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あの日の臨場感を映画館で!映画『中村壱太郎×尾上右近 ART歌舞伎 花のこゝろ』会見レポート 

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『ART歌舞伎』取材会(左から)尾上右近、中村壱太郎。

2021年5月1日(土)より、ポレポレ東中野(ほか全国順次公開)で映画『中村壱太郎×尾上右近 ART歌舞伎 花のこゝろ』が上映開始される。本作は2020年のコロナによる緊急事態宣言の中、歌舞伎公演がすべて中止・延期となったことを受けて、歌舞伎俳優の中村壱太郎を中心とし、尾上右近や邦楽演奏家たちが集い、制作した映像作品だ。

映画「中村壱太郎×尾上右近 ART歌舞伎 花のこゝろ」ポスター

出演は壱太郎、右近、そして日本舞踊家の花柳源九郎、藤間涼太朗。演奏には、箏の中井智弥、津軽三味線の浅野祥、笛の藤舎推峰、太鼓の山部泰嗣そして琵琶の友吉鶴心が参加。さらに本作を企画したKSR(代表:新羅慎二)の呼びかけにより、ヘアメイクを冨沢ノボル、衣装を里山拓斗、ヘッドピースをフラワークリエイター篠崎恵美(edenworks)が担当した。

歌舞伎の舞台で培われた壱太郎と右近の舞踊との異色のコラボレーションが好評を得て、今回の劇場公開に至った。上映されるのは5.1chサラウンドと英語字幕付インターナショナル仕様の劇場公開特別版となる。

■新たな映像表現、新たなサウンドで

はじめに壱太郎が、「昨年7月に配信した公演が、念願叶い、映画館でかけられることになりました。 本当に嬉しいことです。初めてご覧になる方も一度ご覧になった方も、映画館での新たな映像表現、新たなサウンドで楽しんでいただければ」と挨拶をした。

中村壱太郎

続けて壱太郎は、湘南乃風の「若旦那」の名前で知られる新羅との親交についてもコメントした。

「新羅さんに歌舞伎を観にきていただいたり、私が新羅さんに様々なことを紹介いただき教わる仲でした。コロナ禍に入り、これまでどんな人と出会い何をしてきたかを振り返った時、今こそ新羅さんと一緒に何かしたいと考えました」

演奏者たちへの信頼と感謝を言葉にした後、「肝心の『誰と共演するか』を考えた時、まず右近君の名前が思い浮かびました」と右近に目線を送った。

■表現できる喜びをひしひしと感じ

右近は「(ART歌舞伎は)壱太郎さんの『何かできないか、しなくてはいけないのではないか』との思いから立ち上がったプロジェクトです。同じ思いを重ね、私も参加しました。当時、舞台での活動がストップしている中で、表現できる喜びをひしひしと感じながら皆で創り上げました」と振り返る。

尾上右近

右近は、壱太郎との関係を「同じ情熱、同じ思いを感じる役者の仲間であり、先輩後輩の間柄」であるとし、「世界がこのような状況を迎える中、人との関わりの重要性をあらためて感じました。人と人が仕事を作るものなのだなと感謝しています」と笑顔を見せた。

■あの時の臨場感を映画館で

劇場公開特別版の5.1chサラウンドには、どのような魅力があるのだろうか。壱太郎が答えた。

「『臨場感』というものは、大画面になればできるものではなく、空間を作る音になっているかどうかが大事だと思います。5.1chサラウンドで『ART歌舞伎』を体験いただくことで、なぜ僕らが屋外での撮影にこだわったのかも感じていただけるのではないでしょうか」

『ART歌舞伎』初回の配信は、2020年7月12日。それに先駆け6月中旬より稽古し、7月1日に靖国神社の野外の能舞台で収録された。収録日は横なぐりの雨だった。

「大変な雨と風でした。風の音は、消そうと思えば消せるものでしたが、配信でもあえて残しています。あの場の空気を感じていただきたかったからです。映画館では、その臨場感をより強く感じていただけるように思います。台風の日を狙ったわけではありませんでしたが、結果的に、自然現象をも味方につけることができたのかなと思っています」と壱太郎は振り返る。

