デスゲームの中にある優しさと人間ドラマ――『死亡遊戯で飯を食う。 44:CLOUDY BEACH』三浦千幸さん×宮本侑芽さんインタビュー
『このライトノベルがすごい!2024』新作部門1位の人気作を原作とするアニメ『死亡遊戯で飯を食う。』(以降、『死亡遊戯』)。主人公は、殺人ゲームへの参加を繰り返して、クリア賞金で生活している少女・幽鬼。2026年1月~3月に放送されたテレビシリーズの全11話では、幽鬼にとって28回目のゲームとなった「ゴーストハウス」や、9回目のゲーム「キャンドルウッズ」など4つのデスゲームが順不同で描かれていった。そして、7月10日(金)からは、幽鬼、44回目のデスゲーム「クラウディビーチ」を題材とした『死亡遊戯で飯を食う。 44:CLOUDY BEACH』(以降、『CLOUDY BEACH』)が、2週間限定で劇場公開される。
ゲームにちなんだ衣装を身に纏った美少女たちが、さまざまなルールのゲームで命を奪い合う衝撃的な物語や、美しい映像表現などで注目されたテレビシリーズの続編として、ファンの期待が高まっている『CLOUDY BEACH』。アニメイトタイムズでは、テレビシリーズに続き主人公の幽鬼を演じる三浦千幸さんと、幽鬼と同じく「キャンドルウッズ」の生き残りで「クラウディビーチ」にも参加する藍里役の宮本侑芽さんに、テレビシリーズの思い出や本作の見どころなどを語り合ってもらった。
【写真】『死亡遊戯』三浦千幸×宮本侑芽が続編『44:CLOUDY BEACH』の見どころを語る【インタビュー】
すごく優しいお話だったと思うようになった
──『死亡遊戯で飯を食う。』新エピソードのCLOUDY BEACHが制作されると知った時の心境を教えて下さい。
三浦千幸さん(以下、三浦):まずは、やっぱり驚きました。
宮本侑芽さん(以下、宮本):私も同じです。(作品の)資料にも書かれていなかったですよね。
三浦:うん、全然。でも、(テレビシリーズの)アフレコを録っていく中で「この先もやるんだよ」みたいな感じで聞いて、「え! どういうこと?」ってなりました(笑)。
──「劇場上映になります!」と大々的に聞いたわけではないのですか?
宮本:噂で……みたいな(笑)。
三浦:私もそういう感じでした(笑)。
アニメスタッフ:少し補足させていただくと、元々、全15話分を制作することは決まっていたんです。ただ、昨今は劇場上映だけではなく配信限定などいろいろな放送形態があるので、どのような形で展開するかは決まっていなかったんです。
宮本:OVAかもという噂を聞いたこともあって。
三浦:そうそう。
アニメスタッフ:そういった可能性も含めて検討していて、最終的に劇場上映という形になりました。
──テレビシリーズは、全11話ですが、第1話は2話分の長さがあるので、残りの3話分にあたるのが『CLOUDY BEACH』ということですね。まずは、テレビシリーズから振り返って頂きたいと思うのですが、初めて『死亡遊戯で飯を食う。』という作品に触れた時の印象と、その後、最終回までを演じ終えての印象の変化について教えてください。
三浦:最初は、もっと殺伐としたお話が描かれていくと思っていたんです。でも、最終回を終えてからは、すごく優しいお話だったと思うようになって。(キャラクターの感情の)本当に優しいところを拾って、そこを大きく描いて下さった感じがします。
──デスゲームものですが、優しいお話?
