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劇団壱劇屋復活公演『異空間クラスター』座長の大熊隆太郎にインタビュー。「舞台版も配信版も、実験的なエンタメ作品になれば」

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大熊隆太郎(劇団壱劇屋)。

パントマイムやダンスを駆使して描く不条理な世界や、セリフを使わずに殺陣だけでストーリーを見せきる舞台など、フィジカル系の快作を次々に送り出し、今まさに爆進中と言える大阪の劇団「劇団壱劇屋」。しかしこのコロナ禍で、オリンピックの訪日客をターゲットにした野心的な二本立て公演を始め、多くの公演が中止・延期に。自粛期間中も、リモートを使った新しい動きを見せる劇団が多い中、静かに時を待つような状態を続けていた。

そんな彼らが、ついに長い沈黙を破って、新作『異空間クラスター』を[神戸アートビレッジセンター(KAVC)]で上演。昨年12月に同劇場で初演した参加型演劇『空間スペース3D』のコンセプトを引き継ぎ、物語も演出も「ウィズ・コロナ」を意識した世界を作り上げるという。劇団座長で本作の作・演出を務める大熊隆太郎に、今回の作品が生まれた経緯や、活動休止を経て感じたことなどについて話を聞いた。

■コロナで起こる制限を、思い切りイジって楽しんでみようと。

──『空間スペース3D』は、KAVCホールをオールスタンディング仕様にして、役者たちがその空間内のあちこちで突発的に芝居を行うという、アトラクション的に楽しめる作品でした。活動を再開するに辺り、その第二弾となる舞台を行おうと思ったのは?

KAVCさんの方から「この期間に何かやりたいことがあるなら、協力しますよ」とお声がけいただいたのがきっかけでした。KAVCさんは「新しい劇場のためのワーク」という、このコロナ禍の中でどんなことができるか? という企画を立てていて、そのためにワークショップでもリモート配信でも、何でも好きなことをしていいよ、と。

やっぱりKAVCさんも、コロナ対策に関して、何がOKで何がダメかというのを、日々探っては更新している状態みたいでして。僕らにも「これなら大丈夫」という明快なガイドラインはなかったし、だったらガッツリ制限がある間に、むしろその制限を思い切りイジって楽しむような作品を作ってみようと思い、急遽決定しました。

劇団壱劇屋『クラスター異空間』宣伝ビジュアル。

──ストーリーはどんな感じですか?

『空間スペース3D』と同じように、劇場が異次元とつながって、別の次元の人たちが乱入して劇場中を暴れ回る、というお話です。コロナのない世界から来た人たちが、劇場をウイルスのない状態に“汚染”するとか。ただ前回のような、オールスタンディングの密な空間にはできないので、客席をブロックごとに区切り、役者はその間の通路でパフォーマンスをします。役者とは一定の距離を保てますが、すぐ隣で演技が始まったりするかもしれません。

──制限がだいぶ緩和されたとはいえ、パフォーマーが客席に入ることがまだタブー視される中、大胆な演出ですね。

KAVCさんが、客席侵入の演出を許可してくださったので、今は稽古をしながら、どこまでがOKかを探ってる所です。劇場スタッフの方や舞台監督さんに、逐一客席でチェックしてもらって、気になる所を指摘していただくという。でも想像より2つぐらいレベルの高い所で、規制がかかったりして大変ですね。特に僕らのように、お客さんを巻き込んで、一緒にメタな世界を楽しむみたいな演目をやってる所は、これが思ったよりもしんどい。現状では、制限があることを全然楽しめてないです(笑)。

──特にキツい縛りだなあと思うことは?

「客席の中で、呼気を荒らげないこと」です。客席ではしゃべらない上に、不織布のマスクをする、何なら防護服着用という状態なんですけど、さらに「長い間同じ場所にいない」とか「お客さんと対面した状態で長時間踊らない」とか……やっぱり息が上がりますからね。そういうパフォーマンスの面で「待った」がかかるのは、やっぱりキツいです。

劇団壱劇屋『空間スペース3D』(2019年)より。 [撮影]河西沙織(劇団壱劇屋)

でも今は日常生活でも、みんな結局満員電車に乗ってるし、お店ではマスクを外して会話してるじゃないですか? それに比べたら、役者はずっとマスクをしてるし、1.5m以上の距離は保ってるし、たとえ近づいてもすぐ離れるから、むしろ安全じゃないかと思うんです。そのことを、もっと言っていかなあかんなあと思うので、今劇団員が「これだけ感染対策していますよ」という動画を、頑張って作ってます。

──それでも不安な方は、生配信を観るということができますが、それぞれどういう楽しみ方ができると思いますか?

