香川県琴平町)で『暫』をやってみたいと考え、それが実現した時に、昔の歌舞伎俳優はこのような空気の中でやっていたんだと感じ、数河のざわめきのなか芝居が上演され、これはお客様にとっても幸せな空間にちがいないと実感したからです。そのような空間で娘と息子に、父親が勤める『弁天小僧』をみせてやりたい。そういった体験をしてもらいたいとも思っています」

八千代座の公演には、長女で舞踊家の市川ぼたんと堀越勸玄も出演する。

最後に見どころを問われると、「普段は『歌舞伎十八番』や『新歌舞伎十八番』をやる家で、私は立役が多いです。舞踊劇の女方ではなく、声を出す女方はそこそこレアだと思います。ただですね……最近背が伸びてしまい、どんな女方が出てくるか楽しみにしていただければと思います」とコメントした。

宮崎県の媒体に向けて「シーガイヤ、復活しないの?」と逆に質問する一幕も。

取材・文・撮影=塚田 史香

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