Yahoo! JAPAN

楠木ともり、メジャーデビュー5周年ツアーファイナルで刻んだ“あなたのせいだ”の想い|TOMORI KUSUNOKI Zepp TOUR 2025 “Whose fault is it?”レポート

アニメイトタイムズ

写真:アニメイトタイムズ編集部

インディーズでの活動を経て、2020年8月19日1stEP『ハミダシモノ』でメジャーデビューをした楠木ともり。デビューから5年を迎えるタイミングで、名古屋、大阪、東京を巡る『TOMORI KUSUNOKI Zepp TOUR 2025 “Whose fault is it?”』を行った。映像収録はなし、会場に来た人の記憶に留めることをコンセプトに行われたツアーのファイナル、7月30日(水)のZepp Haneda公演の模様をレポートする。

 

 

【写真】楠木ともり、メジャーデビュー5周年ツアーファイナルで刻んだ“あなたのせいだ”の想い

メジャーデビュー5周年。みんなの記憶に刻まれた、忘れられないライブ

草原を歩く楠木の姿が、ステージを覆う紗幕に映し出される。これは、8月1日にプレミア公開された「僕の見る世界、君の見る世界」のMusic Videoの光景と重なるのだが、ライブの前は、MVは発表されていないので、観客は初めて見る映像に、胸を躍らされていたはずだ。スクリーンいっぱいにツアータイトルが浮かび上がると、そのまま1曲目の「山荷葉」へ。

 

 
紗幕の後ろで少し揺れながら歌う楠木。夏の幻を見ているような、まるでファンタジーの世界に迷い込んだ気持ちになっていると、今度は疾走感のある「presence」のギターイントロが流れる。紗幕の後ろから当てられる光が強くなり、白の衣装で統一している楠木とバックバンドの4人が確認できた。歌の途中で紗幕が落ちると、はっきりとその姿と、2つの丸い大小のオブジェが吊るされた真っ白なステージセットが現れる。彼女のライブは毎回ステージ演出やライティングがカッコいいのだが、今回はライブハウスの後方からプロジェクターで映像をステージ全体に投写するというもの。それが、プレーヤー全員と白いオブジェに投影されることになるので、映像や照明によって衣装が色づき、それが動くことによって変化が生まれていくのが面白かった。また、パンツルックに白いシャツという楠木の衣装も、少年っぽさを感じさせるものだった(彼女のポストによると「眺めの空」の主人公を意識し、ボーイッシュにしたとのこと)。

 

 
タイプの違う2曲で観客の心を揺らしたあと、「アカトキ」のイントロが流れる。久々な感じもあるが、序盤から声を出せ!というメッセージだろう。「みんな歌って!」と叫ぶと、ファンも、“アップデートしていこうよ”の大合唱で応える。楠木自身も、その歌声を受け止めて声を重ねていた。大きなクラップと大合唱で、いきなり大きな一体感を生み出したあとのMCでは、「2年ぶりのツアーファイナル、東京公演です! 満席です!」と笑顔を見せる。そして「今回のライブは、どこにも映像が残りません! なので、今日のライブは、皆さんの記憶にしっかり焼き付けてもらえればと思います!」と伝えた。

鍵盤のイントロですぐさまクラップが起きた「もうひとくち」。バンドのグルーヴィな演奏もあり、音楽に心地良く酔いしれる時間となった。ギターのアルペジオが鳴り響き始まった「タルヒ」は、ステージ全体に草原を歩く楠木の映像を映し出しながら披露。サビでは手を左右に振って、心をひとつにしていた。

 

 
「アーティスト活動5周年になるんです。なので私の積み重ねてきたものを振り返っていきたいんですけど、そもそもZepp Hanedaは、初めての会場なんです」と、まずはこのステージに立てた喜びを語る。そのままこれまでやってきたライブの話をしていき、インディーズ時代からライブを見ている人が多くいることを喜んでいた。また、リリース作品も振り返り、持ち曲を増やすために頑張っていた思い出を語る。そして、今まで手に取ってくれた方がいるからここまでやってこれたと、感謝の気持ちを伝えていた。

 

 
電車の映像を流し出し、次に披露したのは「StrangeX」。気だるげに、それでいてポップに歌っていき、長い間奏部分は、笑顔で手を振りながら、ステージを左右に歩く。ライブでバンドが演奏することで生まれる“熱さ”も、また魅力的だ。一転「青天の霹靂」では、「夏を取り返していこうぜ!」と叫び、激しくスタートする。情熱的な赤とサイケな色合いの照明、そしてその色に染まりながらステージで暴れる楠木とバンドメンバー。その熱に、観客も大きな声で応える。「Forced Shutdown」は、バンドのパワフルな演奏に圧倒された。ひとつのズレも許されない中で、それぞれの楽器が、ここまで振り切ったプレイをするのが痺れたし、美しい声色から、一気にエモーショナルに振り切っていく楠木のボーカルワークも圧巻だった。ここまでの曲全てに言えることだが、ライブをやるごとに洗練されていっていることが感じられた。

 

 
静かだが、真っ直ぐな意思を感じる歌声から始まった「それを僕は強さと呼びたい」。歌のあとにバンドが加わるイントロで世界が開けていき、徐々に力強さを増していく。サビでステージが強い光で照らされ、楠木も感情的に、メッセージを伝えていた。

