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「技術者としては目立たなくていい」エンジニア芸人が沼るデータの世界【ZOZO・奥山喬史/下町モルモット・ぽこやかざん

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「技術者としては目立たなくていい」エンジニア芸人が沼るデータの世界【ZOZO・奥山喬史/下町モルモット・ぽこやかざん

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企業が持つデータ量が爆発的に増加し、その活用方法が企業の命運を左右する時代となった。今回登場するのは、そんなデータ活用の最前線で活躍するデータエンジニアである奥山喬史さんだ。

奥山さんは、普段はZOZOでデータ基盤の開発・運用に携わっているが、もう一つ、お笑いコンビ・下町モルモットを結成し、「ぽこやかざん」という名前で活動する芸人としての顔も持つ異色のキャリアの持ち主。

まずは、奥山さんのキャリアを深掘りしていこう。

株式会社ZOZO
データエンジニア・データ基盤エンジニア
奥山喬史さん(@pokoyakazan)

学生時代は情報理工学科にて、自動運転の研究に没頭する。大学院卒業後は新卒入社した企業でデータエンジニアとしてデータ基盤の運用業務に従事。2022年2月より株式会社ZOZOにジョインし、それまで同様データエンジニアとして従事するかたわら、お笑いコンビ「下町モルモット」として活動するほか、「ぽこやかざん」として大喜利や深夜ラジオへのネタ投稿などにも取り組んでいる

「縁の下の力持ち」にやりがいを見出した芸人エンジニア・奥山喬史

新卒でデータエンジニアとしてのキャリアをスタートし、現在もZOZOでデータ基盤を支えているという奥山さん。SaaSやデータベース、ログなど、「データ」と名の付く全てを業務範囲とし、ZOZOのデータ活用を支える重要なポジションを担う。

学生時代は機械学習やAIを専門領域としていた奥山さんがデータエンジニアとしてのキャリアを歩み始めた理由は、意外なところにあった。

奥山さん:もともと部署を横断して働くようなポジションに就きたいと思っていたんです。どの部署にもそれぞれの良さがあって、一つの部署に決めがたかったのもありますが、いろんな部署の人と関わりながら働きたくて。

そんな時、たまたまデータ基盤に触れる機会があって、データクレンジングやデータプロセッシングを行ううちに「この作業ってデータ活用における根幹では?」と感じるようになり、データエンジニアという仕事を意識するようになりました。

本業ではデータ基盤を下支えするポジションでありながら、時には舞台に立ち、人前で漫才を披露する芸人としての一面も持つ奥山さん。エンジニアとしても目立つ仕事をしたいと思いませんか? と問い掛けると、次のように答えた。

奥山さん:エンジニアとして目立ちたいとは思わないですね。僕はどちらかというと「もくもく」タイプなので、自分が作ったものを周囲のメンバーが活用してくれることが何よりも嬉しいんです。

データエンジニアとしての自分なりのやりがいを語る奥山さん。しかし、実際にデータエンジニアになる前は、この仕事に対して異なる印象を抱いていたという。

奥山さん:昔はデータエンジニアに対して研究者のようなイメージを抱いていました。最初の頃は僕自身も、自分の仕事が会社の成長にどうつながっているのか、実感がなかったように思います。

それがここ数年で、急激に「ビジネス拡大においてはデータが重要だ」という意識が広がってきました。それに伴って、データエンジニアが各部署のプロフェッショナルと連携してパフォーマンスを発揮する機会も増えていったんです。データエンジニアとしてキャリアを積んできて、今が一番楽しいですね。

「なぜやるのか?」目的と課題の深掘りがエンジニアとしての成長につながった

「今が一番楽しい」という奥山さんだが、ここに辿り着くまでの道のりは決して平坦ではなかった。

奥山さん:一番しんどかったのは、新卒時代に経験したデータ基盤の移行プロジェクトです。基盤上にある全てのデータをオンプレからクラウドに移行するもので、既存システムの仕様把握から技術選定のためのインプット、ユーザーとの折衝やスケジュール管理など、あらゆる面においてストレッチしました。

中でも一番の成長は、「プロジェクトに対する意識が変わったこと」だった。

奥山さん:僕が入社した段階で既に動き出しているプロジェクトだったこともあって、「なぜやるのか」という目的や課題を深掘りしないまま作業をしてしまっていました。

でも、自分の中で目的が定まっていないと、ぼんやりと手探りで進めていくことになる。結果、無駄な工数が増えて自分自身も疲弊するし、コストも膨らむし……。全ての効率が悪くなるんです。

当時の経験を通じて、奥山さんは「プロジェクトの意義や課題をしっかり理解すること」が自分にとっても会社にとってもプラスに働くということを学んだ。その学びが実を結んだのが、ZOZOに入社してから携わった移行プロジェクトだ。

奥山さん:データマート集計基盤をDigdagからCloud Composer(Airflow)に移行するプロジェクトだったのですが、なぜAirflowなのか、それがどうコストカットにつながって、どれくらい会社に貢献することになるのかなど、とにかく課題を深掘りして上長とすり合わせました。

「何を実現するのか」をはっきりさせた上で「これを実現するならこのツールしかないよね」というプロセスを踏んだ結果、エンジニアの負担はかなり軽減されたと思います。

プロジェクトの意義が見えなくて疲弊するーー身に覚えのあるエンジニアは少なくなさそうだ。そこで「辛い」「しんどい」という気持ちばかりが先行してしまうケースは珍しくないだろう。

そんな時、どうやってつらさを乗り越えたらいいのだろうか。奥山さんなりのコツを聞いた。

奥山さん:新卒時の移行プロジェクト以外にも「思い通りに行かなくてしんどい」という経験はいくつもありました。そんな時は「なんでこんなに辛いんだろう?」と考えるようにしたんです。

すると、自分には行き当たりばったりで手を動かす癖があることに気が付いて。「次のプロジェクトはもう少し目的意識を持って取り組もう」と挑んでみる。でも、まだ何かが足りない感覚がある。それが何かを考える……といったサイクルを繰り返していきました。

日常的なメタ反省会。これが奥山さんをブレイクスルーさせたものの正体だ。

次回は、エンジニアとしてどのように成長を積み重ねているのか、その実態を探る。芸人という一面を持つ奥山さんらしい成長ノウハウが満載だ。

※本記事は聴くエンジニアtypeオリジナルPodcast『聴くエンジニアtype』#75、#76をもとに執筆・編集しております

文/赤池沙希 編集/秋元 祐香里(編集部)

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