三浦:ここで、こういう行動を起こすのは、優しさがあるからなのか。もしくは、何も考えていなくて、ただ強いからやったのか。そういう風に読み手や見る側次第で(解釈も)変わる描き方になっていて。観方が違うと「なるほど、ここに愛が隠されていたのか」「ここにも愛があるんだ」という風に感じ方も変わってくる作品だと思うんです。『死亡遊戯』ってデスゲームものだけれど、その中に優しさがあるお話なんだなと印象が変わりました。
──たしかに、殺意や恐怖などのデスゲームらしい感情だけではなく、幅広い感情を丁寧に描いている印象があります。
三浦:デスゲームもので、誰が戦う相手になるのかも分からないのに、(他の参加者と)関わらずにはいられないし、関わるとどうしたって情が湧いてしまう。ゲームをクリアするためには、そこは割り切っていくべきなのですが、人間なので割り切れないこともある。そういった揺れ動く感情の中に、優しさも隠されている作品だと思うようになりました。
宮本:私も似たようなお話になってしまうんですけど。デスゲームもので、エキセントリックなキャラクターも出てきたりするので、最初にリハV(アフレコ練習用の映像)を観るまでは、もっと派手な音楽が付くような作品だと思っていたんです。それで、勝ったら「やったー!」って盛り上がったりするみたいな(笑)。でも、Vを観た時にびっくりしました。キャラクターの感情にすごく寄り添った描き方がされているから、ある人の視点の(動きがない)映像が長い時間、流れたりして。すごく間が長かったりするんですよね。
──デスゲームものですが、静謐な印象もある作品です。
宮本:最後まで観た時、デスゲームものの面白さがありつつも、人間物語だったなと強く感じて。「人間ってすごく美しいんだな」と思ったことは、とても不思議な感覚でした。それが、またもう1話みたいって思わせる『死亡遊戯』の中毒性に繋がっているのかなと思います。
藍里が生き残っていることにびっくり
──では、ご自身が演じるキャラクターについても、印象の変化があれば教えてください。
三浦:幽鬼に対する印象は、結果的には、そんなに大きくは変わっていないですね。オーディションの時に頂いたキャラクター資料には、ほとんどビジュアルのことしか書かれていなくて(笑)。
──キャラクターの内面やバックボーンに関する情報は少なかった?
三浦:はい。幽鬼は見た目もすごく綺麗で、(原作の)表紙の絵などもカッコ良いから、最初、クールで淡々としているカッコ良い子なのかなと思ったんです。でも、全然情報が無い中で手がかりを探したら、周りから見た幽鬼の印象が「幽霊っぽい」と書かれていたので、普段は幽霊っぽく見えて、何を考えているのか分からない感じが最初に出てくるのかなと思って。オーディションでは、本当に幽霊っぽくてぼんやりとした、あまり輪郭がはっきりしてない感じを第一に意識して演じました。
──幽鬼役に決まってアフレコが始まってからは、どのようなディレクションがありましたか?
三浦:一つ一つのシーンに関して、「さすがにここは、幽鬼もこういう感情になるよ」とか「ここのモノローグは、幽鬼の内面を知れるところにしよう」といったディレクションを頂くことはあっても、(幽鬼の芝居の)ベースを変えてとは言われなくて。だから、オーディションの時から本編の最終回を録り終えるまで、幽霊っぽくて(プレイヤーの)御城に「垢抜けていない」とか言われてしまうような子という印象も大きくは変わりませんでした(笑)。
──「輪郭がはっきりしない」ことを手がかりにキャラクターを演じるのは、すごく難しそうに思えるのですが、最初は苦戦したのでしょうか?
三浦:あまり苦戦とかはしなかったと思います。スタジオオーディションでも「そのままの方向で、こんなパターンも見せてもらえますか?」ってバリエーションを求められたぐらいだったと思います。
アニメスタッフ:オーディションの時点では、上野(壮大)監督や我々も幽鬼に関して、「どうする?」みたいに悩んでいたところもあって。いろいろと聞きたいというのが本音だったんです。
──三浦さんのお芝居を見て、さらにそこから、いろいろな可能性を探っていったわけですね。
アニメスタッフ:そうなんです。本編では、監督が三浦さんのお芝居に合わせて、幽鬼のセリフをアレンジしたところもあります。
三浦:え~そうだったんですね!
宮本:すごい! でも、私も三浦さんの演じる幽鬼を初めて見たときに、「めちゃくちゃ、幽鬼だ!」って思ったんです。一見、何を考えているのか分からないんですけど(笑)。
三浦:あはは(笑)。
宮本:でも、優しさもあるような感じが「めっちゃ、幽鬼!」って思ったのをすごく覚えています。
三浦:嬉しい。
宮本:もちろん、私が『死亡遊戯』のアフレコに初めて参加した時(第8話)には、もうキャラクターができあがっていたタイミングだったと思うんですけど。
三浦:でも、この作品は、ゲームごとに時系列がバラバラなので、ゲームが変わった最初の回は、いつも「今の幽鬼はどれくらいの経験値を積んで、どんな人間になっているんだろう?」って探りながら収録していました。本当に何を考えているか分からない子だけれど、その時々の感情のニュアンスは伝えたくて。「息遣いで伝えられないかな?」とか、いろいろと悩みながらやっていたので、悩んでいる感じが、なおさら幽鬼らしかったのかも(笑)。
宮本:そうだったんですね(笑)。
──宮本さんが演じる藍里と幽鬼が一緒に参加した「キャンドルウッズ」のエピソードは、第8話~第11話で描かれました。宮本さんは、どのようなイメージで藍里を演じていましたか?