そして、彼女のはじまりの歌とも言える「眺めの空」では、“おまえのせいだってわかってんだ 僕の夏を返してよ”と歌う。鬱憤を晴らすような力強い歌声で歌っているし、実際、激しいロックではあるのだが、実は、ひと夏の思い出を歌詞にしたもの。素直に言えない、少し捻くれた言葉使いの裏に、主人公の恋心が浮かび上がってくるのだ。こういう言葉選びやセンスは、楽曲を作り始めた頃から、楠木に備わっている魅力と言えるだろう。

 

 

“Whose fault is it?”に込めた5年間の想い

本編ラストは「僕の見る世界、君の見る世界」をタオルを振り回しながら歌っていく。ライブで歌う頻度が高い楽曲でもあるので、楠木のパフォーマンス、バンドの演奏、そしてファンの歌声、その一体感から感じられる多幸感など、曲が育ってきているのが感じられた。歌詞の本来の意味を超えたところで、良い空気が生み出されていることが、彼女のライブの良さだ。

 

 
大きなアンコールが起こり、再びステージに戻ってきた楠木。アンコール1曲目は、自ら
アコースティックギターを弾き、歌った「alive」。アンビエントな世界観で、心地よい空間を作り出すと、今回のライブについて話し始める。

「“Whose fault is it?”は、誰のせい?という意味なんですけど、デビューEPに収録されている、私が初めて作詞・作曲をした『眺めの空』に、〈おまえのせいだってわかってんだ 僕の夏を返してよ〉というフレーズがあるんです。今回は、この曲のストーリーになぞらえて、みんなと過ごす思い出だったり、この5年間を思い出せるようなライブになったらいいなと思っていました」と語る。彼女のデビュー後は、世界がコロナ禍になったのだが、その時期に活動をしていた心境、それが明けてからも、どんなメッセージを伝えていけばいいのかと悩んだことなどを話していく。

 

 
その中で、自分はファンと、“良い影響を与え合い続ける存在でありたい”のだと言う。「離れていく人を引き止めることはないし、自由に応援してくれたら嬉しいとは言ってきたけど、本音では、この仕事を選んだからには、みんなにとって良い影響でありたいです。“あなたのせいで毎日楽しい。あなたのせいで仕事を頑張れる。あなたのせいで生きようと思った”、そんなふうに思ってもらえるアーティストでずっといたかったんだと、ライブを通し、自分の本当の気持ちに向き合いました。どんな世界であっても、“あなたのせいだ”と笑顔で言ってもらえるような人でいれたらと思います」と吐露する。

また、これまでの道のりがあったおかげで、みんなのおかげで自分があるんだとも語り、そんなファンへの想いも込められた「バニラ」を、温かい光に包まれながら歌っていく。

 

 
そこから、ノイズのような映像をステージに投影し、テレビかラジオのチャンネルを合わせていくような演出で「遣らずの雨」「熾火」「風前の灯火」をメドレーで歌っていく。荒れ狂うようなピアノから、渾然一体となって押し寄せていく音の圧。ここに来てさらに力強くなるボーカル。この夏に、思い残すことがないように暴れまくる、初のメドレーとなった。彼女自身も言っていたが、歌詞に繋がりがある「遣らずの雨」と「風前の灯火」を一緒に披露したというのも、熱い展開だったと思う。

その後は、彼女のライブでは恒例となってきているグッズ紹介「TOMORI COLLECTION 2025 SUMMER」。バンドメンバーもノリノリで参加し、グッズを身にまとい、ファッションショーのようにステージに登場するのだが、レゲエ調の「MAYBLUES」など、バックで流れるメンバーによるリミックス音源が本格的過ぎて、リリースしてほしくなるほどだった。

そして、今年も誕生日当日(12月22日)に、バースデーライブ『TOMORI KUSUNOKI BIRTHDAY LIVE 2025』をEX THEATER ROPPONGIで開催することを発表! その盛り上がりのまま最後は、「back to back」で、背中を預け合って、ライブを締めくくった。

ライブ後、ステージに映し出された、楠木自身の手描きで記した、2ndアルバム『LANDERBLUE』11月リリースの文字。最後の大きなサプライズをもって、みんなの夏の思い出を奪い取ったツアーを終えた。

[文・塚越淳一][写真・髙田 梓]

 

「TOMORI KUSUNOKI BIRTHDAY LIVE 2025」情報

■公演日程
EX THEATER ROPPONGI
2025年12月22日(月)
open 18:00 / start 19:00
お問い合わせ:H.I.P. 03-3475-9999

■チケット料金
アリーナ立見 8,800円(税込・整理番号付き)
スタンド指定 8,800円(税込)
※未就学児童入場不可
※入場時別途ドリンク代が必要になります

■企画制作
ソニー・ミュージックアーティスツ / H.I.P.

■協力
SACRA MUSIC

詳細や最新情報は、公式サイトや公式SNSをご確認ください。

公式サイト https://www.kusunokitomori.com/
公式X https://x.com/tomori_kusunoki

 

【関連記事】

おすすめの記事