劇場に来た人たちは、当たり前のことを言うようですけど、場を共有しているからこその楽しさがあるのが一番ですね。特に今回は、自分も劇の一部になるような仕掛けが多いので、他のエンターテインメントでは味わえないような臨場感を、さらに増幅させたような体験ができると思います。

配信は配信で、固定カメラの他に、役者が手持ちカメラで客席や舞台の中を練り歩くので、記録映像というより、ニュース映像を見てるような感じになるんじゃないかと。しかもリアルタイムでスイッチングをするんで、3公演ともちょっと違う画(え)が観られるというのは、映像ならではの楽しみかもしれないです。

劇団壱劇屋『空間スペース3D』(2019年)より。 [撮影]河西沙織(劇団壱劇屋)

■走りっぱなしだった劇団にとって、悪くない休息だったのでは。

──『空間スペース3D』も、ライブ配信を同時に行ってましたが、あれはコロナが話題になる一ヶ月ぐらい前の公演で、今思うと予言めいたような作品になってましたね。

そうなんですよ。演劇のライブ配信って「Ustream」全盛期は結構いっぱいあったけど、最近下火になってたから、逆にどんどんやってみようと思って、あの公演からやり始めた所だったんです。防護服やマスクも着けてたし、変な先取りをしてましたね(笑)。でもあのタイミングで、あの公演ができてよかったです。狭い空間で一体感を味わうという、小劇場の魅力を活かした作品だったけど、あんなこと今は絶対できないんで。

──緊急事態宣言以降、壱劇屋さんは一度ZOOMの朗読会をした以外は、割と沈黙を守った状態でしたね。

4月末の公演を、ギリギリまで判断しかねてたけど結局延期にして、その後は活動しませんでした。特に5月の辺りって、世界中で人がバタバタ死んでたじゃないですか? 日本もそうなるかもしれないと思って、事務所に集まるのも全部禁止にして、月1回リモートでミーティングをすることにとどめました。

──劇団員の中から、本格的なZOOM演劇や番組配信などの声は出なかったんですか?

なかったです。それって結局、僕がめっちゃ慎重な人だからなんで(笑)。僕が「今は動かないでおこう」と言って、劇団単位では動かない……だから個人個人で、配信番組を作ったり、客演をしたりということはありました。ただ壱劇屋って、僕が座長になって以来ずっと走りっぱなしだったんで、この休みは悪くない時間だったと思います。僕自身もこの間に、作曲ができるようになったり、佐々木ヤス子(注:女優。大熊のパートナーでもある)と「失業夫婦」というユニットを作ったりと、いろいろな実りがありました。

劇団壱劇屋『劇の劇』(2020年)より。 [撮影]河西沙織(劇団壱劇屋)

──他の劇団のリモート演劇とかは、チェックしてましたか?

そんなには観てない……いや、全然観てなかった。申し訳ないですけど(笑)。それよりは映画とか、You Tubeにあるトリック映像のような動画とかをずっと観てました。「OK GO」のMVとか、家族で楽しんでましたね。もともとコロナが始まる前ぐらいから、演劇以外のものに触れたい触れたいと思い続けていたので、演劇に触れたくても触れられない環境になったのは、むしろ僕にはちょうど良いタイミングだったのかもしれません。

──壱劇屋さんは、新たに東京支部ができた上に、世界への足がかりとなるような公演を企画したりと、2020年を勝負の年と位置づけていたのではと思います。それがすべて白紙になったのは、かなり痛手だったのではないかと。

やっぱりオリンピックの裏でやる2本立ては、言葉を使わない表現を武器にしてきた僕らにとって、ある種のチャンスかもしれないという公演でした。しかも劇団が東西に分かれて活動するのって、思ったより足並みをそろえるのが難しいことがわかってきたけど、それでもいっちょう頑張ってやってみよう……という位置づけでもありましたし。壱劇屋は一昨年に結成10周年を迎えて、ここからリスタートみたいな気持ちもあったので、そういう意味では出鼻をくじかれた感じでした。

でもやっぱり抗えないというか「どうしようもないなあ」という諦めが大きかったですね。多分これが、他の劇団は上手くいってるのに、何でうちだけ? という状況だったら、また違う気持ちになったんじゃないかなあ、と。他者と比べるのはよくないことですけど。

