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コンプレックスから職業選択したら、臨床心理士に行きついた話。

はたわらワイド

はたわらワイド編集部が、世に発信されているさまざまな個人のはたらき方ストーリーの中から、気になる記事をピックアップ。今回は、長年抱えていたコンプレックスからやりたい仕事を見つけたエピソードをご紹介します。

現在臨床心理士としてはたらくオマメさんは、ユニークなお兄さんと自分を比較してコンプレックスを抱いていたと言います。「これだ!」と思える夢を見つけられなかったオマメさんが、臨床心理士を選んだ理由をnoteに投稿しました。

※本記事の引用部分は、ご本人承諾のもと、投稿記事「自分が臨床心理士になったわけ。コンプレックスは職業選択の役に立つ!」から抜粋したものです。

幼稚園のころの夢は「ポケモンのジョーイさん」

『大きくなったら何になりたいですか?』

子どものころはシンプルに答えられた人が多いだろう質問ですが、大人になるにつれて悩むようになった人もいるのではないでしょうか。

臨床心理士のオマメさんは、

「大きくなったら何になりたいですか」という質問は、「大きくなったら何かになるものですよ」という前提のもとに成り立っている。

つまり、私たちは、人生のだいぶ初期から、「大きくなったら何かになるものだ」という意識を、無意識に刷り込まれるのではないだろうか。

「自分が臨床心理士になったわけ。コンプレックスは職業選択の役に立つ!」より

と語ります。

そんなオマメさんも、幼少期は何一つ疑わず「大人になったら何になろうかなぁ…」と悩んでいたそうです。

幼稚園でこの質問をされたときは、「ポケモンのジョーイさん(ポケモンを預かり治療する医師)になりたい」と考えていたそうです。

その夢は、小学校で「ファッションデザイナー」になり、高校では「大学の経営学部」になり……成長するにつれて、より現実的なものに変わっていきました。

そこから臨床心理士を選んだ理由はいくつかあると言います。まず1つは「専門職への憧れ」

一つのことを突き詰められる職人さんはイカしてると思っていたし、自分もなにかの極みに達したいという気持ちがあった。

「自分が臨床心理士になったわけ。コンプレックスは職業選択の役に立つ!」より

幼稚園生のころに掲げた夢「ポケモンのジョーイさん」も、ポケモンの治療をする医師であり、専門職です。オマメさんは幼稚園でもほかの子の面倒を見るのが好きで、ケアしたいタイプだったそう。

弱ったポケモンを回復させるジョーイさんは、丁度いいロールモデルとして映ったのだ。(当時、手塚治虫のブラックジャックも好きだったが、医者は厳しいイメージがあってやめた)

専門職への憧れは卒園後もずっと尽きず、『なにか自分が極められるものを見つけたい』という気持ちは、後年持ち続けることとなった。

「自分が臨床心理士になったわけ。コンプレックスは職業選択の役に立つ!」より

「ポケモンのジョーイさん」と聞くと突拍子もない子供らしい夢のように思えますが、幼少期から現在につながる意欲があったことがわかります。小さいころの夢には、見えない願望が潜んでいるのかもしれません。

個性が欲しくて「ファッションデザイナー」に憧れた

オマメさんが抱いている「個性(独自性)へのコンプレックス」も、臨床心理士を選んだ理由だと言います。そのコンプレックスは、兄弟関係から生まれたものでした。

私の兄は、とてもユニークな子供だった。

額にはハリーポッターのようなストロベリーマークを持ち、首の真後ろには等間隔の黒子が3つ並び、つむじが2個あった。

幼稚園の卒園式、兄は、『大きくなったらオオスズメバチになりたいです』と言って、先生を絶句させた。

私はジョーイさんという没個性的な選択をしたのに、彼はオオスズメバチを選んだのだ。

「自分が臨床心理士になったわけ。コンプレックスは職業選択の役に立つ!」より

ほかにもユニークなオリジナル作品をたくさん生み出していて、オマメさんはそんなお兄さんに対して妬みやもどかしさを抱き『自分にだって、世界に1つしかないオリジナリティはある筈だ!』と個性に執着するようになった結果、小学生のときの夢が「ファッションデザイナー」になったそうです。

