春の投げキス釣り攻略法 海藻の仕掛け絡み対策には「半遊動天秤」が効果的
春の投げキス釣りにおいて、臆病なキスを釣るには穏やかな天候と潮の動きが重要である。海藻対策には仕掛けの工夫が必要で、これは半遊動天秤が有効だ。今回は攻略法を解説しながら、紀北や紀南での実践釣行の模様をお伝えしたい。
投げキス釣りシーズンイン
キスが本格的に動き始めた。キスの産卵期間は長く、釣期も比較的長いので、秋にはその年に生まれたデキギスが早くも釣れだす。しかし早期は少なくとも一冬を越してきた個体なので、型が良いものも混じる。
その一方で、春先のキスはとても臆病である。明確な魚信を送ってくるもののなかなかエサを吸い込まず、素バリをひいてしまうなど、熱くさせられる。その分上手く良型を手にした時の喜びは大きなものがある。
早場の釣りを取り巻く気象条件
一般的に良く知られていることであるが、うねりが入ると、キスは食わなくなる。やはり穏やかなコンディションで、ある程度潮の動くような日がチャンスである。
まだ水温が安定していない春先には、早朝よりも日が高くなってからの方が活発にアタリが出ることも多い。とくにチョイ投げではそうで、気軽さという点も考え合わせれば、そんなに早朝の時合ばかりにこだわる必要はない。むしろ午後から上げ潮の時などは夕方に活発に魚信を見せる時もある。
釣行の安全という意味では、春先には移動性の低気圧がよくやってくる。天気が崩れるだけならいいが、気圧の谷(天気図で高気圧と高気圧にはさまれた狭いゾーン)を低気圧が発達しながら進んでくる場合、風雨が強まり、危険な海況になる。
天気図を見ていても等圧線の間隔が狭まって台風に近い形になるのがわかると思う。最近はネットでも天気図を調べることができるので、このような気象予報のときは、釣行をとりやめたい。
快適に楽しむための工夫いろいろ
早春は、ワカメなど海藻が旬を迎える。したがって、ポイントには海藻や流れ藻が多い。投げ&チョイ投げでは、底をさびくので、どうしても仕掛けに藻がかかってくる。やむをえないことではあるが、ある程度対策もできる。
たとえば、仕掛け、全長を少し詰めたり、針数を少なめにすることで藻絡みはある程度軽減することができる。このような場合、連続仕掛けが便利だ、市販の50本連結仕掛けなどにも使いやすいものがある。
また、天秤の形によっても藻絡みの度合いはかなり違う、固定式や誘導式のL型天秤は、どうしても天秤のアームの部分、特にオモリに近い部分に海藻をひっかけてしまうので、リーリングが重くなってしまう。魚信の感度も悪くなる。
このような場合、最近よく出ているオモリと天秤が別になったタイプの半遊動天秤(写真参照)を使うと、天秤への藻絡みはかなり軽減することができる。
また、さびいている時は道糸と仕掛けがより直結に近い状態になるので、魚信が捉えやすくなる。その反面、飛びは固定のL型に比べ若干悪くなったり、天秤のアームによる合わせの効果はなくなるので、針がかりが浅くなるなどのデメリットもある。
竿に合わせて、同じ号数のオモリで、いくつか違ったタイプの天秤を持っていき、状況によって使い分けるのがいいと思う。
狙い方のポイント
チョイ投げの場合だと、2~3色程投げ、超スローペースでリールサビキ、ときどき仕掛けを止めるといったゆっくりとした誘いのかけ方が有効である。
日増しに暖かくなってくると、砂浜のポイントでもチョイ投げゾーンでも散発的にキスが姿をみせるようになるが、それ以外にもチョイ投げが有効なシチュエーションがある。
それは荒れ気味のときで、前回の釣行記でも説明しているが、外海の波が高いときや風が強くてサラシている時、付近の漁港内などにキスが入り込んでいる場合がある。今回の釣行はまさにそんなコンディションであった。
また、一般的な内湾や、砂浜海岸、磯周りの砂泥底のようなオープンな釣り場の場合には、やはりある程度の遠投が必要である。良型も多いが、夏場のような激しい魚信を見せることはあまりないので、少しでも違和感を感じたら、一瞬仕掛けを止めたり、さびく速度を落としたりして、ゆっくり食い込ませてやる方がいい。
3点4点でくることは少ないので、仕掛けを回収する時はリーリングスピードを安定させて、手前のシモリに注意してうまく取り込みたい。
紀北エリア:田ノ浦漁港で実釣
5月連休は南寄りの強い風に悩まされたが、連休最終日には若干風雨がましになった。午後3時半ごろから田ノ浦の漁港に入る。サビキ釣り他波止釣りでにぎわうポイントであるが、時間的なこともあってか他のアングラーはほとんどいなかった。外海は波が高かったが、港内の一番奥のワンドは波が比較的穏やかだった。
ルアーロッドによるチョイ投げでオモリは12号、港内は藻が多く、L型天秤のアームの付け根(錘からアームが出ているところの近く)に、糸状の藻がくっついてさびく途中で急に重くなる。
そこでオモリ着脱式の半遊動天秤に交換したところ、かなり藻絡みは軽減でき、サビキも快適になった。まだ、そんなに活発に魚信があるわけではないが、日暮れ近くまで3時間ほど探り、キス18cmまでを8匹。紀北でもチョイ投げキスがスタートしたことを実感できた。
紀南エリア:扇ヶ浜&芳養・大屋の磯で実釣
午前7時半ごろから、まず扇ヶ浜の護岸を探る。この日は普通の投げでチャレンジした。この日も西寄りの風が強かったが結果的には2~3色でアタリがあり、小型のキスを3~4匹取り込んだが、足元に捨て石があり、その先は海藻ゾーンになっているので、取り込みが難しく、苦戦。
午後からは芳養・大屋に移動、下げ潮周りで現れた磯場に出て探った。ここでは4~5色ゾーンで単発ではあるが扇ヶ浜よりも型が良かった。当日最長は20.5cmで、午後4時過ぎまで探ってキスを追加、この日の釣果はキス20.5cmまでを10匹。どうにか2ケタに乗せた。
扇ヶ浜ではやや荒れ気味のためか、40cm近いエソが1匹きた。結構どっしりした魚体だったのでさばくとやはり抱卵していた。鯛の子ならぬエソの子であるが、煮つけで食べたら美味であった。身の方も少し小骨があったが、いい味だった。
紀北でも、紀南でも、キスがシーズンインした。投げ、チョイ投げどちらでも楽しめるようになってきた。これから7月ごろまでが、前半のベストシーズンである。
<牧野博/TSURINEWSライター>