──全員が足並みそろえて強制休業、って感じでしたからね。

多分復活の時期も、ある程度「せーの!」って感じにしかならないだろうから、焦ってもしょうがないなあと思ってました。もちろん劇団員の中には打ちひしがれた人もいるだろうけど、この休みの間に配信の技術を上げるとか、演劇+αのモチベーションが出た人もいるんです。そうやって得られた多様性を、創作面だけじゃなく、制作や劇団運営にも広がるように使っていけたらなあと思います。

劇団壱劇屋『劇の劇』(2020年)より。 [撮影]河西沙織(劇団壱劇屋)

■地方の僕たちに、世界中の人がアクセスできる機会に。

──再開され始めた舞台を観ると、役者同士の距離が昔より微妙に離れてるように感じるなど、特に演出面でいろんな変化が見受けられます。身体表現を重視する壱劇屋さんも、何らかの変化が生まれてるのではないかと思いますが。

僕個人は、特にダンスで「接触」というのは捨てられないと思うんです。ただ接触するなら、ちゃんと考えた上でする。マスクも外せる時は外すとか、そういうのを一つひとつ疑って、検証して、議論していくしかないなあと思います。それって確かに面倒くさくもあるけど、作りがいもあるんじゃないかなあと。

ただ先日「ストレンジシード静岡」(注:静岡市内一帯で開催される、屋外型の演劇イベント)に参加した時、壱劇屋は「コロナの世界を歩く人たち」というテーマで、マスクをして街を歩き回るということをしたんですけど、全然マスクしないでしゃべってる劇団もあったんです。でもオープンエアということもあって、それを気にしているお客さんはあまりいないように見えました。だからコロナの備え方って、一律で「これがダメ」というよりも、団体や劇場によるというのでいいのでは? と思いましたね。

──そのイベントを通して、壱劇屋独自のガイドラインは見えてきましたか?

どうでしょう?「ここまでは良い/ダメ」というのは、割と劇団員の間でも差があったりするので。ただ僕自身は『GEAR』(注:京都でロングラン上演中のノンバーバルの舞台)とか、少しずつ外の舞台に復帰し始めて、だんだん「ここまでやれば安全だし、安全を提示できる」というのが見えてきました。

大熊隆太郎(劇団壱劇屋)。

それを経てようやく今回、(劇場との)共催という形ですが、限りなく主催に近い形で、初めて劇団公演を行うという。稽古中からできる感染対策はちゃんと取ってますし、そんじょそこらの施設より安全な空間にできると思います。KAVCさんのルールも、比較的他の施設より厳しめですし、僕自身も結構コロナにはおびえてる方なんで(笑)。

──座長が一番気をつけてるというのが、実は一番安心かもしれないですね。

ただ、僕らがこれだけやる気満々で、これだけ対策してるから大丈夫と思っても、まだお客さんが劇場に帰ってきていないという印象は強いです。まだ劇場に行くことに二の足を踏んでる方は、かなり多いと思います。「その辺のお店や施設より安全ですよ」ということは呼びかけていきますけど、それでも抵抗のある人や、行きたくても物理的に難しい人のために、今回は配信がありますからね。

でもこれって、一つのチャンスやと思うんです。今年に入って急激に、舞台を配信することに作る側も慣れたし、観る人も慣れたじゃないですか? だから地方で活動している僕たちに、全国の人……何なら世界の人がアクセスしやすい世の中になった。そこはやっぱり「あ、面白い映像作品だな」と思ってもらえるような、単なる舞台の代替品にはならないような映像を、お届けできたらと思います。

──ストーリー的に、今の時代を意識させる要素もあるんでしょうか?

こう言ったら不謹慎かもしれないですけど「コロナいじリ」みたいなことはやってます(笑)。でもある種、ウイルスの危険性を意識しつつ、楽しみながら共存するという道もあるんじゃないですか? みたいなテーマは、そこにあるかもしれないです。そういう話を、マスクで表情の見えない人たちが、劇場中を走り回ったり踊ったりしながら見せていくという。

多分観ている人たちは、途中から役者が客席侵入してることについて、「本当にこの行為は危険なのか?」と考えるというか、気にならなくなってくるんじゃないかと思います。でも見た目としては、本当にエンターテインメントショーだと思ってもらっても、全然差し支えはないです。舞台の方も映像の方も、実験的なエンタメ作品になったらなあと思います。

『異空間クラスター』PV

取材・文=吉永美和子

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