宮本:私も「こうやって」みたいなディレクションは、あまりなかったんです。あと、最初に原作を読もうとしたんですけど、デスゲームだから自分が最後まで生き残るか生き残らないかはアフレコの時まで知りたくないと思って。途中で読むのを止めたんです。だから、(「キャンドルウッズ」編)の途中まで読んだだけで収録に臨んだので、最終回の台本を頂いた時に藍里が最後まで生き残っていることにすごくびっくりしました(笑)。
──330人が参加した「キャンドルウッズ」で生き残ったプレイヤーは、幽鬼の師匠で途中、殺されたように見えた白士と、幽鬼、藍里の3人だけでした。
宮本:戦いたいと思ってない感じもするし、ずっと萌黄の指示待ちで、意欲的じゃないんだろうなって思っていたので、生き残った上に、『CLOUDY BEACH』にも出ると知ってさらに驚いて。(『CLOUDY BEACH』の)アフレコの前には、藍里ちゃんは、私が最初に思ったよりもずっと芯がある子になっていくんだろうなと思いました。あと、テレビシリーズの収録で、萌黄役の阿部(菜摘子)さんと一緒になった時、原作や台本を読んだ印象の数千倍、萌黄が泥臭い感じだったのがすごく刺さって。
三浦:うんうん。
宮本:原作や台本の萌黄も泥臭く人間味も強くて、同情もしてしまうようなところがある子なんですけど、阿部さんの取り乱しているところのお芝居とかを見ると、こっちも母性をくすぐられてしまい。藍里の萌黄への気持ちがさらに強くなったりして。最終回を終えた時も、阿部さんと一緒に収録できて良かったとすごく思ったし、阿部さんのお芝居の影響は、『CLOUDY BEACH』でも引き継いでいるので、そこも楽しみにして欲しいと思います。
幽鬼はたくさんのものを背負って生きている感じ
──ここからは、7月10日(金)公開の『CLOUDY BEACH』について伺っていきたいと思います。作品の冒頭では、幽鬼にとって40回目のゲームと、その後の幽鬼と藍里の再会が描かれます。そして、44回目の「クラウディビーチ」で再び同じゲームに参加することになるわけですが、その時点で二人はお互いに対して、どのような感情を抱いていると思いますか。
三浦:(作中で)「キャンドルウッズ」は、伝説のゲームみたいな扱いをされているのですが、白士が生きていることを知らない幽鬼は、生き残ったのは2人だけだと思っているんです。だから、藍里に対しては、「あの凄惨さを本当に理解できるのは、私たちだけだよね」みたいな仲間意識もあるのかなって。この世界に、まだいるとは思っていなかったけれど、いてくれて嬉しいみたいな気持ちだったのかなと思います。
宮本:藍里としては、安心感はありつつも、正直、ちょっと気まずい気持ちもあったんじゃないかなとは思うんです。藍里は、髪も伸ばしたりとか、すごく周りの目を気にして動いている子なので。
三浦:たしかに、(第11話で)「もう金輪際関わりたくないです、こんなゲーム」って言っていたのに(笑)。
宮本:そうそう(笑)。だから、「会っちゃった」って気持ちもあるのかなって。でも、デスゲームに一緒に参加する仲間として、もちろん、幽鬼の存在は心強いと思います。
──ご自身の演じるキャラクターに関して、「キャンドルウッズ」からの変化は感じましたか?
三浦:9回目の「キャンドルウッズ」からだいぶ跳んでのゲームなので、経験値はかなり違っているし、業というかカルマみたいなものを、さらにたくさん背負って生きている感じはします。自分の中で答えが出ないことをぐるぐると考えながら、ゲームを続けてきたんだろうなって。
宮本:私も『CLOUDY BEACH』を経て、藍里にはテレビシリーズの時には見えていなかったところがいっぱいあったんだなって感じました、知らない間に5人も殺していたこともそうなんですけど(笑)。
──作中に描かれていないところで、敵チームの「ウサギ」を5人殺すという「キャンドルウッズ」のクリア条件を達成していました。
宮本:『CLOUDY BEACH』で、「こういう動き方もできる子だったんだ」って、分かった部分は多くて。実は、こう動くと効率が良いみたいなことを考えられて、行動力もある子だと分かるようなシーンも出てきたりして。そこは、成長したところかもしれないんですけど、私的には知らなかった部分だなと思いました。
三浦:うん。合理的なところはありそう。
宮本:感情では動かないタイプで、たぶん、MBTI(性格診断)で分けると、緑ではなくて、紫か青かなって気がします(笑)。
三浦:面白い(笑)。でも、藍里みたいにやれたら理想的というか、この世界で本当に強く生きていけるよねって思います。それが、なかなか上手くいっていないのが、幽鬼なのかなって。
「クラウディビーチ」の参加者はくせ者が多い
──「クラウディビーチ」は劇場上映ということでアフレコは、1日がかりだったのですか?
