このハンドリングを味わわずして死ねるか! ロータス「エリーゼ 220 スポーツ II」
自動車ライターのマリオ高野です。
最近はSUVなどでも運転の楽しさが満喫できるクルマが増えましたが、今回は“異次元レベル”で運転の面白さが堪能できるスポーツカー、「LOTUS ELISE(ロータス エリーゼ) SPORT 220 II」を紹介します。
伝統のアルミ製バスタブシャーシ
F1レースでも名門チームとしてその名をとどろかせた「LOTUS」は、70年近くにわたりレーシングカーとスポーツカーだけを作り続けてきたブランドで、クルマの運動性能や操縦性を突き詰めることを最重視してきました。
現在の販売の中核を担う「ELISE」はアルミ押し出し材接合構造の骨格にオールグラスファイバーボディをまとうミッドシップレイアウトの2人乗りスポーツカーです。1995年に初代モデルがデビューして以来、世界中の運転マニアから絶賛され、高いハンドリング性能を磨き続けてきました。
最新モデルの「ELISE SPORT 220 II」は、1.8リッターの4気筒エンジン(トヨタ製2ZR-FE型)を車体の中央部に搭載し、スーパーチャージャー過給により220馬力を発揮。安全デバイスなど、現代的な装備が加わってもなお、車重は現代のクルマとしては極めて軽量と言える940kgで、ライトウェイトMRスポーツならではの痛快な走りが味わえます。
かつてない洗練度の高さに驚く
初代モデルの時代から何度となく試乗する機会があり、そのたびに感動してきましたが、最新モデルの「ELISE SPORT 220 II」に乗ってみたところ、かつてない洗練度の高さに驚愕させられました。
一般車的な快適性はゼロ、だが……!
そもそも「ELISE」は頑丈なアルミの箱にレーシングカーのサスペンションを付けたような成り立ちなので、一般的な乗用車に求められる快適性や実用性はゼロに近いと割り切るべきクルマです。荷物の置き場はほぼ皆無であるなど、実用性の低さは今も昔も変わりません。
しかし、快適性については、一般道を走らせてすぐに劇的な向上を遂げていることを実感。クルマ全体が圧倒的な「堅牢感」に満ちあふれ、なおかつ「緻密さ」や「高精度感」もすさまじく高いことが伝わってくるのです。
クルマの成り立ちからして、多少のガタピシ感はやむを得ないところであり、コンフォート性の低さを補ってあまりある走りの気持ちよさがあればそれでヨシ。それ以外の難点は是非に及ばずということで納得済みだったはずが、いつの間にか存外な快適性の高さを手に入れていたのでありました。
リアルスポーツカーということで、絶対的には硬めの乗り心地ながら、路面から伝わる振動のカドは丸く、凹凸やうねりのある路面を通過してもヒョコヒョコ跳ねたりすることもありません。現在、「LOTUS」車は、本国のイギリスより日本のほうがよく売れているというのも納得。多くの日本人が高額な高性能車に求める高品質感と高精度感が備わっているのです。
特異なギアシフトメカニズム
内装で印象的な、シフト機構の内部メカがむき出しとなる「エクスポーズドギアシフトメカニズム」は、単に見た目の面白さを演出するものではなく、スポーツカーとして大事なシフト操作フィーリングを極めて硬質、かつ高精度な感触にするのにも貢献しています。
クラッチの踏み応えや繋がり感にも高精度感が満ちあふれており、現在新車で買えるクルマの中では最高レベルの操作性の高さとシフト操作フィールが味わえます。
しかも車重は軽く、エンジンの低速トルクが豊かなので、このシフトなら、MT(マニュアルトランスミッション)の初心者でも、一般的な乗用車のMTより操作しやすいでしょう。意外とMT初心者向きであるとも言えますので、MTの操作に自信のない人でも、存外な扱いやすさに感動するはずです。
このハンドリングを思えば高くない!
そして圧巻なのは、やはりハンドリング。運転の初心者からベテランの運転オタクまで、「自動車で山道を走る」という行為の本質的な気持ちよさに没頭する快楽が得られます。山道をちょっと速いペースで駆け抜けるその刹那は、日常の悩みや煩悩のすべてが頭から消え去り、ただひたすらクルマとの対話だけに集中してしまう至福のひととき。これを知らずに死なないでよかった、とさえ思える甘美な世界です。
昔のロータスを知るベテランの走りマニアにとっては、安定しすぎて刺激が足りないと感じるかも知れませんが、軽微なアンダーステアに守られながら四輪が路面に張り付く感覚は、ほぼすべてのドライバーにとって好都合で不満の少ないセッティングだと言えるでしょう。
荷物や人は載せられないし、乗降性は最悪。今どきドアミラーの角度調整さえも手動式だったりしますが、そんなことはまったくどうでもよくなるどころか、むしろ贅沢で誇らしいと感じてしまうほど、ただひたすら運転が気持ちいいクルマでした。ロータスエリーゼ、恐るべし。トンでもなくハンドリング非日常性の高いスーパーカーだと思えば、700万円近い価格も高いと思わなくなります。
この試乗の模様は動画でもご覧いただけます。