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「馬鹿者!」に込められた想い──春アニメ『本好きの下剋上 領主の養女』井口裕香さん&速水奨さんが語るローゼマインとフェルディナンドの関係性の変化【インタビュー】

アニメイトタイムズ

写真:アニメイトタイムズ編集部

TVアニメ『本好きの下剋上 領主の養女』が、読売テレビ・日本テレビ系全国ネットで2026年4月4日(土)から夕方5時30分枠(一部地域を除く)にて、TOKYO MXで4月6日(月)から夜9時25分枠にて放送開始となります。

本作は、人気シリーズ『本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~』(以下、『本好き』)のTVアニメ最新作。今回の『領主の養女』編では、下町の家族や仲間を守るために領主の養女として生きる道を選んだローゼマインの、常識の通じない貴族社会で奮闘する姿が描かれます。放送開始を目前に控え、メインキャストの井口裕香さん(ローゼマイン役)と速水奨さん(フェルディナンド役)にお話をうかがいました。

 

 

【写真】春アニメ『本好きの下剋上 領主の養女』井口裕香&速水奨が語る新章の見どころ【インタビュー】

2人が感じるお互いのキャラの魅力とは?

──TVアニメ『本好きの下剋上 領主の養女』は、シリーズ初の全国ネット放送となります。全国ネット放送が決まった率直な気持ちはいかがですか?

井口裕香さん(以下、井口):嬉しい!すごい!に尽きます。続編ができて、アニメでまた動くローゼマインたちに会えるだけでも嬉しいのに、それが今度は全国ネットで放送されるなんて。老若男女問わず、よりたくさんの方に見ていただけると思うと、すごくすごーく嬉しかったです。

速水奨さん(以下、速水):『名探偵コナン』(毎週土曜夜6時放送)の前ですから、これってすごいことですよね。

井口:大下剋上!

速水:本当に国民的なアニメを目指しているんじゃないかという意欲と覚悟を、制作者側に感じます。僕らも制作の一端にいますから責任重大ですけど、さらに『本好き』の魅力を伝えられるように頑張りたいと思っています。

──改めて、おふたりが演じるローゼマインとフェルディナンドの役どころを教えて下さい。

井口:この作品は、現代にいた本須麗乃(もとすうらの)という女性が、ひょんなことから魔力のある世界に平民の女の子・マインとして転生するところから始まります。彼女はとにかく本が好きで、本への情熱がものすごく、本のために全力をかける女の子。でも、この世界で紙は一般的にはなかったので、「なければ作ればいい」とトライ&エラーを繰り返します。よくある「転生して、なんかわかんないけど上手くいった」ではなく、試行錯誤していろんな失敗しながらも、周りの人たちとの縁を大事にしながらちょっとずつ成長していく姿がとても魅力的だと思いました。

──今作では、平民から領主の養女になります。

井口:はい。魔力が豊富だったこともあり、領主の養女となり、名前も“ローゼマイン”となります。彼女が頑張れる一番の元は「本が読みたいから」。領主の養女となってもそれは変わりませんが、平民からどんどん下剋上していき、世の中の政治などに巻き込まれながらも、領主の養女として奮闘していく姿を楽しみにしてもらいたいです。

──そんなローゼマインの後見人が、フェルディナンドです。

速水:フェルディナンドはもともと領主の一族なのですが、異端というか、出自がちょっと違う特別な存在だったんですね。だからこそ神殿の神官長という役割を担っていて。そこに(平民の頃の)マインという異端分子が入ってきたことで、異端同士が結びつきます。彼女はとても理解できない思考回路をしていたので、最初は拒絶感の方が強かったんです。

でも、彼女は家族や街の人々との結び付きによって居場所を見つけていき、その変化を俯瞰で見ていたフェルディナンドは、だんだんと変わっていきます。怒り方も最初は温度の低い感じだったのに、いまは「馬鹿者!」とまるでベンノ(服飾や装飾を扱うギルベルタ商会の店主。商売におけるローゼマインの後見人的人物)のように感情を出すようになって。僕の中では、それがすごく微笑ましいというか、いい変化だなと思いました。

──では、井口さんから見たフェルディナンドの魅力、速水さんから見たローゼマインの魅力はどういうところでしょうか?