三浦:いえ、3回に分けて録りました。
アニメスタッフ:3話分あるので。
宮本:アフレコ台本も3冊に分かれていました。
──では、テレビシリーズの続きのような感覚で収録されたのですか?
三浦:そうですね。第11話の後、1週間か2週間くらいお休みはありましたが、感覚的には続けて録っていたので、テレビシリーズの延長みたいな感覚で。キャラクターの感覚を忘れたりすることもなく、そのまま、収録に臨むことができました。
──もう一度、最終回を録るような感覚ですか?
宮本:というよりは、新しいゲームを録るくらいの感覚でした。
三浦:そうそう。ゲームごとに人も入れ替わるので。
宮本:私的にはゲームをまたぐのが初めてだったので、初めての方に「あれは、防腐処理なんです。痛みはあるんです」とか説明して、玄人感を出していました(笑)。
三浦:私は、宮本さんがいてくれて、すごく嬉しかったです。
──基本的に、三浦さん以外のキャストは、ゲームごとに総入れ替えになるわけですよね。三浦さんに伺いたいのですが、ゲームごとにキャストが変わると、やはり、アフレコのスタジオの雰囲気も変わるのでしょうか?
三浦:はい。同じ作品ではあるけれど、ゲームごとに収録の空気感は本当に違っていて、すごく新鮮でした。人数が多いと女子校みたいな感じだったりするので、「ゴールデンバス」では、ガヤで楽しそうなお湯のかけ合いとかしていて。(「スクラップビル」にも参加していた)御城役の土屋(李央)さんと、「え、『死亡遊戯』だよね?」って言ったりしていました(笑)。そう思っていたら、次の週には一気に人がいなくなってたりして、「おかえり、『死亡遊戯』」って(笑)
宮本:あはは(笑)。
──では、『CLOUDY BEACH』のアフレコは、どのような雰囲気でしたか? 宮本さんも「キャンドルウッズ」との違いを感じたことがあれば、教えてください。
宮本:ゲームの回数を重ねているからなのか、理由は分からないんですけど、参加プレイヤーにくせ者が多くて。しかも、台本を読んだ時から行動が異様だと思った人もいるんですけど、古詠さん(CV:田村ゆかり)とか、喋り方に特徴があったりするキャラクターが多かった印象があります。蜜羽さん(CV:明智璃子)なんて、喋る度に「うわー強そう!」って感じが伝わってきて。
三浦:分かるー。アフレコでは、テスト、ラステス(ラストテスト)、本番って3回回すんですけど、明智さんは、テストから「ドーン!」ってカマしていて、「すごい、やっぱりベテラン揃いのゲームだ!」ってなりました。
宮本:本当にくせ者感がすごかったです。
──では、最後に、ストーリー的なネタバレにならない範囲で、『CLOUDY BEACH』の魅力を教えてください。
宮本:もちろん、『CLOUDY BEACH』自体のストーリーやゲーム性も面白いんですけど。テレビシリーズを観ていて好きなキャラクターがいる方は、「この人には、こういう感情があったんだ」みたいに楽しんで頂けるシーンが何か所かあったりするんです。好きなキャラクターがいればいるほど、さらに楽しんで頂けるはず。テレビシリーズを観て下さった方には、特に観て欲しいですね。
三浦:たしかに詳しくは言えないですが、テレビシリーズを観ていると、「この子はあの子」「あの子はこの子」みたいに関係性が繋がっていることを感じるところがあるので、より楽しめるんじゃないかなと思います。
──『CLOUDY BEACH』を観ることで、テレビシリーズもより楽しめるようになる?
三浦:そうなんですよ。(テレビシリーズの)いろいろなところに隠されている種を見つけることができるので、ぜひ『CLOUDY BEACH』もテレビシリーズも一緒に何度も楽しんでもらいたいです。
[文・丸本大輔]