映画「中村壱太郎×尾上右近 ART歌舞伎 花のこゝろ」より。

右近もまた撮影の日を思い起こし、舞台に立ちながら「このまま続けるのは難しいのでは……と感じる瞬間もあった」と思いを吐露する。

「雨が吹き込んでいました。ましてや和楽器は雨風に弱い楽器です。でも、言葉ではなく空気で『このまま、あえてこの瞬間を記録する方向で行きましょうと』と、皆がハラを決めた瞬間があったんです。その一瞬が記録され、あの時しか味わえない空気を映像に収めることができたと思います」

映画「中村壱太郎×尾上右近 ART歌舞伎 花のこゝろ」より。

会見の日は晴天だったが、窓が音を立てて揺れるほどの強風が吹いていた。

右近は「今日の風を感じて今思うのは、壱太郎さんの思いが、蝶々の羽ばたきのように小さな風を起こし、いい意味で皆を巻き込み呼び寄せて、映画館上映という晴れ晴れしい場に結び付きました。この作品がさらに大きな風となり成長してくれたらと」とも語っていた。

■コロナではじまった、第1弾として

右近は「生の舞台は、全身で表現したりその場の空気で表現できます。それは自分が大事にしている部分でもあります。映像では、切り抜かれた絵の中にどのような情報があるかの勝負。映像の難しいところですね」と分析。壱太郎は「僕はどうしたって舞台人なので」と前置きをし、「どれだけ舞台上で作り込んでも、映像にしたらお見せできないものがあると知りました。ではどこにそれを注ぎ込めばいいか。第1弾が終わった時に、すぐさま第2弾を思い浮かべました。コロナの時にART歌舞伎があったねではなく、コロナで始まったねと言われるART歌舞伎にしたいです」と、今後の創作にも意欲をみせた。

中村壱太郎

初回配信では、自宅のパソコンやスマホで少しでも集中して楽しんでもらうべく、ブレイクタイムを設けるなどの工夫があった。

「今回はブレイクタイムは設けず、通してご覧いただきます。映画館という集中しやすい環境ですが、オンライン配信のように、好きなところで止めたりできません。1つの踊りとしてお客様がどうお感じになるか。止められない中で、どこまで集中してみてくださるか。これは僕らにとって、映画公開における一番の勝負でもあります」

上映時間は86分の予定。

映画「中村壱太郎×尾上右近 ART歌舞伎 花のこゝろ」より。

壱太郎は『ART歌舞伎』撮影直前に『図夢歌舞伎』の撮影で共演した市川猿之助から、「“より”の映像になった時、まばたきし過ぎないように」とアドバイスがあり、すぐに生かせたこと、配信直後には松本幸四郎から連絡があったことに感謝を述べ、「他にも叱咤激励いただきました、これを次につなげたいです」と真摯に語る。右近もまた「幸四郎のお兄さんが配信直後に連絡をくださいました」と続き、「壱太郎さんが電話をとり、かわってもらうと『かっこよかった』と一言くださったことが嬉しく、印象に残っています。賛否両論あるのでしょうが、先輩たちに注目いただけたことが嬉しかった」と率直な思いを語った。

尾上右近

最後に右近は「臨場感、迫力、エネルギーの爆発を感じていただけるのは映画館ならではの魅力になると思います。ビジュアルや音は、歌舞伎がもつ、ある意味でパンクな一面を感じていただけるのではないでしょうか。歌舞伎を再発見していただけるきっかけになる作品になれば」と呼びかけた。壱太郎は「このような状況下ではありますが、僕らにできるのは表現することです。映画になったとしてもそれは変わりません」と締めくくった。

劇場公開の5月1日には、オリジナルアルバムCD『中村壱太郎×尾上右近 ART歌舞伎 MUSIC COLLECTION』が発売される。本作を和の音色でエモーショナルに彩った楽曲が再録音された、オリジナル音源だ。政府により発令された3回目の緊急事態宣言に伴い、5月5日に予定されていた舞台挨拶と関連イベントは中止となったが、通常の上映は、座席数を50%にして行われる。

「歌舞伎役者が絶対やらない歌舞伎のポーズやろう」と右近。「ヨッ(手を叩き)ART歌舞伎!」とのっかる壱太郎。

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