Yahoo! JAPAN

「嫌なこと1つ」で全部台無しに!?すぐ不機嫌になるASDきょうだいを育てて気づいた「見守る」対処法

LITALICO発達ナビ

「嫌なこと1つ」で全部台無しに!?すぐ不機嫌になるASDきょうだいを育てて気づいた「見守る」対処法

監修:室伏佑香

東京女子医科大学八千代医療センター 神経小児科/名古屋市立大学大学院 医学研究科 生殖・遺伝医学講座 新生児・小児医学 博士課程

しょっちゅう不機嫌になってる……

うちの子どもたちは、週に3回くらい「とても機嫌が悪いな」と見て分かる状態になります。物に当たったり、大声で怒鳴ったりするわけではありません。ただ、見るからにムスッとして、話しかけても返事は「ああ」とか「うう」だけ。体育座りで固まっていることもあります。2人揃って不機嫌になると、家の中はどんより……。とても居心地が悪いです。

思えば、不機嫌になること自体、頻度が高いのです。

特に娘は1日に何度もふくれっ面になっています。メールやSNSでのやりとりの度に何か1つは嫌なことが発生するらしい。
パソコンの前でカチャカチャやっていたかと思うと、勢いよく立ち上がりベッドに倒れ「あ~~~~~!!!」とうめきます。何があったのか聞いても、説明してくれるわけではありません。

楽しかったはずの遠足なのに……

娘が小学生の頃のことです。
遠足から帰ってきた娘に「楽しかった?」と聞いたことがあります。

「楽しくなかった」

あれ?帰ってきたときはご機嫌だったのに?

理由を聞いてみると、「お弁当にレタスが入っていて、蒸れておいしくなかったのに、残さず食べなさいって言われて、食べさせられたから」とのことでした。

それだけ?と思い、「景色はどうだった?」「お友だちと遊んだ?」と聞いてみると、

「それは良かった」と言うのです。

どうやら、景色も良かったし、友だちと遊ぶのも楽しかった。でも、お弁当のレタスを食べさせられたのは嫌だった。だから「遠足は(全部は)楽しかった」とは言えないと言うのです。

多くの人は、楽しいことがいくつかあって、その中に嫌なことがちょっとくらいあっても、「まあ、いろいろあったけど、楽しかったかな」と、トータルでの合格点で考えることができます。それは気分良く暮らすため、人間の生きる知恵みたいなものなのでしょう。

ところが、うちの子どもたちは、どうもそれが得意ではありません。
息子も以前、こんなことを言っていました。

「良いことがいっぱいあっても、悪いことが1つあると台無しな気分になる。そもそも、良いことをもたらしてくれたものと、悪いことが起こった原因が同じじゃないのに、足したり引いたりできるわけないでしょう?」

悪かったことを良かったことで相殺できない

ASD(自閉スペクトラム症)の人は「完璧主義」の傾向が見られると言われますが、楽しかったことと嫌だったことを、ざっとまとめて「まあまあ良い1日だった」とするのが特性的に難しいのかもしれません。

楽しいことは楽しい。嫌なことは嫌なこと。独立した出来事であって、楽しい気分だから少しぐらい嫌なことをされても許せるみたいなこともないのです。これは私自身もそうなので良く分かります。だからみんなの「許せる範囲」が変化するお酒の場が苦手です。

嫌なことが1つあったからといって、楽しかったことが消えるわけではない。でも、楽しかったことがあったからといって、嫌だったことも消えるわけではない。

「今日は楽しかった」と思える日にも、「でも、あれは嫌だった」が残っている。

そうやって、1つひとつの出来事が記憶に残っていくから、日々の生活の中で、嫌だったことを何度も思い返してしまうこともある。
ただ生きているだけで疲れるのです。

そりゃあ、子どもたちも不機嫌そうにしていることが多くなるよなぁ、と思いました。

親としては「解決」したくなるけど

ただ、そんなふうに明らかに不機嫌そうにしていても、本人たちは必ずしも「誰かに何とかしてほしい」と思っているわけではないらしいです。

息子が中学生ぐらいの頃、自分の態度について、こう言っていました。

「自分の気分が悪くなるのは止められない。でも、他人にそれを解決してほしいわけじゃないから、表に出さないようにしている。それでも、そのことしか考えられなくなったときは、1人になれるところに行く」

