中学入試で知っておくべき「ルッキズム」必読3冊はこれ!
「かわいいね。」「イケメンだね。」「ちょっと太った?」
何気ない一言が、誰かを笑顔にすることもあれば、深く傷つけることもあります。その背景にある考え方が、「ルッキズム」です。ルッキズムとは、「外見至上主義・外見差別主義」のことで、外見によって人を評価したり、自分や他人の価値を見た目だけで決めつけたりする考え方のことです。
中学入試でも取り上げられることが多い「多様性」。令和の誰しもがぶつかり、次に来る解決課題でもある「ルッキズム」についてわかりやすく取り上げられている作品を、大手中学受験塾教室長のakira先生に紹介していただきます。
【10歳の壁】『整形したい』と言い出した子どもに親は何を伝えるべき?ルッキズム時代の想定問答中学受験塾の教室長をしています。akiraと申します。
近年、このテーマは新聞やニュースだけでなく、児童文学やYA(ヤングアダルト)小説でも少しずつですが取り上げられるようになりました。
中学入試の国語は、「今、社会で何が話題になっているのか」を背景にした作品が出題されることも少なくありません。その意味でも、「ルッキズム」はこれからの入試で知っておきたいテーマの一つです。
このテーマを考える上で、ぜひ読んでほしい3冊があります。
ピーチとチョコレート(講談社)第64回講談社児童文学新人賞佳作
1冊目は、『ピーチとチョコレート』(講談社)です。
第64回講談社児童文学新人賞佳作を受賞した作品です。2026年度の桐光学園中学校の国語入試で出題されました。
主人公は、太めの体型を気にしながらも、明るいキャラクターでその場を乗り切ってきた中学2年生の萌々(もも)。ひょんなことからヒップホップとラップに出会い、リズムに本音を乗せて「本当の自分の気持ち」を解き放っていきます。
「美しい 醜い 誰が決めた」
この言葉が胸に響きました。周りの目に合わせて自分を押し殺すのではなく、ありのままの自分を受け入れ、自分の言葉で表現していく姿に、読み終えたあと爽快な気持ちになります。
わたしのbe 書くたび、生まれる(KADOKAWA)
2冊目は、『わたしのbe 書くたび、生まれる』(KADOKAWA)です。
2025年度入試で多くの学校に採用された『透明なルール』の著者による最新作で、来年度の入試でも注目したい一冊です。
『わたしのbe 書くたび、生まれる』は、日能研の公開模試でも取り上げられています。模試で扱われた作品や作家が、その後の入試で出題されることは珍しくありません。
『わたしのbe 書くたび、生まれる』著/佐藤いつ子、KADOKAWA
主人公は、自分の顔に自信が持てない高校1年生の文香。書道部で「書」と真剣に向き合う中で、「美しさとは何か」を自分自身に問い始めます。
タイトルの「be」には、「美」と英語のbe(~である)の意味が重ねられています。
他人からどう見られるかではなく、自分はどうありたいのか。
夢中になれるものと出会うことで、自分らしさを見つけていく物語です。
つまり、それがルッキズム ~23の事例と解説~(講談社)
そして、このテーマを理解するために、私が特におすすめしたいのが3冊目、『つまり、それがルッキズム ~23の事例と解説~』(講談社)です。
前の2冊が物語だったのに対し、こちらはルッキズムそのものを正面から解説する入門書です。
著者の前川裕奈さんとウィルソン麻菜さんは、自身も外見のことで傷ついた経験を持ち、学校や企業でルッキズムについて講演を続けています。
だからこそ、机上の理論ではなく、私たちの日常の言葉で語られています。
「かわいいと言われるのは、本当にうれしいこと?」
「自分のためにきれいになるのは、いいことじゃないの?」
「『推し活』もルッキズムになるの?」
そんな誰もが一度は感じたことのある「モヤモヤ」を、23のマンガ形式の事例で取り上げ、一つひとつ丁寧に解説しています。
あだ名、SNS、自撮り、教室での何気ない一言……。どれも身近なテーマばかりで、「これ、自分にもあった」と感じる人も多いはずです。
特に印象に残ったのが、エピソード13「日常に潜む“いじり文化”」です。
