「手に負えなくなる」はどう英語に訳す? 【北村一真 月曜日の「英借文」】#21
北村一真さんによる英作文トレーニング! #21
英語学習者から大きな支持を得ている英語学者、北村一真さん。英文読解についての著作の多い北村さんですが、自身の英語力の基礎は、英作文によってつくられたと言います。
真の英会話力を効率的に身につけるには、「英借文」というコンセプトで英作文のトレーニングをするのがいちばん。数々の英語学習者を「上級」に導いてきた北村一真さんの指導で、毎週英借文のトレーニングをしてみましょう!
※「NHK出版 本がひらく」より
「英借文」のコンセプトについては第0回をお読みください。
トレーニング開始!
まずは【例題】の和文英訳問題に独力で挑戦してみて下さい。この時点では瞬時に訳す必要はなく、少し時間をかけても大丈夫です。ひとまず英文ができたら、[解答・解説]に進んで、ポイントとなる表現を確認しましょう。解説を一通り理解したら、【練習問題】に取り組んでみましょう。
【例題】以下の和文を英語に訳しましょう。
人々が騒ぎ出して、徐々に事態が手に負えなくなった。
[解答・解説]
People started clamoring, and the situation spiraled out of control.
「(文句や不平不満で)騒ぎ立てる」はmake a fussという表現も使えますが、「ささいなことで大騒ぎする」というニュアンスもあるため、それが文脈に合うかどうかは確認した方がよいでしょう。一方、clamorは「(要求などを)声高に叫ぶ」という感じです。今回、特に焦点を当てたいのは、後半のspiral out of control「(だんだん)手に負えなくなる、収拾がつかなくなる」という表現です。メディアでもよく目にする言い回しで、少し前のXでのエコノミスト誌のポストでも、職場での確執や遺恨についての投稿で、次のような文が使用されていました。URLも記載しておきますので確認してみてください。
But there are ways to stop things from spiralling out of control.
(spirallingはイギリス綴りです)
「しかし、事態が手に負えなくなるのを防ぐ方法はある」
参照:https://x.com/TheEconomist/status/1961549635886989649
things spiral out of control「事態の収拾がつかなくなる」というのはそのまま覚えてしまってもよいかもしれません。なお、類似表現として、spin out of controlというのもありますが、spiralを使うと徐々に状況が悪化して最終的に手に負えなくなるニュアンスが出るのに対し、spinの方が急激な変化の場合に使用されやすいと考えてよいかと思います。
【練習問題】
事態の収拾がつかなくなるまえに策を講じるべきだ。
[解答]
You should take measures before things spiral out of control.
ポイント:「事態の収拾がつかなくなる前に」の部分は、before節と今回の表現を使って、before things spiral out of controlやbefore the situation spirals out of controlと表現できますね。 「策を講じる」はtake measuresが最も基本的な言い回しになるでしょう。
この1週間、【例題】【練習問題】の日本語を見て瞬時に英語に訳せるまで練習してみましょう。
この1週間、【例題】【練習問題】の日本語を見て瞬時に英語に訳せるまで練習してみましょう。
プロフィール
北村一真(きたむら・かずま)
1982年生れ。2010年慶應義塾大学大学院後期博士課程単位取得満期退学。学部生、大学院生時代に関西の大学受験塾、隆盛ゼミナールで難関大学受験対策の英語講座を担当。滋賀大学、順天堂大学の非常勤講師を経て、09年杏林大学外国語学部助教、15年より同大学准教授。著書『英文解体新書』『英文解体新書2』(ともに研究社)、『英語の読み方』『英語の読み方 リスニング篇』(ともに中公新書)、『英文読解を極める』(NHK出版新書)、『文法知識と読解力を高める上級英文解釈クイズ60』(左右社)。共著『上級英単語 LOGOPHILIA』(アスク)など。
ヘッダーデザイン:明石すみれ