“赤い肉=新鮮”は本当? お肉の常識を変える”ノントレー・スキンパック”
ゲストは、ムルチバックジャパン株式会社 マーケティング課の小松愛(こまつ あい)さん。ドイツ発のムルチバックは、世界180カ国で展開する包装機械メーカーです。食品包装機械では世界最大級を誇り、スーパーやコンビニで目にする食品の多くも、ムルチバックの機械で包まれているんだとか。今回は、肉にぴったり密着する包装技術「ノントレー・スキンパック」に注目。お肉の鮮度、買い物の手間、フードロスまで変えていく包装の可能性をうかがいます。
皮膚のように、お肉にぴったり密着する
西田 ムルチバックは、もともとドイツの会社なんですよね。
小松 はい。1961年にドイツで生まれた会社です。食品包装機械メーカーとしては世界最大級で、現在は世界180カ国で展開しています。
西田 「ムルチバック」という名前は、ドイツ語でいう「マルチパック」みたいなことなんですか?
小松 そうですね。マルチに、いろいろなものを包む会社です。
西田 日本では、もともと「東京食品機械株式会社」という会社だったんですよね。
小松 はい。東京食品機械株式会社として、日本で50年以上、食品メーカーの皆さんを支えてきました。その後、ドイツ資本が入り、現在はムルチバックジャパン株式会社として事業を行っています。
西田 今日メインでうかがうのは、「ノントレー・スキンパック」という技術です。ノントレーはわかります。トレーがいらないということですよね。では、スキンパックとはなんですか?
小松 スキンパックは、中に入っている製品にぴったり密着する包装のことです。お肉であれば、フィルムがお肉に皮膚のように張りついて包みます。
西田 目の前に実物がありますけど、本当にお肉にぴったりくっついていますね。普通の精肉パックは、トレーの外側にラップがかかっていて、中に空気があります。夕方のスーパーに行くと、肉汁が少し出ているものもあるじゃないですか。
小松 スキンパックは、ほぼ真空の状態で包むため、空気が入らないことが大きな特徴なんです。
西田 空気が入らないと、なにがいいんでしょう?
小松 まず、酸素に触れにくくなるため、酸化や乾燥を防ぎます。さらに、フィルムが密着することでドリップ、つまり肉汁が出にくくなり、雑菌も増えにくい状態を保つことができるんです。
西田 なるほど。お肉をただ包んでいるのではなく、空気に触れないようにして、肉汁も出にくくしている。包装によって、お肉の状態そのものを守っているんですね。
“赤い肉=新鮮”だけじゃない
西田 ただ、このスキンパックのお肉を見ると、ふだんスーパーで見るお肉より、少し色が暗く見えるものもありますね。
小松 はい。酸素に触れないことで、色味が変わって見えることがあります。
西田 僕たちは、酸素に触れて赤くなったお肉を「おいしそう」「新鮮そう」と思ってきたところがありますよね。でも、それが必ずしも鮮度そのものを表しているわけではないと。
小松 そうですね。鮮やかな赤い色のほうが魅力的に見えるという価値観が、日本では長くありました。ただ、スキンパックの場合は、空気に触れにくい状態をつくることで、酸化を防いでいるんです。
西田 色の見え方と、実際にお肉を長持ちさせる技術は、ちょっと別の話なんですね。これは、お肉を見る側の常識も変わりそうです。
小松 そう思います。
西田 さらに最近は、「ノントレー」のスキンパックも出てきていると。トレーがなくて、フィルムだけで包まれているものですね。これはどんなメリットがあるんでしょう?
小松 まず、かさばらないことです。薄くてコンパクトなので、持ち帰りやすく、冷蔵庫にも収納しやすくなります。立てて置くこともできますし、トレーのプラスチックも不要になります。
西田 たしかに、トレーに入ったお肉って、冷蔵庫の中でけっこう場所を取りますよね。しかも持ち帰ったあと、小分けにしてラップで包み直して、冷凍する人も多いと思います。
小松 ノントレー・スキンパックで小分けになっている商品であれば、必要な分だけ使いやすくなります。開封前であれば、冷蔵のまま長く保管できることも特徴です。
西田 ロングライフ、つまり長持ちすることも大きな価値なんですね。どれくらい日持ちするんですか?
小松 商品によりますが、通常の包装に比べて、保存期間を大きく延ばすことができます。
西田 それはすごいですね。毎日のようにスーパーへ行って、その日に食べる分を買う暮らしだけでなく、まとめ買いや買い置きにも合っているわけですね。
精肉売り場の“当たり前”を変えていく
西田 このノントレー・スキンパックは、実際にもう店頭に並んでいるんですか?
小松 はい。最近、ようやく販売されるようになってきました。オーケーさんやイオンさんなどのスーパーでも、商品が並ぶようになっています。
西田 大手スーパーでも扱われはじめているんですね。これは、売る側にとってもメリットが大きそうです。長持ちすれば、廃棄ロスや値引きも減りますよね。
小松 そうですね。販売する側にとっても、フードロスの削減につながります。
西田 お客さんにとっても、家に持ち帰ってから小分けにしたり、冷凍したりする手間が減る。さらに、物流や小売にとっても扱いやすい。包装の仕方が変わるだけで、いろいろなところに影響があるんですね。
小松 はい。スーパーさんやベンダーさん、セントラルキッチン、加工場をお持ちの工場さんなどに、機械を導入していただいています。
西田 ムルチバックジャパンとして、今後はこの技術を日本でどのように広げていきたいですか?
小松 こういった包装が、今までのトレーのように、日本の精肉売り場で当たり前のものとして並ぶようになることが、私たちの目標です。
西田 生産者、物流、小売店舗、そして買う私たち消費者。三方よしではなく、四方よしになる技術かもしれませんね。
小松 はい。ロングライフにすることで、使いきれずに捨ててしまうことを減らし、フードロスの削減にもつなげていきたいです。
西田 流通の改革というと、大きな仕組みを変える話に聞こえます。でも、包装の仕方を変えることでも、これだけ暮らしや社会に波及していく。ノントレー・スキンパックは、見た目は小さな変化だけど、実はとても大きな技術なんだと思えてきました。
ムルチバックジャパンは、フィルムメーカーの住友ベークライトさんとともに、ノントレー・スキンパックの日本での普及に長年取り組んできました。
今日は、ムルチバックジャパン株式会社 マーケティング課の小松愛さんにお話をうかがいました。ありがとうございました。
小松 ありがとうございました。
(TBSラジオ『見事なお仕事』より抜粋)