ファッションデザイナーは臨床心理士と遠い職種に思えますが、いずれも個性にかかわるものです。

デザイナーは、クライエントに合わせてデザインを考える専門職だ。

アーティストよりも他者性があり、クライエントの心のあり方をデザインする、と考えれば、臨床心理士にも通ずるところがある。

他者をケアする専門職(ジョーイさん)から、他者の個性をプロデュースする専門職(ファッションデザイナー)へと、憧れが発展したのだ。

「自分が臨床心理士になったわけ。コンプレックスは職業選択の役に立つ!」より

そう考えると、オマメさんの夢の変遷には一貫性があります。そして、この個性(独自性)へのコンプレックスを活かす仕事を目指すようになります。

過去の選択が「自分らしさ」を作っている

他者の個性に興味を持つようになったオマメさんは、「その人らしさが一番に輝いている瞬間」を見ると興奮する「自己実現フェチ」になったと言います。

例えば、事務が好きで得意な人が営業に回されてどんよりしていたら、もどかしいなと思った。好きでしょうがないんすわ!という顔で何かを熱中してやっている人は、美しいと感じた。

「自分が臨床心理士になったわけ。コンプレックスは職業選択の役に立つ!」より

そこで「適材適所で人が輝けるように、マネジメントの勉強をしよう」と考え、大学進学時に選んだのが経営学部。ところがいざ経営の授業を受けてみると、出てくるのはお金の話ばかり。人の話はほとんど出てきません。望んで入ったはずの経営学部の授業に興味を持てず、寝てばかりいたと言います。

そんなオマメさんの救世主となったのが、たまたま出会った臨床心理学の教授です。

臨床心理学は、人間の「個別性」を重視して、個々人の自己実現を考える学問だった。

そして、その学問に基づいて心の援助をする、臨床心理士という仕事を知った。

「自分が臨床心理士になったわけ。コンプレックスは職業選択の役に立つ!」より

日本臨床心理士資格認定協会のHPには「臨床心理士は、人(クライエント)にかかわり、人(クライエント)に影響を与える専門家です。しかし、医師や教師と異なることは、あくまでもクライエント自身の固有な、いわばクライエントの数だけある、多種多様な価値観を尊重しつつ、その人の自己実現をお手伝いしようとする専門家なのです。」と書いてあります。

臨床心理士という仕事に出会ったオマメさんは、ようやく「これじゃないか?」と感じます。それから心理学部の履修を1から取り直し、統計の勉強をし、大学院を出て、臨床心理士になりました。

こうして振り返ってみると、バラバラのように思えた夢はすべてつながっていて、現在の臨床心理士という仕事に収束しています。事実、現在のオマメさんは「あの選択をしたから今がある」と思えるそうです。

正直、"いま"に納得していれば、過去の選択はすべてそう思える様になるのではないかと思う。

「自分が臨床心理士になったわけ。コンプレックスは職業選択の役に立つ!」より

かつてはお兄さんの個性に憧れていたオマメさんですが、臨床心理士としてさまざまな人の個性に触れるなかで「世界に1つしかないその人らしさ」は、万人が己の中に持っているものだと確信できるようになったと語ります。

やりたい仕事や夢が見つからずキャリア迷子になってしまったら、小さいころの夢やこれまでの選択を振り返れば、揺らがない「世界に1つしかない自分らしさ」が見えてくるかもしれません。

<ご紹介した記事>「自分が臨床心理士になったわけ。コンプレックスは職業選択の役に立つ!」【プロフィール】オマメの心理部屋都内の臨床心理士です。言葉を磨くべく参戦しました。心理的な日常の見方、考えたことなど発信していきます。リアクションいただいた方の記事は必ず拝見してます。Instagramで食のエッセイ、Twitterで自由律ハイカー。どうぞよしなに!

(文:秋カヲリ)

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