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古墳シスターズ “平成最後の青春パンクバンド”はいかにしてコロナ禍を乗り切り痛快な新作を生み出したのか

SPICE

古墳シスターズ

香川県を拠点に活動する“平成最後の青春パンクバンド”こと古墳シスターズが、10月28日に両A面シングル「古墳シスターズの夏休み2 / シロガネ」をリリースした。今年4月には四星球が主催するレーベル「officeみっちゃん」より念願の全国デビューフルアルバム『スチューデント』をリリースするも、新型コロナウイルスの影響によりリリースツアーは全公演中止に。へこたれてもおかしくない状況にありながら、いかにしてこの痛快な両A面シングル「古墳シスターズの夏休み2 / シロガネ」を完成させたのか? 待望の全国ツアーの振替公演を控えた4人に改めて、アルバム『スチューデント』リリース後から現在に至るまでの四方山を訊いた。

――初の両A面シングル「古墳シスターズの夏休み2/シロガネ」を完成した、古墳シスターズ。今年4月には初の全国流通アルバム『スチューデント』をリリース。その後に控えていた全国ツアーは中止になってしまいましたが、リリース後の反響などはありました?

松山 航(VoGt):分かりやすい反響はオリコンチャートというもので、アルバム90位にチャートインしました。でも、なんせ僕らはライブハウスで感触とかを確かめているところがあるので、ツアーができなかったことで、あまり届いてる実感が無かったんですよね。

――でも、いまはSNSとか便利なものもあるじゃないですか。

松山:そうですね。いわゆるエゴサーチをして、意外とみんなアルバムが出たことに感動してくれてるのが分かったのは嬉しかったです。僕らとしては集大成というより、ここからスタートという気持ちだったんですけど。ずっと応援してくれてた人は“やっとたどり着いたんだね!”って喜んでくれていましたね。

――アルバムリリース後、ツアーができなくなった時の気持ちはいかがでした?

松山:シンプルに、バンドをする意味、音楽をする意味まで考えてしまいました。結果的には“またイチからやろう”って前向きな気持ちになれたんですけど。家に貼ってあったツアー予定日にその日が来るたびにバツをしたり、ツアーができないことは4人とも落ち込んでました。まぁ、そもそもが古墳シスターズってこれまでも基本、逆境で。そんなに良い事態に恵まれたこともないので、普段通りと言えば普段通りですけど(笑)。

ラース(川村直生/Dr):アルバムがリリースできたという事実が無かったら、もっと落ち込んでたでしょうね。リリースはできたので、エゴサーチすることで日本全国に伝わってることも分かったし、タワーレコードさんとか、CD店舗さんが協力してくれてるのが嬉しかったし、救われたところもあって。“色んな土地で聴いてくれる人がいるんだ”というのが感激でした。

小幡隆志(BaCho):僕は普段、地方にライブに行っていて、香川県にずっといるってことがほとんどなかったので。新鮮な気持ちもありましたし、この期間に色々取り入れようっていう気持ちになれました。普段やらない釣りとかやったりして(笑)。

松本 陸弥(Gt、Cho):僕はツアーが一本もできなかったのが本当に悔しくて、“ツアーに出て色んな人にライブを見せるまでは、絶対にやめられないな!”と思いました。もちろん元からやめるつもりはないですけど!(笑)。

――なるほど。それぞれ悔しさはありながら、前向きな気持ちになれたんですね。

松山:そうですね。古墳シスターズとしては落ち込むこともなく、“むしろやってやる!”みたいな気持ちになれて。良くも悪くも楽観的なところが出ました(笑)。

■カッコ良く言えば“不器用”とか言えるんですけど、対人間じゃないと何も生み出せない。色んな意味でライブバンド。現場主義、現場にいるバンドです。

――SPICE初登場ということで、どんなバンドなのか? というところも聞きたいのですが。ここまでの集大成であり、ここからのスタートである1stアルバムを完成させて、自粛期間はバンドとしっかり向き合う時間もあって。改めて考えた時、古墳シスターズってどんなバンドだと思いましたか?

