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伊藤銀次と山下達郎がキングトーンズに書いた DOWN TOWN、遅すぎた別れ、愛のセレナーデ

Re:minder

1982年06月00日 フランク永井のシングル「WOMAN / 愛のセレナーデ」発売日

伊藤銀次、山下達郎が作った奇跡の1曲「DOWN TOWN」


ここ近年、予想もしなかったシティポップブームがやってきて、ふたたび1970年代の僕たちの作品が注目されているのはうれしい限りだが、その中でも、まだシュガー・ベイブでデビュー前の山下達郎君と、ココナツバンクでデビューし損ねた僕が1975年にいっしょに作った「DOWN TOWN」は、昭和の時代に生まれ、平成、令和とたくましく生き残ってきて、いまだに誰かにカバーされている人気曲。まさに奇跡の1曲なのだ。

すでにいろんなところで語ってきたので、ご存知の方も多いと思うが、実はこの曲は、キングトーンズの何周年か忘れたけれど、その結成周年記念のアルバムのために、2人が依頼を受けて書き下ろした3曲の中の1曲。当時の僕たちにとって初のメジャーなアーティストからの依頼にはりきって作ったものの、結局、アルバムの企画自体がなくなって、なんと曲たちが僕たちの手元に戻ってきたのだった。

ちょうどシュガーベイブのファーストアルバム『SONGS』のレコーディングがまもなく始まるという頃。どうしたもんかと困っていたら、山下君はこの3曲のうち「DOWN TOWN」をアルバムに入れたいとのことだったが、残りの2曲はそのままオクラ入りになってしまった。

「ナイアガラ・トライアングル vol.1」に収録した「遅すぎた別れ」


その残った2曲とは、「遅すぎた別れ」と「愛のセレナーデ」。当時はやっていたバリー・ホワイトのような低音による語りをキングトーンズのバスの人にやってもらおうと考えて作ったのが「遅すぎた別れ」というソウル・ワルツ。デモテープでは語りを僕がやり、サビで山下君が朗々と歌い上げるという二重の構成。ちょうど1年後、大滝詠一さんからの提案で、大滝さん、山下君、僕の3人で『ナイアガラ・トライアングル vol.1』というユニットをやることになり、予感として、僕と山下君が何か一緒にやれる機会はこれが最後のような気がして、山下君と相談の上、オクラになっていたこの「遅すぎた別れ」をアルバムに入れることにした。

そしてもう1曲の「愛のセレナーデ」は、当時気にいってよく聞いていたマーヴィン・ゲイの「Distant Lover」の詩の内容からインスパイアされ、今でいう “遠距離恋愛” をテーマに、山下君にイメージを伝え、メロディーを書いてもらったラブバラード。前出の2曲もそうだけど、若干22、3歳の若造が書いたメロディとは思えない成熟した美メロ。すでに山下君の才能がはっきり表れている作品だった。

こうして、キングトーンズのために2人が書いた3曲のうち2曲はなんとか世に出ることとなったのだけれど、「愛のセレナーデ」だけは、そのまま使われることなく、僕の記憶からも失せて消えようとしていた。

「愛のセレナーデ」がフランク永井「WOMAN」のカップリングに


そして、1982年、久しく会っていなかった山下君から突然の電話が。ご無沙汰の挨拶もそこそこに山下君が切り出したのは、なんと彼がフランク永井さんのために「WOMAN」という曲を書き下ろしプロデュースするといううれしいニュース。

いやあすごいすごいと喜んでいたら、そこで山下君が、「むかし、キングトーンズのために2人で作った “愛のセレナーデ” って覚えてる? 実はあの曲を “WOMAN” のカップリングに入れたいんだけどいいかな?」という驚きのお知らせ。まさか、僕たちが作った曲を、子供の頃、よく巷に流れていた聞いた歌謡界のビッグスター、フランク永井さんが歌ってくれることになるなんて。想像もつかなかった出来事。もちろん二つ返事でOKしたよ。

これで山下君と書いた3曲はすべて日の目をみることになったわけだけど、最後の最後で、キングトーンズに書いた曲をフランクさんが歌ってくださることになろうとは。まさに ”Life Is A Mystery” だったのだ。 

音楽の神様の粋な計らい


この「愛のセレナーデ」には後日談があって、ラッツ&スターの低音ヴォーカル、佐藤善雄さんが、2015年に初のソロ・アルバムを出すときに、この曲をカバーしたいというお願いを直々にされた。佐藤さんにとってフランクさんは低音ヴォーカルの偉大なる大先輩、そこでこの曲を歌いたいという熱い気持ちが伝わってきたのでもちろんOKしたのだが、そのとき実はこの曲は山下君と僕がもともとキングトーンズのために書いた曲なんだということを教えてあげたら、佐藤さんはさらにもう大感激。

というのもキングトーンズはラッツ&スターにとっては、ドゥーワップという音楽ジャンルの大先輩。なんと光栄なことだととても喜んでくださったのだった。これはまったく偶然の出来事なのだが、僕にはどこか音楽の神様の粋な計らいがみえてくるようなちょっといいエピソードに思えてしょうがないのだ。

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