井口:神官長(フェルディナンド)はもともと格好良くて、多くを語らない姿が女性たちをキュンとさせる方ではありますが、知れば知るほど魅力的なんです。とってもクールに見えるのに内側は誰よりも熱くて、優しくて、自分よりも周りを大事にするところがすごく素敵だなと思います。もっと素直になればいいのに……とは思うんですけど、そうじゃないところがまた素敵というか。普段はクールでも、ローゼマインにだけ見せる感情的な部分も魅力的ですね。あとは声です。圧倒的な声です!!

速水:ローゼマインは特に領主の養女になってから、ますますワガママが加速するんです。本に対する欲求のためだけに突き進むのは相変わらずですが、地位や財力を身につけることによって、とんでもない状態になっていて(笑)。でもフェルディナンドは、そんな暴走するローゼマインを見ているのが決して嫌じゃないというか。僕自身も最初はやはり本須麗乃というか幼いマインにもどかしさを感じていたのですが、いまはそこから解放され、国や世界を作れるぐらいのエネルギーになっているところに、すごく魅力を感じますね。


 

今作をより楽しむために、ここに注目!

──これまでのTVアニメ『本好き』で特に印象的だったことをお聞かせください。

井口:いままでは下町でのお話がメインだったので、家族やベンノさんたちとのやり取りの中で、「本がなければ作ればいい」と奮闘する姿はすごく印象に残っています。私はこの作品に出会うまで紙作りにこんな細かな過程があることを知りませんでした。粘土板もそうですし、いろいろなことを知ることができましたね。

速水:僕はやはり、マイン(今作のローゼマイン)の記憶の中に入っていって、本須麗乃に起きたことを知ったシーンが印象深いですね。そこから本当の意味で2人の絆が生まれたと思うんです。相容れない2つの存在が関わりを持ち、そこから彼女のために多くの人が動いていきますから。

ほかにも、紙作り、神殿の中でも神殿長との軋轢や戦い……いろいろありますが、下町の家で小さなマインが踏み台に乗って本を探しているシーンもすごく印象的でした。あとは、街が汚いこと。

井口:それは私も印象に残っています。あの匂い問題。

速水:窓から捨てるって(笑)。

井口:汚物をね(笑)。

──下町の人とのことでいえば、領主の養女になっていままでのように会うことができなくなったからこその、物語的な面白さがありますよね。

井口:そうですね。もちろん、下町のみんなと全く会えなくなってしまうわけではないですが、マインからローゼマインと名前が変わり、身分も貴族となり、立ち振舞いも大きく変わりますからね。言葉遣いも環境も変化するので、演じていてすごく面白いです。

速水:結局、この作品は彼女の成長譚だと思うんです。成長していく彼女を周りの人がフォローしたり、逆に邪魔したり。そのなかで、フェルディナンドは一貫して彼女が信頼を寄せるに足る存在として、一本筋が通って見守っている立場なんです。

井口:一番信頼のおける、心の拠り所です。

速水:信頼してもらうためにも彼自身が努力をして、これからも守っていくんだろうなと思います。

──では、今作を見る上で、この単語やこの人のことを注目しておけばさらに面白い!といったことを教えて下さい。

速水:本と下剋上。

井口:そのままですね(笑)。でも本当にその通りなんです。この作品は、好きな本のため、大好きな家族のため、守るべき存在のために奮闘していきますので。

そのなかで、ルッツは覚えておいて欲しい存在かなと思います。下町と貴族街を結んでくれる、ローゼマインにとってフェルディナンドとはまた違う心の拠りどころというか、心の休める存在がルッツなんです。彼もフェルディナンドと同様、ローゼマインが本須麗乃であるということを知っていて、全てを受けいれてくれるんです。幼馴染のような感じですが、すごく頼りがいがあり、信頼のおける重要人物かなと思います。

速水:あとは『領主の養女』編になって政治的なことも増えますから、ジルヴェスターという領主の存在もすごく大きいです。彼の目線でみると、また違った角度から楽しめるんじゃないかなと思います。

 

超豪華な平民のガヤに驚!?