松山:顕著に思ったのは、ライブバンドなんだなってことですね。ライブが無かったら、まぁひどいもんだなというのは思いました(笑)。

小幡:この期間、配信ライブやライブハウスのYouTubeチャンネルに出演させてもらったんですけど。トークする番組に出ても松山しか喋れなくて、僕らは喋りより演奏していた方がいいなと思いました(笑)。

松山:それも現場で生身で感じないと分からないことも多くて、つくづく使い勝手の悪い集団だなと思いますね(笑)。カッコ良く言えば“不器用”とか言えるんですけど、対人間じゃないと何も生み出せないし。どんなバンドか? と言われたら、色んな意味でライブバンドというのが一番しっくりくるのかなと思います。現場主義、現場にいるバンドです。

小幡:でも、もちろんCDや曲もすごく重要で。こんな時期でライブが無くても愛して貰えたのは、曲が遠くまで届いたからだと思うし。僕は途中加入ですけど、古墳シスターズの曲が好きで、曲を愛してるから今があると思うし。

松山:そう、曲もいいバンドです!(笑) パンクバンドだって言ってるんですけど、聴いた人がすぐに口ずさめる歌というのを常に意識していて。曲というよりは、歌が在り続けることを体現しているバンドです。

――だから、歌詞を書くのもすごく時間をかけてこだわっているし。

松山:そうですね。歌詞は伝わってなんぼ、みたいなところがあるので。僕らのやりたいことを優先するというよりは、もっと根源的な気持ちとか雰囲気といったものを伝えたくて。曲にはそれも詰め込んでいるし、それを伝えるのに一番手っ取り早いのがライブだと思っていて。生産性の低いバンドですけど、そういうのを大事にしていきたいと思ってます。

――ライブという形で直接届けられなかったけど、アルバムで曲だけでも届けられたのはすごく良かったですよね。

松山:そうですね。みんな家にいる時間が増えて、アルバムもたくさん聴いてもらえたと思うので。タイミング的にはすごいギリギリだけど、届けられて良かったです。「スチューデント」っていう曲は、期せず色々感じてもらえる曲になったので、すごく良かったなと思うし。いまできることを詰め込めば、ちょうど良くなるっていうのが感覚として分かったんです。

――いま、このタイミングで届けられたことにちゃんと意味があったと。バンドとしては追い風が来るかと思っていたら、とんでもない向かい風が来ちゃいましたけど。それも後々考えたら、“あの時の向かい風はこういう意味があったんだ”思うかも知れないし。神様が“まだ調子に乗んなよ!”って言ってるのかも知れないし(笑)。

松山:4人の中でもその話にはなりました。“ちょっとやり過ぎたかな?”って(笑)。

■人間、暇になっちゃうとろくなこと考えないし。まずは暇であってはいけないと思って、“とりあえず大きい声だそう。ウェ~~イ!”みたいな(笑)。

――あはは。そんな中、完成した両A面シングル「古墳シスターズの夏休み2/シロガネ」ですが。これらの曲はアルバム以降にできた曲になるんですか?

松山:「古墳シスターズの夏休み2」は僕が作った曲で、「シロガネ」は松本くんが作った曲なんですが。「~夏休み」は結成して間もない頃に一回作って、ほぼ形はできていた曲をあえて形も変えずに出して、「シロガネ」は全く新しい新曲です。

――「シロガネ」は香川のライブハウス支援を目的に作ったV.A『Sanuki Loves You vol.2』収録のために作った曲でもあるんですよね?

松本:そうです。シングルバージョンは、ギターを足して重厚にしたりしました。

松山:よりパンクになってます。CDを買った人にだけ分かるウルサさとか、そういう差を付けるのも面白いかなという遊び心で演ってます。

――自粛期間の曲作り作業ははかどりましたか?