学校や友達同士では、「いじりだから」「冗談だから」と軽く流されてしまう言葉があります。しかし、その「いじり」は、本当に相手も笑えているのでしょうか。
本人は傷ついていても、「空気を壊したくない」「気にしすぎと思われたくない」という気持ちから笑って受け流しているだけかもしれません。
このエピソードは、「悪気がなければ許される」という問題ではなく、相手がどう受け止めたのかという視点の大切さを教えてくれます。
ルッキズムは特別な差別や誹謗中傷だけではなく、日常の何気ない一言や「みんな言っているから」という雰囲気の中にも潜んでいるのです。
もう一つ、強く印象に残ったのが、エピソード15「あだ名や『○○に似てる』と言うこと」です。
教室で子どもたちと接していると、このテーマは決して特別なものではありません。むしろ、どこの教室でも起こり得る、そして実際に起きている問題だと感じています。
あだ名をつける側には悪気がなくても、呼ばれる側は「本当は嫌だけど、言い出せない」「空気を壊したくないから笑っている」ということがあります。
子ども同士だからこそ、冗談や「いじり」として流されてしまうことも少なくありません。
しかし、その何気ない一言が、相手の心に長く残ってしまうこともあります。
だからこそ、このエピソードを読んで、「これは教室でも一度立ち止まって考えてみたいテーマだ」と強く感じました。
子どもたちだけでなく、大人も含めて、「相手はどう感じるだろう」と想像することの大切さを改めて教えてくれるエピソードです。
この本の魅力は、「見た目」に関する言葉を善悪で単純に分けないことです。大切なのは、「ほめたか、けなしたか」ではなく、その言葉を相手がどう受け止めたのか。
エピソード13の「いじり文化」やエピソード15の「あだ名」が教えてくれるように、何気ない一言は、人を傷つけることもあれば、勇気づけることもあります。
だからこそ、この本は、何が人を傷つけるのか、どうすればお互いに心地よく過ごせるのかを、一緒に考えさせてくれる一冊なのです。
マンガで読みやすいため小学生にもおすすめですが、実は大人のほうが多くの気づきを得られる一冊かもしれません。
読み終えたあと、「自分だったらどう感じるだろう」と自然に話したくなる本です。ぜひ親子で読んで、「これってどう思う?」と話し合ってみてください。
写真:アフロ
ジャンルはそれぞれ違います。しかし、この3冊は共通して、私たちに一つの問いを投げかけています。
「人の価値は、見た目だけで決まるのだろうか。」
私は、この問いは中学受験にも通じると思います。受験には、偏差値や順位という「見える数字」があります。
もちろん、それらは努力の成果を知るための大切な指標です。しかし、その数字だけで子どもの価値が決まるわけではありません。
毎日努力を続ける姿勢。失敗しても挑戦し続ける勇気。友達を思いやる優しさ。自分で考え、自分の言葉で表現する力。
こうしたものは、成績表には載っていません。
国語の問題では、「登場人物はなぜその行動をしたのか」「そのとき、どんな気持ちだったのか」が問われます。つまり、国語が測ろうとしているのは、表面的な情報ではなく、「相手の立場になって考える力」です。
ルッキズムについて考えることは、「人を見た目だけで判断しない」ということだけではありません。目に見える情報だけで決めつけず、その人の背景や思いに想像を巡らせること。そして、自分自身も、他人の評価や見た目だけで価値を決めないこと。
それこそが、この3冊が伝えたいメッセージなのではないでしょうか。
もし今年の入試で「ルッキズム」をテーマにした作品が出題されたとしても、知識だけを問う問題にはならないはずです。「あなたはどう考えますか」。そんな問いに、自分の言葉で答えられるかどうか。その力が試されるでしょう。そのためにも、この3冊を通して、「見た目」と「自分らしさ」について考えてみてください。
国語は、文章を読むだけの教科ではありません。人を理解し、自分を理解する教科です。だからこそ、「ルッキズム」というテーマは、これからの中学入試で出会っても不思議ではありません。もし来年の入試で出題されたら、作品の向こう側にある「人を見るまなざし」まで、ぜひ読み取ってほしいと思います。