──『領主の養女』編でローゼマインやフェルディナンドを演じる際に心がけていることや、役作りで気をつけたことを教えて下さい。

井口:原作を読んでいてわかっていたことではありますが、台本を開いたときに、ローゼマインは単純にセリフ量がすごく多いんです。ローゼマイン目線のモノローグ、ナレーション、セリフ、その切り替えをパパパっとやらないといけなくて。放送を見ているとそれほど気にならないですが、台本チェックをしているとかなり入り組んでいるので、感情の切り替えはすごく意識して演じるようにしています。見ている人が「いまのはなに?」とならないように、きちんと伝えたいですから。

あとはやっぱり、ローゼマインが軸になって物語が動いていきますので、見ている人も巻き込む勢いを、セリフに出せたらいいなと思っています。

速水:フェルディナンドは、演じる上で“逃げ場”がないんですよ。しっかり喋らないといけないですし、表現もジャストでなければいけない。「こんな感じかな?」「こんな感じでいいのかな?」みたいな演じ方はできないので、覚悟が必要な役です。そういう役にチャレンジできる嬉しさはあります。ただ、僕も何十年とこの仕事をしていますけど、やはりプレッシャーを感じることなんですよ。どうしたらいいのか考えながら、毎回収録に臨んでいます。

だからこそ、特に『領主の養女』の収録になってから、共演者ともより親しくなった気がするんです。制作の人たちともフラットになったというか。僕自身、「家を出る。スタジオに着く。ドアを開ける」といった敷居がなくなったと感じていて。マイクの前に立ったときにも、普段のままでいられるように心がけているところがあります。それが進歩なのかどうかはわかりませんが。

井口:それって共演者が増えたからですか?

速水:それよりもプライベートな変化ですね。僕も普段持っていますが、(人との距離を作る)バリアってあるじゃないですか。井口さんはないですけど(笑)。

井口:ありますよ!誰よりもあります(笑)。

速水:それがなくなって親和性が生まれたというんですかね。油と卵が合わさってマヨネーズになったみたいな感じがします。

──その収録現場で、ほかのキャストも含めて印象的なエピソードがありましたらお聞かせください。

速水:ある収録の日、井口さんが高速道路の出口を間違えて、なかなかスタジオに現れなかったときがあったんですよ。

井口:本当に申し訳ありません。急いで行こうと思って普段使わない高速に乗ったら、余計にわからなくなっちゃって……。

速水:そういう些細なエピソードはありましたけど、みんなプロなので現場で事件は起こらないです。起きたら大変なことになりますからね。特に『本好き』の場合はタイムテーブルがしっかりしていて、例えば12時から収録がスタートするなら、その15分前に来てくださいと香盤表に書かれていて。みんなちゃんと集まってちゃんと収録するので、事件はなにも起きません(笑)。

井口:リテイクが多いわけでもなく、滞りなく収録が進みますからね。でも、そういう事件ではなく、先輩が格好いいなと思ったことはあります。フェルディナンドもジルヴェスターも貴族ならではの難しい用語がたくさん出てきますし、それを当たり前のように言う役柄じゃないですか。和彦さん(ジルヴェスター役の井上和彦さん)は毎回、「この言葉は言いにくいな」って始まる前にぼやくんですよ。

速水:絶対ぼやくね。「こんなの言えねえよ。カタカナばっかりだ」って。

井口:「家で1回も言えなかったよ。今日は時間かけちゃうかもな」なんて言いながら、テストでマイクの前に立ったら1回も噛まずにさらっとやられていて。先輩ずるいな、格好いいな、と思ってしまうことがあります。

それから、「男性のガヤを録ります」となったときに、たまたまその場にいる男性キャストが奨さんと和彦さんと子安さん(ベンノ役の子安武人さん)の3人だけだったときがあったんです。

速水:この3人でやるのは久々でしたね。

井口:3人が「なんだなんだ?」と言いながら、街の平民のガヤを録っていたんです。「こんないい声のガヤがある?」「こんなの『本好き』だけだぞ!」って。本当にすごいなと思いました。

