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独自金型の祖!京王電鉄限定の8000系プラレールに見る意外な「パイオニア」的な要素とは?

鉄道ホビダス

text & photo:なゆほ

 60年以上の歴史があるプラレールの製品・歴史・情報をまとめ、自身のホームページ「プラレール資料館」で公開しているプラレールコレクター なゆほさん の鉄ホビ連載!長い歴史を持つプラレールというおもちゃをコアな目線から語っていただきます!今回は京王電鉄限定プラレールの8000系にクローズアップ。今でこそ各社がこぞって発売している事業者限定品。その黎明期に登場した京王電鉄の8000系は、ある部分においてこの製品がパイオニアとも言える革新をもたらしました。(編集部)

【写真】懐かしの京王電鉄限定プラレール その始まりを写真でもっと見る

 以前の連載で、事業者限定品プラレールの始祖として、江ノ島電鉄・小田急電鉄・京浜急行電鉄の製品について紹介しました。1999年に相次いで発売された「えのでん(500形)」「京浜急行(600形)」「小田急ロマンスカーさよなら3100形記念モデル」は、それぞれ既存の型である「復刻版ちんちんでんしゃ」「通勤電車」「ロマンスカー」を塗り替え、ディテールアップを施したもので、元から3100形として製品化されていた「ロマンスカー」を除き、モデルとなった実車とはかけ離れた外見が特徴的でした。
 また、いずれも当時のプラレール製品では一般的だった「黄色い車輪」を装備していました。既存のモノを使っていかに自社の車両に見せるか、そしていかにプラレールらしくするかと言った、当時の鉄道会社のプラレールに対する考え方が伝わってくる製品群とも言えます。
 こうした流れの中の翌2000年、新たに自社車両の製品化に乗り出した鉄道会社が現れました。それが京王電鉄です。

▲2000年4月25日に発売された「京王8000系」

 先の3社の流れを見て、これは行けると考えたのであろう京王電鉄。しかし、在籍する電車は全て通勤型です。他の大手私鉄のように特急専用車両を持たないばかりか、保有車両がプラレールで製品化された事すら一度もなく、2000年当時の主力車両であった8000系もその独特な前面形状により、京急600形のように既存の型を塗り替えるだけで表現できるという代物でもありませんでした。
 そこで京王は「前面のパーツだけ完全新規で作成する」という手段を取ります。「近郊電車」の前面パーツを外し、新規設計の「8000系の顔」を取り付けることで製品化を果たしたのです。事業者限定品としては初の試みとなるこの「京王8000系」のプラレールは8000個が用意され、京王動物園線の多摩動物公園駅に併設された「京王れーるランド」で発売されました。
 この前面パーツは、8000系の特徴である大きな前面窓はもちろん、種別・行き先表示器横の急行灯、ワイパー、アンチクライマー、スカートまで再現されるという、2000年当時の通勤型車両のプラレールの中では非常にハイグレードな出来栄えとなりました。モデルとなったのは当時分割併合の運用があった6両+4両の0番代で、前後で位置が異なる分割併合装置用に開けられたスカートの切り欠きの位置まで正確に再現しています。しかし同時に「いかにプラレールらしく」見せるかにも重きを置いたと見られ、連結器は横棒のようなモールドで簡易的に表現、ライトケースと帯はステッカーで一体表現とするなど、上手く情報の取捨選択が行われています。また、車体は屋根まで銀一色という、元の製品である「近郊電車」に近いデフォルメが採用されているのも特徴的です。
 8000系の帯は側面が上からピンク・ブルーの順ですが、乗務員扉と客用扉の間で上下が入れ替わり、前面ではブルー・ピンクの順となります。「近郊電車」の型を使ってこれを再現するのは難しかったようで、プラレールでは乗務員扉の上で上下が入れ替わるようにデフォルメされています。

▲特徴的な形状を再現した前面パーツ

 更に注目される点として、通勤型のプラレールとしては初めてグレーの車輪を装備したことが挙げられます。2000年当時、グレーの車輪を装備していた車両は「2スピードのぞみ」「700系新幹線」「ウエストひかり」などの一部新幹線や、「スーパービュー踊り子号」「フレッシュひたち」「東武スペーシア」などの特急型に限られており、通勤型は基本的に黄色車輪を装備していました。これは先行する江ノ電・小田急・京急の各車両も同様です。こうして事業者限定品はもとより、通勤型としてもプラレールでは革新的な動きを見せた京王ですが、同年10月に早くも限定品第2弾を発売。当時既に廃車が始まっていたものの、8000系と並びまだまだ主力だった6000系を製品化しました。
 8000系と同じく「近郊電車」の塗り替え品ですが、こちらは元の製品をそのまま利用し、前面の塗装を変えることにより再現したという、京王らしさが見える意欲作です。ちなみに、同時に江ノ電から発売された「えのでん」の再販版がグレー車輪を採用しており、京王が先陣を切った「普通の電車にもグレー車輪」という組み合わせはここから徐々に広がっていくことになります。同年12月に小田急が発売した「小田急9000形」も「近郊電車」の塗り替え品でしたが、白い車体とのバランスを考慮したのか、こちらは黄色車輪でした。
 京王は翌2001年1月にデビューした9000系も同じ手法で製品化。新旧3形式がプラレールで揃いました。この後も意欲的に製品を出し続け、2005年に井の頭線1000系7色を、2006年には1000系とボディを共通設計とした新たな8000系を、2008年には9030系(商品名は「京王9000系」)と、続々とラインナップを充実していきました。
 余談ですが、京王が作った8000系の前面パーツが後にJR西日本223系の前面に流用され、全国流通品として生産され続けたことはファンの間では有名な話となっています。

 今となっては一般的となった事業者限定品のプラレール。江ノ電・小田急・京急から始まった自社車両の製品化は、京王の「こだわりの製品化」を経て今に繋がっているものだと言えるでしょう。

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