松本:いや、その逆で。やっぱり外に出て、色んな人に会ったりライブを見たり、新しい刺激が無いと曲ができないなと思いました。

松本:僕もそんな感じでしたね。今回、夏休みの曲を作っちゃったんですけど、リリースの時期を考えると間違えちゃったなと思ってて(笑)。プロデューサーのU太(四星球)さんに言ったのは、“申し訳ないですけど、いま夏を感じちゃってまして。いまの気持ちじゃないと曲ができないんで、分かってはいるんですけどこういう形になりました”って。

――“秋口の発売だということは分かってるんですけど……”と(笑)。

松山:はい、そういう作り方ができないんですよ。お客さんのことを考えたら、そうするべきだと思うんですけど。自分のパッションや直情的な思いは何より優先すべきだと思ってしまうので、今回はそうなってしまいました。

――いやいや、今年なんて夏を感じられなかった人も多いと思うので、この曲を聴いて夏を取り戻してもらうというのも良いと思いますよ。

松山:そうですね。僕ら的にはコロナとか関係なく、曲を出したいなと思って。音楽をやってる人は色んなことを思うんでしょうけど、僕は普段から思ってることを出すべきだなと思ったので。状況は関係なく、いま出したいなと思った2曲です。

――なるほど。「古墳シスターズの夏休み2」ということで、1はどこにあるんですか?

松山:7年前くらいに作った曲で自主制作盤の1枚目に収められているんですけど、とても聴けたもんじゃないです(笑)。まず誰がボーカルで誰がコーラスかも分からなかったので、今回はそこを整理したり。当時のアレンジも借りながら、29才になった現在のバージョンで歌詞も書き直して、どんな曲になるかな? という想いで作ってみました。

――なるほど。そこで《今年で立派な29歳 愛犬マリーも16歳》とか、《僕はバンドマン君はお母さん》みたいな歌詞も意味を成してくるんですね。

松山:そうです。元のバージョンの時はもっと若かったですからね。今こそ、なんかバカらしいことがやりたいなと。この状況下で古墳シスターズまで真面目に考える必要はないなと思ったし、そういう立ち位置がいいなと思ったんです。

――いや、大事だと思います。“古墳シスターズを聴いてる時は能天気でいられる”みたいな息抜きもないと。みんな揃って大真面目だったら辛気臭くてやってられないですよ。

松山:そうなんですよ、自分たちまで落ち込んじゃいますからね。人間、暇になっちゃうとろくなこと考えないし、言い出さないので。まずは暇であってはいけないと思って、“なんかしなきゃ、とりあえず大きい声だそう。ウェ~~イ!”みたいな(笑)。そこにメッセージはないし、そういうところも楽しんでもらえればと思います。

――でもそこに今だからこその歌詞が乗っかってとか、こうして完成までの経緯を聞くとより楽曲を楽しめると思います。

松山:アレンジに関してはほとんど変えていなくて、一番力を入れたのは冒頭の風鈴の音でした。本来、力を入れるところじゃないと思うんですけど。最初はラースの楽器を鳴らす音から始まって、ストイックに音を追求していって。意味があるかは分からないですけど、そういうこだわりこそ大事なんだろうなと思って。音源を売るというよりは、風鈴を売るくらいの気持ちでこだわりました(笑)。

ラース:風鈴とか花火の音といった、一番ストイックにこだわったところは僕も付き合わされたんですけど。4人が一番、熱が入った瞬間でした(笑)。これじゃない、これじゃない、と言いながら色んな楽器を鳴らして、みんなが納得する音を作りました。

――なるほど(笑)。では、「シロガネ」についてもお話を聞かせて下さい。

松本:この曲は僕がゲームをしてる時に思い付いたんですけど。ストーリー性のあるゲームが好きで、“ここに自分でテーマソングを付けるなら?”と思って考えました。ゲーム終盤になると、戦って仲間が傷ついて、みたいなことがあるんですが。自分がパーティーの中にいる時、死にかけた仲間にどんな言葉をかけてあげられるだろう? と想像して、そうなった時でも優しくできるように、今のうちに作っておいた曲です。

松山:僕はその説明を聞いても全く意味が分からないんですけど(笑)。そこが松本くんのオモロさだし、だからこそ歌いたいと思った曲ですね。

松本:何度も歌い重ねていくと、しっくりくると思いますよ。スルメ曲です。

――いや、俺も“ゲームをしてる時”って説明が始まった時にムカつきました。《白くなったあなたの髪を 歌いながら梳かしてあげる》って歌詞とかに、永遠の愛を感じてグッと来た、あの気持ちを返して欲しいです(笑)。

松本:あはは。全部、妄想からできてる曲ですから(笑)。あとはみなさんご自由に聴いていただければ良いです。

――グッと来るのも感動するのも、聴く人の自由だと。小幡くんとラースくんは今回の収録曲に関していかがですか?