合言葉は「みんな健康で!」

──1クールで終わる作品も多いなかで、ここまで長期で続くシリーズの楽しさや、逆に難しいところがあればお聞かせください。

速水:制作サイドの人が最初から言っていたんですよ。「『本好き』は最後までやりたいんですよね」って。でも、それって何年かかりますかね。最初のシリーズから8年ぐらいかかって、まだ物語の半分もいっていないですし(笑)。

井口:やっと『領主の養女』編ですからね。ここからスタートというか。

「みんな健康で!」

合言葉はいつもこれです(笑)。

速水:願わくば、今回のTVアニメのあとに、あの有名作品に負けないほど長尺の劇場版を作ってもらって。一気に貴族院の話を超えて、またTVアニメに戻ってくる。そういう遠大な計画を考えています(笑)。

井口:「やりたいです」と言っても、本当にこうやって続けられる作品はなかなかないですからね。

速水:しかも、同じキャスティングで。

井口:そうなんですよ。これからどんどんキャラクターが増えていきますし、ドラマCDでは兼役もありましたから、そこに新たなキャストがついてさらに豪華になっていきます。

速水:実質8年かかって、ローゼマインはいくつ歳を取ったんだっけ?

井口:1〜2歳かな?(笑)でも、こんなに丁寧に描いていただける作品はなかなかないので、携われて本当に幸せです。

速水:こういう仕事をしていると「代表作を書いてください」ってよく言われるのですが、僕は絶対に『本好き』を入れていますからね。

井口:すべては老若男女問わず楽しめる原作があってこそですし、応援してくださっているファンの皆さん、熱量の高いスタッフ陣のおかげで私たちも走っていられます。本当にありがたいです。

──作品にちなんだこともお聞きします。もしご自身がローゼマインと同じような状況に陥った場合、彼女のように「ないなら作っちゃおう」と思えるほど好きなことはありますか?

速水:酒作りですかね。

井口:「酒がなければ作ればいい」ですね(笑)。

速水:あとは、僕も本が好きなので、さすがに「本がなければ作ればいい」とはならないですけど、頭の中で物語を考えて楽しめればいいかなって思います。

井口:それを(なにかに)写していって。

速水:砂浜で。

井口:ロマンチック!! お酒を作るとしたらなにを作りますか?

速水:1人で作れるお酒は限られているからなぁ……穀物を口に含んで、噛んで、壺の中に……。

井口:作る工程はあまり美しくなかった(笑)。

速水:井口さんはありますか?

井口:私は、コロナ禍でダラダラと怠惰な生活を送っていたんですが、そこから一転、トレーニングに目覚めて10kgぐらい痩せることができたんです。たるんでいたお尻もプリッと持ち上がったので、「垂れているなら持ち上げればいい」かな(笑)。より高みのあるお尻を目指して、トレーニングしています。

速水:ヒップスターですね。

井口:声優界のヒップスターでございます(笑)。

速水:そういうのは、なければ作ればいいの?

井口:はい。「筋肉がなければ鍛えればいい」です。

──最後に、改めて全国ネット放送にかける意気込みをこめて、楽しみにしている皆さんへメッセージをお願いします。

井口:ついに全国ネットでの放送がスタートします。魅力的なキャラクターがたくさん登場して、物語はここからより一層盛り上がっていきますし、ここから見ていただいても絶対に『本好き』ワールドに入っていただけると思います。老若男女問わずたくさんの方に、映像の美しさ、音楽の美しさ、我々のお芝居、いろんな『本好き』の世界を感じていただき、Cパートやエンディングのイラストまで全部まるっと楽しんでいただけたら嬉しいです。

速水:先ほど言ったように、僕自身のバリアがどんどんなくなって、演じることに特化できている気がします。おそらくキャスト全員が同じように思っていて、そういうチームワークで作っていくのが『本好き』です。ましてや、放送が『名探偵コナン』の前。2作品連続で「見た目は子供、頭脳は大人」のコンセプトで、楽しい作品をお届けできると思いますので、ぜひ期待してください。

[文・千葉研一/写真・MoA]

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