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高円寺の老舗酒場『和田屋』はなぜ愛され続けるのか

さんたつ

散歩の達人2026年8月号

巷では“高円寺の宝”とも呼ばれる、創業44年の老舗酒場『和田屋』。ファンも多く、現在もにぎわいは途切れることなし。愛され続ける店を守る店主に話を伺った。

和田屋(わだや)

愛され大衆酒場の変わらないともしび

店内にはびっしりとメニューが掲げられ、季節替わりの料理も豊富。お酒は焼酎だけでも120種類以上で、東京では珍しい銘柄もある。価格もリーズナブルで、大衆酒場の安心感が漂(ただよ)う老舗だ。

『和田屋』のルーツは、かつて麻布にあった定食屋に遡(さかのぼ)る。そこで働いた人たちが各地区で店を構えた「個人店」だが、看板には「チェーン店」の文字。店主の新沼さんは「スペースが空いたから入れたんじゃないか」と笑う。1982年の創業時は5歳。現在は両親と3人で店を切り盛りする。

「僕と父母の3人の家族経営です。普通に喋(しゃべ)っているつもりなのに、お客さんからは『ケンカはやめなよ』と言われます。家族ならではの距離感なのかもしれません」

味のあるメニュー表は新沼さんの手書き。

そんな家庭的な雰囲気もある店内には、芸人やプロレスラーなど、著名人のサインが数々並んでいる。

「コロナ禍で店を開けられなくなったとき、高円寺で暮らした芸人さんたちがテレビなどで名前を挙げてくれてたんです。彼らが売れるにつれ店も忙しくなりました」

若い世代にも注目され客層も広がり、メニューも増えた。それと同時に、昔からの常連も大切にする。

「転勤などで引っ越しても、東京に来た際に顔を出してくれる人もいます。ありがたいですよね。ピーク時はなかなか入れないこともありますが、実は今日この時間に来るかなという人のために席を空けておいたり。ここまで来れたのは常連さんのおかげでもあります」

豊富なお酒と料理。そして人々の居場所を守る姿勢。特別なことではないが、その気概こそが人々を引き寄せ続けるのかもしれない。

天然本まぐろの中落ち500円。新鮮な魚介類は中野の魚屋から仕入れる。
かつて裏メニューだったさばみそグラタン680円。

新沼さんは幼少の頃から高円寺で過ごし、店とともに街の変化を見続けてきた。

「街はだいぶ変わりました。小さい頃から知るお店も今は数軒しかありません。寂しさもありつつ、高円寺らしさは良い形で若い世代に引き継がれていると思っています」

時代に寄り添いながら、なびかず淡々と店を守り続ける。高円寺の一角で、今日も明かりが灯(とも)る。

左から亮さん、父・勉さん、母・富美代さん。“ケンカ”するほど仲がいい……?

『和田屋』店舗詳細

和田屋(わだや)
住所:東京都杉並区高円寺北3-2-19/営業時間:17:00~23:00/定休日:日・水(祝のある週は変更あり)/アクセス:JR中央線高円寺駅から徒歩2分

取材・文=石原たきび 撮影=佐藤侑治
『散歩の達人』2026年8月号より

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