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中国での調査〜下痢で診察を受けた犬の約半数から薬剤耐性菌

わんちゃんホンポ

中国でペットの犬を対象にした抗生物質耐性菌の調査

抗生物質耐性菌の蔓延は、世界中で大きな脅威となっています。細菌感染を治療するために使われる薬剤に対して細菌が耐性を持つようになり、効きにくくなっていることが問題視されています。

耐性につながる可能性のある要因のひとつとして、動物と人間の間での耐性菌の伝播の研究も行われています。その多くは抗生物質を与えられることの多い、牛や鶏など家畜動物が対象になっており、犬などのコンパニオンアニマルについての研究は、まだまだ不足していると言われています。

このたび中国の四川農業大学獣医学部を中心とした研究チームが、人間と同居する動物が抗生物質耐性菌の問題の一端を担っている可能性に注目し、ペットの犬の下痢と抗生物質耐性菌についての調査を実施しました。

検査したサンプルの約半数から抗生物質耐性菌が

中国では1億頭以上のペットが飼育されているといいます。最新の報告では、同国における動物用抗生物質の使用量は、2020年には30000トンを超えたとされています。

このように動物に抗生物質が広く使用されていることから、研究チームは人間に最も近い場所で暮らしている犬の多剤耐性大腸菌を調査しました。

研究チームは四川農業大学附属の動物病院で診察を受けた、下痢の症状のある185頭の犬の便サンプルを検査しました。

サンプルからは135菌株の大腸菌が検出され、これらの各菌株について数種類の抗生物質に対する反応を調べたところ、検査した菌株の87%が少なくとも1種類の薬剤に耐性を示しました。なお、薬剤耐性菌を排出していた犬はサンプル全体の約半数だったそうです。

さらに大腸菌のゲノムを分析した結果、これまで抗生物質耐性と関連づけられてきた遺伝子が検出されました。

大腸菌の多くは、犬や人の腸内常在菌で病気を引き起こすものは少ないのですが、この調査で見つかった耐性株の多くは、尿路感染症などを引き起こす細菌群に属していることもわかりました。

つまり愛犬の下痢は、多剤耐性大腸菌を人間に伝播させ健康を脅かす可能性があるということです。

他の国でも同様のリスクの可能性、対策をしっかり

この研究は中国の特定の地域の犬を対象にしたものですが、日本も含めた他の国でも同様の結果が見られる可能性があります。

抗生物質耐性菌が体内に入ったからといって必ず感染症になるわけではありません。しかし乳幼児、病中病後の人、高齢者などがいるご家庭では細心の注意を払う必要があります。

犬と触れ合った後は石けんで手を洗う、犬の食器やおもちゃも洗剤で洗う、犬のフンの処理や掃除の際には使い捨て手袋を使うなど、基本的なルールをしっかり守ることが大切です。

愛犬がお腹を下した時には病院に連れて行き、人間や他のペットからの隔離が必要かどうか、隔離の期間などについても獣医師に相談しましょう。

また過去の研究では、犬に生肉を与えることが抗生物質耐性菌を増加させるという結果も複数報告されています。犬と周囲の人間の健康のためにお気をつけください。

https://wanchan.jp/column/detail/41766

まとめ

下痢で動物病院の診察を受けた犬のサンプル185頭の約半数から複数の抗生物質に耐性を持つ大腸菌が検出されたという調査結果をご紹介しました。

研究チームは、今後さらに完全なデータを提供するために、より多くのサンプルとより広い地域での調査、大腸菌の全ゲノム配列決定の使用などを予定しているそうです。

世界のさまざまな地域での研究から不必要な抗生物質の使用が抑えられるようになれば、世界中の人や動物が恩恵を受けることになります。

《参考URL》
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0298053

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