数センチ単位の除雪の“神業”をもつのは「農家さん」就航率99%支える「ワックスウィングス」【北海道・旭川空港】
北海道の冬のヒーローたち!空港の除雪隊に密着しました。
年間平均400センチ以上雪が降る厳しいエリアながら、雪に負けないのが旭川空港の除雪隊です。
冬の空港を支える 除雪隊員のほとんどが農家さん!そのチームの底力とは?
北海道北部の空の玄関口 「旭川空港」。
東神楽町の、過去10年の年間降雪量は400センチ以上。
除雪の出動も平均約120日。
それなのに、2022年度の雪による欠航はわずか9便なんです!
就航率にすると99パーセントと、驚異の数字を誇る日本トップクラスの空港です。
その秘密が「旭川空港除雪隊・ワックスウイングス」の活躍。
空港を守る41人の隊員たち。
極寒の旭川空港除雪隊に密着しました。
午前4時半の日の出前…エプロンと呼ばれる駐機所には前日の雪が残っていました。
路肩の雪は多いところで400ミリ。
気温ー12.6度、風は2~3メートルです。
長さ2500メートル、幅60メートル、広大な滑走路の除雪作業がはじまります。
タイムリミットは、第一便が到着する前の午前8時です。雪が降ったあと、真っ先に出動するマシンは、怪力が自慢の「除雪プラウ」。
前方の除雪板とサイドウイングを合わせた幅は、なんと8メートル。
滑走路の雪を一気に寄せて、雪山を作っていきます。
その集められた雪山を、遠くの雪捨て場まで運ぶのが「ホイールローダー」。
まるで忍者のように機動力が高く、素早く雪を運びます。
それでもまだ、滑走路の上には雪が残っています。
雪を遠くに吹き飛ばすのが「ロータリー除雪車」。
風向きや雪の量を計算に入れて、左右に正確に飛ばしていきます。
さらに、車輪と車輪の間に除雪版がある 「除雪グレーダ」は、最も難しい繊細な仕事を担います。
実は一番飛行機に近づく機械なんです。
小回りがきく「除雪グレーダ」は、滑走路に突き出た照明灯の間を縫うように、蛇行しながら走行。
もちろん破損したら、飛行機の離発着に影響が出てしまいます。
数センチ単位で照明灯をかわす運転テクニックは、もはや神業!
まさに技の除雪グレーダです。
ようやく滑走路が見えてきました!
最後の仕上げはスノースイーパです。
前方についている金属製のブラシを回転させて、残った雪をはね飛ばします。
除雪隊「ワックスウイングス」の鹿野剛さんは「雪の量や質に応じて、ブラシの回転の速度を調整し、最高の仕上がりとなるように努力している」と胸をはります。
数々の車が滑走路を除雪、最後に床を磨くように5台のスノースイーパが、斜め一列となって走行。
これこそがワックスウイングスのチーム力です。
通った道に 雪はありません。
午前8時半、この日の第一便がやってきました。
除雪した滑走路に無事、着陸。
でも、どうして冬の滑走路でも滑らず着陸ができるのでしょうか?
実は、飛行機には夏タイヤ・冬タイヤといった概念はないのだといいます。
空港の滑走路には「グルービング」という溝があります。
グリップ力を高めたり、水はけをよくするための効果があります。
除雪は、この溝もキレイに掃きだして、黒い舗装面が見える状態にすることを目指して行われています。
実はこんな専門作業をするワックスウィングスですが、隊員の9割が農家なんです。
近隣の東川町や東神楽町、美瑛や旭川から集まっています。
大型の除雪車もお手の物です。
メンバーで、お米農家の金田耕平さんは3年前に入隊しました。
「冬の間は時間も空くし、元々興味があって入隊した」という金田さん。
飛行機の乗客から、『吹雪で本当に着陸できるのかとても不安でした。除雪隊のおかげで北海道を満喫できました』とお礼の手紙をもらったことが、本当に励みになっているのだといいます。
好天が続く日、旭川空港では、隊員たちは除雪車の点検をしていました。
こんな楽しみも!午後5時、みんなで遅いランチタイムです。
実は天気のいい日にしか、ランチをとることはできないのだそう。
1月15日。どんどん雪が降り積もる旭川空港。
ワックスウイングスの出番です。
視界もよくありません。
前方には飛行機の姿も確認できます。
細心の注意を払いながら 素早く除雪しなければいけません。
仕上げのスノースイーパ隊が出動!
与えられた時間は15分です。
これが遅れると飛行機の離発着の時間に影響が出てしまいます。
時速およそ60キロ!仲間と呼吸を合わせて、5台並走しながら雪を飛ばします。
そしてリミットの15分。
「ランウエイクリアしました」
雪質や雪の量によっても、出動する機械が変わる除雪。
「ワックスウイングス」の藤川晴貴さんは「簡単に欠航と言っても多くの人たちのスケジュールに影響が出る。自分たちのできる限りの仕事をして、安全に飛行機が着陸・離陸できるように考えて仕事をしている」と話してくれました。
見えてきたブラックトップ。この黒がワックスウイングスの誇りです。
まだまだ続く雪のシーズン、旭川の空の安全のために、ワックスウイングスは今日も仕事に励んでいます。
文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部あい
※掲載の内容は「今日ドキッ!」放送時(2024年2月8日)の情報に基づきます。