小幡:「~夏休み2」は結成当初、僕はお客さんとして見ていた曲で。今回、自分も混じえて録れるのがすごく嬉しかったです。「シロガネ」は最初聴かせてもらった時、優しい曲だなと思って。自粛期間中に聴いた色んな音楽もベースラインに落とし込めた自信もあって、満足しています。

ラース:僕は「シロガネ」の曲の優しさを、どう荒々しく表現できるかにこだわってみようと思って。心の奥底まで届くように、僕のプレイスタイルを存分に爆発できたと思っています。「~夏休み2」は最初、違う曲を録る予定だったんですけど。レコーディング直前、ドラムを録る20分前くらいに“やっぱり「~夏休み2」を録ろう!”って急遽変更した曲で。僕も少し動揺しながらのレコーディングだったんですけど、だからこそストレートに考えすぎず、無駄が削ぎ落とされたドラムが録れたと思ってます。

松山:そう、レコーディング直前にU太さんに電話して、“やっぱり曲を変えます!”って話して。「~夏休み」がどういう曲か説明しなきゃいけないから口頭で歌詞を伝えているのを、U太さんは“ほぅ”とか“へぇ”とか言うて聞いてくれて。“……どうですか?”って聞いたら、“ええんちゃうか”って言うてくれたんですけど、ホントかな?と思って(笑)。あれはすごい思い出に残ってますね。

――あはは。歌詞や内容より、松山くんの熱い思いが伝わったんじゃないですか?

松山:いても立ってもいられずって感じだったんで、そうかも知れないですね。

小幡:あと、「~夏休み2」のMVを撮ったんですけど、それも白バックで良い感じで。

松山:あれね、“イケてるバンドはMVを白バックで撮ってる”って聞いて撮ったんですけど、全然イケてなくて(笑)。

――あはは、そんなこと無かったですよ。シンプルにバンドの良さが伝わりましたよ。

松山:本当ですか? もうちょっとスマートな感じになるかと思ったんですけど、やっぱりゴテゴテになって、僕たちらしいなと思って。白バックくらいじゃ誤魔化せないなと思ったんですけど、新しい試みになったので楽しんでもらえればと思います。

――白バックってシンプルだから、バンドの底力が試されるんじゃないですか?

松山:なるほど、浮き彫りになるんですね。そういう意味でも、僕たちはビジュアルで売ってないんだなというのを改めて思ったし。やるべきことは別にあると思いますね(笑)。ま、そういう意味でも“らしさ”を感じて、良かったですけどね。

――でも結果、この2曲で古墳シスターズの違った魅力が見える良い選曲になりましたね。

松山:極端に変えてみたいなというのはあったので、僕らもちょうど良い感じになったなという気がしてます。いまできる最良の形だと思うので、自信満々で聴いて貰える作品になりました。

――さらに今作は配信無しのCDのみ発売で、“死ぬほど豪華な特典DVD”も付いてます。

松山:常々言われているように、CDの存在意義は考えさせられるところなんですけど。我々は、いい悪いじゃなくてCDで出したい、CDを作りたいだけなんです。DVDも出すのが初めてなので、お客さんと一緒に発売が楽しめる感じで。DVDは編集もほぼ無いのでライブ感があると思うし、CDにはない未完成の良さがあると思うので、そこを見てもらいたいです。

――11月からはリリースツアーの振替公演が決定しています。紙資料にも「開催できますように……」と書かれていますが、何事もなく叶うといいですね。

松山:まぁ、僕らは開催できる前提で動いてないと、いざという時に何もできないので。お客さんを目の前にした時に何を言うか、何をするかだけ考えておけば良いと思っていて。普段通り自分の生活をして、自分のやるべきことをやろうと思ってます。

小幡:とは言え、コロナ感染予防対策も万全で臨みますので、安心して遊びに来て下さい!

取材・文=フジジュン

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