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脳卒中を患った後に在宅でできるQOL向上の考え方

「みんなの介護」ニュース

森田亮一

【科目】介護✕リハビリ  【テーマ】脳卒中からのリハビリにおいて大切なQOL向上の考え方

【目次】

まずは価値観の違いを理解する
脳卒中を患って退院した後でも機能を回復する可能性はある
機能回復以外の「その人らしい生活」のヒント

理学療法士兼webライターの森田亮一です。

脳卒中を患った後の在宅生活は多くの不安があることと思います。現実的に、脳卒中を患ってからの期間や個人の特性などによって回復の可能性には差があり、リハビリをしても機能の「維持」が難しいケースもあります。

また、QOL(生活の質)の向上を考えるのであれば、機能の維持・回復だけを考えるのではなく、より広い視野で生活を総合的に捉える必要があります。

今回は脳卒中になった後、在宅で出来るQOL向上の考え方を解説します。

まずは価値観の違いを理解する

QOLは「生活の質」を意味します。より具体的に説明すると「その人にとって自分らしい生活」といった意味になるでしょう。自分らしい生活を考えたとき、人によって目指すべき生活は異なります。

同じ疾患を患っている高齢者であっても、個人の価値観や家族構成などによって「生活の質」は異なります。

人生経験が大きく異なる高齢者は、「生活の質」に対する考え方に大きな違いが生じます。

「その人らしい生活」は、本人の人生経験でしか語れない側面があります。大切にしている物や人間関係を含め、価値観はそれぞれです。

例えば、週1回友人との合唱会を楽しみにしている方もいるでしょうし、畑で野菜を栽培して毎日手入れをすることに楽しみを感じている方もいます。

QOLの高い生活を送るためには、こうした価値観の優先順位を把握することが重要になります。

脳卒中を患って退院した後でも機能を回復する可能性はある

脳卒中(脳出血や脳梗塞)を患った後、在宅でリハビリを開始する際に、「維持期」という言葉を耳にする機会があります。

「維持」とありますが、障がいのある方の能力や生活が維持される時期ではありません。

在宅リハビリの段階を示す言葉には、「維持期」だけでなく、「慢性期」や「生活期」といった表現も用いられます。

急性期・回復期・慢性期とは

これらの表現を「社会保障審議会医療部会」と「病床機能情報の報告・提供の具体的なあり方に関する検討会」によって整理された情報を元に解説してみましょう。

急性期 状態の不安定な患者に対して、状態の早期安定化に向けて医療を提供する。 回復期 急性期を経過し、ADL(日常生活動作)の向上や在宅復帰を目的としたリハビリテーションを集中的に提供する。 維持期(慢性期・生活期) 長期にわたり療養が必要な患者を看る。

参考:新潟県ホームページ「医療機関(高度急性期、急性期、回復期、慢性期)について」

急性期の時期を過ぎて自宅に帰った場合、一般的に「維持期リハビリテーション」と呼ばれる介護保険サービスを受けることがあります。しかし、維持期のリハビリテーションを利用していても、回復経過の時期としては「回復期」に行うリハビリを行われることもあります。

この「維持期リハビリテーション」と呼ばれるサービスを利用していても、機能維持だけ目的とせずに機能回復を図れるのです。

脳卒中における一般的な回復の過程

脳卒中を患った後、一般的にどのように回復していくのでしょうか。脳卒中を起こした際、出血や梗塞の生じた場所によって症状は異なります。いわゆる片麻痺と呼ばれる症状が生じた場合、その回復は一般的に「機能回復曲線」を用いて説明されます。

「機能回復曲線」は、脳卒中発症後から発症1ヵ月後までは急激に機能回復し、そこから発症後3ヵ月後まで少し緩やかに機能が回復していきます。

そして、発症後6ヵ月後までは、さらに緩やかな機能回復となり、6ヵ月以降は停滞期(プラトー)になるとされています。

近年、脳卒中を引き起こした後、5年が経過した症例や10年が経過した症例であっても機能向上が認められる事例が報告されています。

しかし、すべての方が同じように回復するとは限りません。患者の個人特性や環境にも左右され、個人差があることは頭に入れておかなければなりません。

機能回復以外の「その人らしい生活」のヒント

機能回復は、生活において重要なポイントになるとは思いますが、それだけがQOLの向上を図る唯一の方法ではありません。

さまざまな補助道具などを用いながら目指す生活を達成できるのであれば、たとえ機能が回復していなくても、QOLの向上につなげられます。

例えば、歩行が上手くできないために自室にポータブルトイレを設置して排泄をしている患者さんがいたとしましょう。その方から「自宅の水洗トイレに行きたい」という希望があったとき、歩行ができずとも車椅子を利用して一人でトイレができるのであれば、それは生活の質を向上させることができたといえます。

在宅の環境によっては、車椅子からトイレまでの動線である廊下やトイレの幅などが問題になることもあります。住宅環境が問題になる場合は、住宅改修の工事をして環境そのものを変えて目的を達成する方もいます。

ほかにも、腕の機能に障がいがあり、パソコンをうまく操作できない方がいた場合、電動ベッド上で姿勢を安定させたうえで、パソコンの高さを調整できる置き台を用意すれば、パソコンをある程度操作できるようになります。

「その人らしい生活」をなるべく達成するために、機能回復が重要であることに変わりはありません。しかし、環境の整備や介護サービスなどを含めて、価値観に沿ったその人らしい生活を総合的に考えていくことが大切です。

脳卒中を患った後の自宅での生活には不安がつきまとうかと思います。しかし、維持期や慢性期という言葉に落胆する必要はありません。

「その人らしい生活」を達成するためには、何もかも「以前と同じ」である必要はありません。もし対応が難しいと感じている場合は、ケアマネージャーなどの専門家へ相談することも視野に入れると良いでしょう。

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