「ああ、なるほど」と思いました。

不機嫌な人がいると、周りは落ち着かないし「なんとかしなきゃ」と思ってしまうけど、本人からすると「不機嫌な態度を見せて周りから利益を引き出そう」とか思っているわけではないんです。ただ「気分が悪くなった」と思っているだけなんです。

その気持ちは自分の中にあるものだということも分かっている。だから自分で時間をかけて消化していく。ムスッと体育座りするのは、そのために必要な1人の時間を確保するためだったのです。

子どもが自分の力で戻ってくるのを待つ

子どもがムスッとしていると、つい「早く機嫌が戻ってほしい」と思ってしまいます。不機嫌さを見せてくるのは自分へのアピールじゃないか?と気を回してしまうこともあります。でも、うちのASDっ子の場合、不機嫌さは親へのアピールではなく、むしろ隠したいのに隠しきれていない「幼さ」であるように思います。

もちろん、本当に困っていて助けを求めているなら手を貸します。でも、ただ不機嫌そうにしているだけなら、「今は嫌なことが頭から離れないんだな」と思って、しばらく待つ。

本人が自分で別のことを考え始めるかもしれない。1人になったほうがいいと気づいて、自分からその場を離れるかもしれない。そうやって本人の力で戻ってくるのを待つことも、「自分で自分を扱う力」を育てることの1つなのではないでしょうか……

と、都合よく考えて、今日も私は不機嫌な子どもたちからそーっと距離を置くのでした。

執筆/寺島ヒロ

「自分の気分が悪くなるのは止められない。でも、他人にそれを解決してほしいわけじゃないから、表に出さないようにしている。それでも、そのことしか考えられなくなったときは、1人になれるところに行く」
中学生の息子さんが、ご自身のことをこのように言葉にできていたことは、とても素晴らしいことだと思います。自分がどんな時に気持ちを乱しやすいのか、その時に自分はどうなるのかを理解し、さらに「周りの人を嫌な気持ちにさせたくない」と考えて、自分なりの方法で距離を取ろうとしている。そこには、自分自身を客観的に捉える力と、周囲への配慮の両方が感じられます。
親御さんが距離を置くことは、決して突き放すことではありません。「必要な時には助ける。でも、今はあなた自身が落ち着く力を信じて待っているよ」。そんなふうに、子どもが自分の力で気持ちを整える時間を見守ることも、自立を支える大切な関わりの1つなのだと思います。(監修:小児科医 室伏佑香先生)

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

【関連記事】

おすすめの記事

新着記事

  1. 【西条市・JA 周桑直売所 周ちゃん広場】石鎚の恵みが勢ぞろい 四国最大級のにぎわい産直

    愛媛こまち
  2. 【動画】大阪・関西万博イベントでカラオケ復活 吉村知事や横山市長が「この地球の続きを」を熱唱

    OSAKA STYLE
  3. 赤穂市美術展 15日から18日まで開催

    赤穂民報
  4. 【新店】お腹を空かせて行きたい!ボリューム満点の洋食店が誕生|奈良・田原本町

    奈良のタウン情報ぱーぷる
  5. LIL LEAGUE、12月23日に7thシングル発売決定!「いい人」でいることに疲れた人へ贈る新曲&クリスマスソングを収録

    WWSチャンネル
  6. 天使すぎる笑顔が魅力!宮瀬七海、美スタイル映える赤黒ファッション。

    WWSチャンネル
  7. <旦那は賃貸派>不便だからマイホームが欲しいのに!住宅ローンを嫌がる人と折り合いをつける方法は

    ママスタセレクト
  8. 入場無料!24店舗が集まる「てんしば」のクリスマスマーケット

    PrettyOnline
  9. GENERATIONS・中務裕太、若きダンサーたちの熱演を絶賛!『夢コンテスト2026 FINAL』開催、KID PHENOMENONらも登場

    WWSチャンネル
  10. 超ときめき♡宣伝部『大盛りハッピー』インタビュー――最後までノンストップでハッピーを届けるために駆け抜ける!

    encore