新鋭アリアン・ラベド監督作 “姉妹のいびつな絆”を描いたフェアリーテイル『九月と七月の姉妹』
2018年、長編デビュー作「Everything Under」で史上最年少のマン・ブッカー賞候補となったイギリスの俊英デイジー・ジョンソンによる第2作長編「九月と七月の姉妹」(東京創元社)を映画化。新鋭アリアン・ラベドが監督を務めた映画『九月と七月の姉妹(原題:September Says)』が、9月5日(金)より公開される。このたび、画家・榎本マリコが手掛けたティザーポスターと場面写真が解禁となった。
“姉妹のいびつな絆”を描いたフェアリーテイル
生まれたのはわずか10か月違い、いつも一心同体のセプテンバーとジュライ。我の強い姉と内気な妹は支配関係にありながら、お互い以外に誰も必要としないほど強い絆で結ばれている。しかし、学校でのある事件をきっかけに、シングルマザーのシーラと姉妹はアイルランドの海辺近くにある亡父の家「セトルハウス」へと引っ越すことになる。新しい生活のなかで、次第にセプテンバーとの関係が変化していることに気づきはじめるジュライ。「セプテンバーは言う——」ただの戯れだったはずの命令ゲームは緊張を増していき、外界と隔絶された家の中には不穏な気配が満ちていく……。
監督を務めたのは、俳優としても活躍、ヨルゴス・ランティモス監督(『哀れなるものたち』/24)の公私ともに渡るパートナーとしても知られる新鋭アリアン・ラベド。2010年、ヨルゴス・ランティモス監督が制作・出演した『アッテンバーグ』(アティナ・ラヘル・ツァンガリ監督)で映画デビューを果たし、「ヴェネツィア映画祭」と「アンジェ・プレミエール・プラン映画祭」の最優秀女優賞を受賞。本作でヨルゴス・ランティモスと出会い、2013年に結婚し、その後『ロブスター』(2015)にも出演している。また2014年には、『欲望の航路』で「ロカルノ映画祭」最優秀女優賞を受賞、セザール賞新人女優賞にもノミネートされた。
アリアン・ラベドの初監督作品は、カンヌ監督週間、ロンドン映画祭、テルライド、サンダンスなど、世界中の映画祭で上映され、クレルモン=フェランでは最優秀作品賞を受賞した短編『Olla』(2019年)。長編デビューとなる本作では、2024年の「カンヌ国際映画祭」ある視点部門に公式出品され、カメラドール(新人監督賞)にノミネート。2010年代、ランティモス監督を中心にギリシャの映画作家たちによって生み出され、従来の商業映画とは一線を画すスタイルの映像を創造、世界の注目を集めたムーブメント“ギリシャの奇妙な波”を継ぐ監督の1人でもあり、本作では、姉妹愛、家族の絆、遺伝、思春期、欲望、権力といった普遍的なテーマを<15歳の少女ジュライの視点>を通して、「まるで片手に宝物を、もう片手にメスを持って手術をするような感覚で」(アリアン・ラベド監督)で紡ぎ出す。
公開された場面写真は、セプテンバーが“2人だけのままごと”の最中に、ジュライを獲物を射るような目線で捉えたもの。セプテンバーとジュライ、無邪気ゆえに恐ろしい、歪な支配関係を切り取ったものとなっている。
ティザーポスターを手掛けたのは、デイジー・ジョンソンの小説「九月と七月の姉妹」(東京創元社)の日本版小説の表紙のデザインを手がけ、小説『82年生まれ、キム・ジヨン』などの装画でも知られる画家・榎本マリコ。“顔の無い”2人の少女がお揃いのワンピースを着用して一つのフレームに並んで収まる姿は、一見可愛らしくありつつも、その深淵を覗き込めばぞっとするような不穏さを感じさせるデザインとなっており、榎本は「終始圧迫感のある曇天と、閉鎖的な社会生活との狭間で光り輝く姉妹の命。でもその光は希望に満ちたものじゃなく支配欲と服従、諦念に満ちていた。姉妹の物語はその家の中で、同じ景色の中で確かに存在したことを証明したくてこの絵を描いた」とコメントしている。
『九月と七月の姉妹』は9月5日(金)より渋谷ホワイトシネクイント、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテほか全国ロードショー